エリザベスを倒した日
エリザベスを倒した日
9日目
―またか!
―ここにいるぞ!
ウィンドステップを発動した。
体が前方に飛び出した。
エリザベスが目の前に現れた。
剣がぶつかり合う。
ガチャン!
腕が震えた。
彼女は微笑んだ。
―もっと速く。
―頑張ってるわ!
下から蹴りが飛んできた。
それをかわした。
あと少しだった。
手を伸ばした。
―ファイアショット!
ヒュッ!
エリザベスは体をかがめた。
球体が彼女の横をかすめていった。
―分かりやすすぎるわ。
―分かってる。
彼女の剣が私の脇腹に命中した。
―うっ!
地面に倒れた。
まただ。
―…
エリザベスは上から私を見下ろしていた。
―続けましょうか?
—5分。
—2分。
—4分。
—2分。
—3分。
—承認。
私は身を任せた。
彼女は暴君だった。
14日目。
レグノスで目覚めてから2週間が経った。
少なくとも私の計算では。
カレンダーを持っていなかった。
だから作った。
レグノス生存日誌
14日目
訓練時間:11日間
戦闘セッション:31回
作成した魔法プログラム:17個
失敗したプログラム:46個
最後の数字は無視することにした。
しかし、私は進歩していた。
かなり。
自分の能力について重要なことを理解した。
私の最大の強みは、単に魔法を作り出すことではなかった。
それは、魔法をソフトウェアのように扱えるようになったということだった。
エリザベスが説明してくれた通りの魔法だと仮定すれば、普通の人は呪文を覚えるだろう。
私は呪文を開発できる。
そして、それを修正する。
最適化する。
バージョンを作成する。
他の呪文と組み合わせる。
そして、もし何かがうまく機能しなければ…
デバッグする。
私は溶岩火球をその完璧な例として作り上げた。
溶岩火球 v1.0
MP消費:12
命中率:低
そして:
溶岩火球 v1.3
MP消費:9
命中率:中
そして最後に:
溶岩火球 v2.0
MP消費:7
命中率:高
不要な命令を削除した。
コアの集中度を向上させた。
溶岩の量を減らした。
速度を向上させた。
それはプログラミングだった。
ただし、もし私がミスをしたら…
森を焼き尽くすことだってできる。
だからこそ、テストは実に刺激的だった。
18日目。
エリザベスが攻撃してきた。
私は防御した。
彼女の剣が私のバリアにぶつかった。
ガチャン!
「見事な防御だ。」
「ありがとう。」
彼女は後ずさりした。
私は追撃しなかった。
予想通りだった。
「ん?」
私は微笑んだ。
「実行。」
エリザベスは下を見た。
彼女の足元に影が現れた。
そしてもう一つ。
「何…?」
二つの黒い影が現れた。
それは私の姿だった。
ダブルシャドウ。
クローンたちは同時に攻撃してきた。
エリザベスは最初の攻撃を防御した。
彼女は二つ目の攻撃をかわした。
しかし、私は既に彼女の背後にいた。
「捕まえた!」剣が振り下ろされた。
ガチャン!
エリザベスはそれを止めた。
「素晴らしい。」
私は微笑んだ。
「まだだ。」
彼女の目が大きく見開かれた。
私の背後に3つの小さな光が現れた。
「魔法追跡者。」
光が放たれた。
エリザベスは飛び上がった。
球体は方向を変えた。
「追跡者の魔法?」
「その通り!」
エリザベスは走り出した。
球体は彼女を追撃し続けた。
「ずるいぞ。」
「プログラミングだ!」
最初の球体が爆発した。
エリザベスはそれを避けた。
2つ目も。
しかし、3つ目は彼女の肩をかすめた。
「やった!」
そしてそれは私の背後に現れた。
「しかし…」
「ああ、まずい。」
「…まだ遅い。」
ドスン!
