ファルーサ・カイデン4-1
「遊びに行ってきまーす」
痛み無しに、強く、豊かに!を目指して、ハンターになるための訓練を始めて3か月が過ぎた。今日も俺は、午後一の武術の練習を終え、訓練のために森を目指す。
俺としては、毎日でも森に行きたいのだが、現実には不可能だ。
原因はお母様達だ。
マリアールお母様はまだ良い。第一夫人であることから、常に家に居て、使用人の統率等カイデン家の裏向きの仕事を取り仕切る。
それだけではなく、王国の物流拠点として人、物、金の集まるカイデン子爵領の領主である我が家には、引っ切り無しに来客がある。それらに対しお母様は、お父様がいる時はお父様と共に、お父様が不在の時はその代理として、陳情・相談への対処や客との折衝・交渉、その経過・結果の取りまとめとお父様への報告、と、昼間は家に居ても、まず顔を合わせることが無いほど忙しい。
いや、はっきり言おう。我が家はマリアールお母様で回っている。お父様は居るだけで良いんだ。
一方、第二夫人のボニータお母様は、カイデン領の商業ギルドのギルドマスターという要職に就いていて、大変忙しい身ではあるのだが、週10日のうち2日以上は必ず休みを取り家に居ることから、休みの日にはよく俺を街に連れ出そうとしてくる。市中で何が流行っているのかに大変興味があるようで、高級店だけでなく、価格帯の低いお店や屋台まで、色々と見て歩くのが大好きである。ついでに俺の服や玩具も買ってくれるので、文句は無いのだが。
セリスお母様も似た様なもので、我が領の農業ギルドのギルドマスターという、これまた要職にありながら、ボニータお母様と同様にきっちり休日は確保し、庭や家庭菜園での土いじりをしていない時は、街での食べ歩きに誘ってくる。様々な食材やそれを使った料理に興味が大ありで、こちらも高級レストランから駄菓子屋、屋台まで、色々食べてはよくメモを取っている。
つまり、ボニータお母様やセリスお母様が休みの日は、武術の練習が終わり次第、すぐに出かけないと、見つかったら訓練は諦めざるを得ない。という訳で、実際に訓練に出かけるのは、月30日のうち20日程度だ。
今日は、二人ともいないので、安心して家を出て、いつもの城壁の穴を目指す。
この3か月で様々なスキルを獲得し、そのレベルも上げてきた。
まず「基本」の「生命力量」スキルをレベル5まで取り、また、「魔力量」スキルも5まで上げ、生命力総量及び魔力総量が「1,000加算される」状態とし、少々怪我をしたところで生命の危機には至らず、治癒魔法をバカスカ使ってもまだまだ使い続けられるよう底上げした。
「敏捷」と「持久力」スキルは3まで上げるとともに、「筋力」スキルを3まで取って、それぞれの能力値が「10加算される」ようにした。
「敏捷」を上げたため、街の中や、ものによっては家の中にも居る虫や鼠と言った小さく素早い魔物や魔獣も倒せるようになった(「獲得SP100倍」をもってしても、SPが1取れるかどうかだが)し、「持久力」の上昇によって、スライムを見つけるまで走り続けられるようになった。その上、長時間の戦いでも疲れにくくなった。
次に、メインの「防御」である。
まず「物理防御」は3から6に上げ、「衝撃及び斬撃によるダメージを200軽減する」ようにした。
森の小川には、弱いながらも水魔法で攻撃してくる魚の魔物がいたので「魔法防御3」を取り、「魔法によるダメージを20軽減する」ようにした。
また、蛇や蛾、蜘蛛といった魔物の中には、毒や麻痺の攻撃をしてくるやつもいて、この森の中でも見かけることがあった。すぐに逃げたので、戦ってはいないが、こんな攻撃を喰らえば命に係わる。
そこで「毒耐性」と「麻痺耐性」をどちらも5まで取り、「毒によるダメージを50%軽減する。又は毒に侵されるのを50%の確率で回避する」と「麻痺で動けなくなるのを50%の確率で回避する」ようにして、不意に戦わなければならなくなった時に備えている。そうなる前に、状態異常回復魔法を取ろうとは思っているが。
他にも、今は9の月で暑さは少し和らいできたが、7の月や8の月は夏真っ盛りで大変暑く、そんな中で戦っていると体力の消耗が早まるため、「高温耐性2」「50℃までは熱さに耐えられダメージを無効にする」を取ったら暑さが気にならず、快適になった。そこで同様に「低温耐性2」「-10℃までは寒さに耐えられダメージを無効にする」も取って、今から冬に備えている。
