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世界の成り立ちとスキルー2

 しかし、勇者を討伐するとは言っても、人族では敵わなかった魔族を、一人で蹴散らした勇者である。まともに戦ったところで、傷一つ付けることは叶わないであろう。

 そこで権力者達は、まずは民衆の勇者に対する信頼を失墜させようと、様々なデマを流すようにした。

 曰く、勇者は、魔王軍の攻撃を受けていた他国のとある村で、魔王軍討伐の依頼料を払えなかったためその村を見捨てて、その村の住民は皆殺しにされた。

 曰く、勇者は、他国のとある町を攻めていた魔王軍を滅ぼした後、その町の気に入った女を手当たり次第に手籠めにし、文句や意見を言って来た者は全て殺してしまった。

 といった具合に、最初は民衆では確認のしようがない遠い外国の話として、魔王軍の侵攻を受けていた頃に関する様々なデマを流布した。

 民衆はそのような話を信じなかったが、流されるデマの量が尋常ではないことから、次第にその物量に圧倒され、勇者の戦いを見ていない、つまり直接魔王軍の侵攻に晒されていない地方の民から、デマに耳を傾けるようになる。

 そうすると、次は現在の勇者に関する、在りもしない酷いデマをばら撒き始めた。

 曰く、勇者は、世界中の国に対し、膨大な額の魔王軍討伐の謝礼金を要求しており、払えない場合は国を亡ぼすと脅している。

 曰く、勇者は、行く先々で、そこの領主等権力者に、自分滞在中は夜伽の若い女を毎晩差し出すように迫り、差し出された女が気に入らない場合はその街で暴れまわり、各地で大被害が出ている。

 他にも色々と、聞くに堪えないような話が広まっていた。

 それらが現実の話だとすれば、既に町や国が幾つか無くなっている筈で、冷静に考えれば話の真偽はすぐに解る筈であったが、一度勇者に少しでも疑念を抱いた者は次のデマも聴いてしまい、権力者達も民衆が冷静にならないように、次々と新しいデマを流し続けた。

 勇者とその家族は、周囲の者たちの態度が段々とよそよそしくなっていき、その内刺々しくなったかと思うと、言葉尻を捉えては文句を言われ、買い物に行っては何も売ってもらえなくなり、街を歩いているだけで罵声を浴びせられるようになったところで、小さな子どもの安全のため森の中に移り住んだが、何故そのようなことになっているのか、理由がわからないままだった。

 まさか、世界中の権力者達が自分を嵌めようとしているなど、夢にも思っていなかったのである。

 ある日勇者が外出先から帰宅すると、家の中が荒らされ家族の姿がなかった。住み込みの家人に聴くと、自分が住んでいる国の王国軍の小隊がいきなり押しかけてきて、妻と子どもを捕縛し、勇者に対し、帰宅次第王城に出頭するよう伝言を残して連れ去ったとのこと。

 勇者が王城に行くと、案内されたのは王国軍屋外訓練場で、そこには両手の手首を身体の前で合わせるように縛られた妻と子どもが、地面に座らされ、周囲は王国軍の兵が固めていた。

 閲覧席の高いところにこの国の王が、その下には貴族達権力者達が座っており、身に覚えのない罪状を次々と1時間程もかけて読み上げ、最後に勇者に向かってこう言った。

「これらは、この世界の全ての国の王達の訴えをまとめたものであり、どの王も貴様を赦すつもりはない。

 これら多くの罪を認めよ。認めるのならば、自らの力でその命を絶て。認めぬのならば、お前の家族の命は無い」

 この国の王達権力者は、勇者を殺すことができるのは勇者自身だと考え、実際それは事実であり、唯一の方法であった。

 勇者は、ここで、最近の周囲の者の自分に対する態度の変化も含めて、全ての理由を理解した。

 権力者達に嵌められ、いつの間にか人々から、世界から疎まれ、それどころか嫌悪、いや、殺したいと思うほど憎悪されていることを。

 そして、今それを覆すことは叶わないということを。

 せめて妻と子どもだけでも生き延びてほしいと考え、自らの命を絶つ方法を考え始めた時、突然、妻と子どもが倒れた。

 高潔な夫に、父親に、最悪の決断をさせまいと、自分達が枷になっていることを悟り、隠し持っていた毒を素早く呷ったのだ。驚くべきことに、まだ小さい勇者の子どもまでもが、自らそれを実行したのである。

 近くの兵が慌てて駆け寄ったが、二人とも既にこと切れていた。

 それを見て、勇者に自殺を迫る手段が無くなったことを理解した王は、怒りのあまり、愚かにも二人の遺体の首を刎ね街中に晒すよう命じ、無情にも兵達により遺体から首は切り離された。

 それを見ていた勇者は、怒りと悲しみで血の涙を流しながら、震える声で神に願った。

「望み通り俺の命をくれてやる。

 俺の命はもう要らない。

 その代わり・・・・・

 俺の命を差し出す代わりに・・・・・

 この世界で生きている全てのものを殺せる力を・・・・・

 守ったはずの俺を裏切った、この世界を滅ぼす力を・・・・

 俺にくれーーーーーーっ!!」

 この願いはすぐに神様に届いた。一つだけ何でも願いをかなえると伝えていたからだ。

 しかし勇者の人柄を知る神様からすれば、信じられないような願いが届いたことから、神様は急いでこの世界で何が起きているかを確認した。

 そして神様は激怒した。

 この国の人族に対してである。

 自らその男の心の清らかさと強さを見込んで勇者とし、それに応え、数多の艱難辛苦を乗り越え、世界の人々のために一人でこの世界を魔王の脅威から守り抜いた勇者から、その守ったはずの人々に追い詰められることによって、このような願いが届いたのである。

 神様はこの世界の人族を見限り、勇者の願いを叶えた。


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