再び地面に叩きつけられた。
21日目。
――またか。
――蓮様、もう4時間経ちました。
――またか。
エリザベスが私を見つめていた。
息が荒かった。
服は泥だらけだった。
いくつもの擦り傷があった。
それでも、まだ続けられた。
――彼は執着しているわ。
――違う。
――彼は4時間も同じ動きを完璧にしようと試みている。
――その通りだ。
私は剣を構えた。
――まだ失敗している。
エリザベスはため息をついた。
――彼はいつもこうだったの?
その質問に私は立ち止まった。
――どんな風に?
――何かがうまくいかない時。
私は考えた。
――そうね。
おそらく。
だからこそ、私はあの会社で長年生き延びてきたのだろう。
彼らは私に不可能なことを突きつけた。
私は解決策を探した。
失敗した。
もう一度挑戦した。
また失敗した。
調査した。
別の方法を試した。
そしてついに成功した。
以前との違いは、以前は誰かが利益を得て、私は破滅したということだ。
今は…
自分のためにやった。
「またか。」
エリザベスは微笑んだ。
「お望み通りに。」
25日目。
私の訓練はもはや魔法だけに限られていなかった。
私は慎重に自分の身体を改造し始めた。
MPを急激に増やすという愚かな過ちを繰り返したくなかった。
だから私はシステムを作った。
適応成長プログラム
次のように書く代わりに:
筋力 = 100
私は次のように設定しました:
トレーニング反応 = 強化
筋適応 = 2.0
マナ適応 = 2.5
反応学習 = 2.0
トレーニングしました。
私の体は反応しました。
再びトレーニングしました。
適応しました。
偽りのステータスは欲しくなかった。
実際にそれを使いこなせる体が欲しかった。
そして、それはうまくいった。
レン
身体能力:高
魔法制御:上級
戦闘経験:中級
最大MP:183
MPが100ポイントを超えた。
単に数値を変更したからではない。
私の能力が成長したのだ。
そして、それとともに…
私の可能性が広がった。
29日目。
—エリザベス。
—はい?
—今日は本気で戦いたい。
彼女は朝食の準備をしていた。
彼女は手を止めた。
—本当に?
—ええ。
—本当に?
—もちろん。
エリザベスはゆっくりと手を止めた。
—それなら…
彼女は微笑んだ。
—承諾する。
私はその微笑みが気に入らなかった。
しかし、もう遅かった。
私たちは配置された。
私たちは開けた場所で向かい合って立っていた。
致命的な攻撃はしない。
それが唯一のルールだった。
それ以外は全て許されていた。
エリザベスは剣を抜いた。
私は魔法で剣を召喚した。
「準備はいい?」
「ああ。」
彼女は姿を消した。
しかし今度は…
彼女の姿が見えた。
ガチャン!
私は防御した。
エリザベスの目がわずかに見開かれた。
「いいぞ。」
彼女は回転した。
蹴り。
私は腕でそれを受け止めた。
痛かった。
しかし私はひるまなかった。
「上達したな。」
「分かってる。」
私は攻撃した。
エリザベスは防御した。
二撃目。
彼女は防御した。
三撃目。
彼女はかわした。
私は後退した。
「ダブルシャドウ。」
私の影から二つの分身が現れた。
エリザベスはため息をついた。
「またあの二人か。」
「あいつらはあなたのことが嫌いなのね。」
「私も同じよ。」
分身たちが攻撃してきた。
エリザベスは動いた。
一撃。
二撃。
三撃。
彼女は最初の分身を破壊した。
二番目の分身が背後から襲いかかってきた。
エリザベスは身を翻した。
彼女はそれを貫いた。
「やりすぎだ…」
「影の再構築。」
破壊された分身が再び現れた。
「何?」
私は微笑んだ。
「新しいバージョン。」
分身が彼女の腕をつかんだ。
エリザベスはそれを破壊した。
「だが、これで一秒稼げた。
十分すぎるほどだ。」
「魔法の追跡者。」
五つの球体が現れた。
「五つ…」
「私も強化した。」
私は発砲した。
エリザベスは逃げ出した。 5つの球体が彼女を追った。
1つ目。
回避。
2つ目。
破壊。
3つ目。
防御。
4つ目。
エリザベスは飛び上がった。
そして私は微笑んだ。
「今だ。」
5つ目は追ってこなかった。
地面に向かっていった。
ドーン!