続けてサブメインの「回復」である。
「生命力回復速度向上」を4から5に上げ、「生命力回復速度が100倍早くなる」ようにして、怪我の回復速度をさらに早めることにより、痛い思いをしてもそれが短時間で済むようにしている。このスキルは今後も上げ続ける予定だ。
「治癒魔法」も3から5に上げ、「治癒魔法・小が任意の範囲に使える」と「治癒魔法・中(小を15回程度かけて回復できる程度を1度で回復)が使える」を覚え、ちょっとやそっとの怪我ならすぐに直せるようにした。これも痛い時間を少しでも短くするためだ。
「魔力量回復速度向上4」「魔力量回復速度が50倍早くなる」も取って、治癒魔法を少しでも多く使えるように備えた。
そして「疲労回復速度向上3」「疲労回復速度が10倍速くなる」も取った。「持久力」を上げて疲れにくくはしているが、全く疲れない訳ではないので、例え疲れても、早く回復できるようにしている。
その上に、「攻撃」のスキルもいくつか取った。
攻撃力を上げて早く魔獣達を倒せば、その分早く家に帰れて、街の外に行っていたのがバレにくくなるからである。
取ったのは「剣術」、「体術」、「土魔法」が4まで。「重力魔法」が3までである。
「剣術」は、1が「剣の扱いの基礎が理解できる」、2が「剣での戦い方の基礎が理解できる」、3が「剣での戦い方に長ける」、4が「他人に教えられるほど剣での戦い方に長ける」である。
折角短剣を持っているのだから、それでサクサクとスライムを倒せたらいいな、程度に考えていたのだが、「剣術3」を取った後、家での剣術の練習の時間にボーっと素振りをしていたら、剣の先生にこの子は天才かもしれないと褒められて、逆に困ったことがある。
しかしこのスキルのおかげで、突くことがメインの筈の短剣で、スライムが斬れるようになった。
「体術」は、1が「様々な生物の身体的な弱点が理解できる」、2が「武器を使用しない戦い方の基礎が理解できる」、3が「動体視力と俊敏が格段に上がる」、4が「他人に教えられるほど体術に長ける」で、剣を落としてしまった時や、(想像するのも嫌だったが)怪我をして剣が握れなくなった時に備えてとった。
まだ小さな虫以外には使っていない。効かなかった時を考えると、怖くて・・・
「土魔法」は、1が「土や金属について理解できる」、2が「周囲の地面近くの土、石、金属の種類が理解できる」、3が「周囲の地下の土、石、金属の種類が理解できる」、4が「周囲の地面近くの土、石、金属を取り出し、任意の形に成形できる」だ。
「土魔法」をとって、レベル4まで上げたのは、明確な目的があった。
俺が狙うのはスライムだが、森の中にいるのはスライムだけではない。様々な魔獣がいるのだ。
森の外周辺りで戦っているので強い魔獣等には遭遇しないが、弱い魔獣等はよく見かける。
「弱そうに見えて、実は私、強いんです」って襲われて痛い思いをするのは嫌なので、出来るだけ回避しているが、見つかって戦わなければならないこともある。
その結果、倒したのが食べられる魔獣だったりしても、10歳のハンター登録も出来ない子供では売りに行くこともできないが、死体をそのまま放っておくのも、衛生的にも良くないだろうし、餌を求める他の強い魔獣等を呼び寄せるのも良くないだろう。
と言うことで、意図せず倒してしまった魔獣等を、地面に深い穴を作って埋めてしまうために「土魔法4」を取った。
手で深い穴を掘るのは大変だったから。
そんな理由で取った「土魔法4」だが、実は必殺の攻撃になるのではないかと期待できる使い方を思いついている。機会があれば是非使ってみたい。
「重力魔法」は、1は何もなし、2が「重力魔法弱が使える」、3が「自身を浮かび上がらせることができる」である。
内緒だが、「重力魔法3」をとれば空を飛べるのではないかとひそかに期待していた。しかし現実は、地面又は水面から50MMほど浮かび上がるだけであった。
そりゃ、そうだよな。
「飛べる」のなら「浮かび上がる」なんて説明にはならないよな。
何度も、そう自分に言い聞かせて、落ち込んだ状態から浮かび上がったのである。
こんな感じで、スキルが増え、そのレベルが上がる度に、スライムを早く見つけ、早く倒せ、スライム以外の小さな魔獣や魔物を倒せるようになり、さらに多くのSPが稼げるようになった。
「獲得SP100倍」様様である。