爆発で砂塵が舞い上がった。
エリザベスの姿が見えなくなった。
「陽動?」
「その通り。」
ウィンドステップ。
私は彼女の背後に現れた。
エリザベスは防御した。
「見つけたわ。」
「そうみたいね。」
そして私は消えた。
彼女は目を開けた。
私ではなかった。
別の影だった。
「トリプルシャドウ。」
「いつ…?」
私の声が上から聞こえた。
「5つ目の球体が爆発した時だ。」
エリザベスは顔を上げた。
私は落下していた。
剣が振り下ろされた。
彼女は防御した。
ガチャン!
衝撃で彼女はよろめいた。
1歩。
2歩。
3歩。
彼女をここまで後退させたことはなかった。
しかし、まだ終わっていなかった。
私は手を伸ばした。
「マジック・パースアーズ:スキャッターモード」
8つの光が現れた。
エリザベスは目を開けた。
「8つ…」
私は発射した。
球体が飛んでいった。
すべてが彼女に向かって飛んでいったわけではなかった。
いくつかは木々の周りを旋回した。
いくつかは上昇した。
2つは岩陰に消えた。
エリザベスは動き始めた。
しかし、発射体は軌道を修正した。
これこそが、私が何日もかけてプログラミングした機能だった。
単に標的を追っているだけではなかった。
動きを予測していたのだ。
エリザベスは2つをかわした。
彼女はまた一体を破壊した。
四体目。
五体目。
六体目。
だが、彼女がそれらに集中している間に…
私は既に別のことを修正していた。
ターゲット予測 = アクティブ
移動パターン = 分析済み
インターセプトポイント = 計算済み
コンソールが処理を完了した。
軌道検出
私は微笑んだ。
「捕まえたぞ。」
私はウィンドステップを使った。
エリザベスは振り向いた。
遅すぎた。
私の剣は止まった。
彼女の首から数センチのところで。
沈黙。
魔法追跡者たちは消えた。
私の影も消えた。
数秒間、私たちは何も話さなかった。
私は荒い息をしていた。
エリザベスは剣を見た。
そして、私を見た。
「…」
私はゆっくりと武器を下ろした。
「これでいいか?」
エリザベスは沈黙したままだった。
「エリザベス。」
「今、消化しているところよ。」
「何を?」
彼女は胸に手を当てた。
「私の屈辱を。」
「屈辱なんかじゃない!」
「私は自分の創造主に敗北したのよ。」
「あなたが私を育てたのね!」
「その通り。私を滅ぼす怪物を作り出したのは私よ。」
「死んでないわ!」
エリザベスは芝居がかったように膝をついた。
「私が良いメイドだったと世界に伝えて。」
「起きなさい!」
「私の唯一の後悔は…」
「エリザベス。」
「…朝食を作らなかったこと。」
「朝食はすぐそこよ!」
彼女は顔を上げた。
「それなら、安らかに死ねるわ。」
「死ぬのをやめろ!」
エリザベスは笑い始めた。
私は彼女を見つめた。
「君はどうしようもないな。」
「私は最高の師から学んだのよ。」
「そんなの、意味が分からない。」
でも、私も結局笑ってしまった。
すると、エリザベスが立ち上がった。
彼女の表情が変わった。
今度は真剣だった。
「彼は私を超えた。」
私は笑うのをやめた。
「私は一度しか勝てていない。」
「いいえ。」
彼女は首を横に振った。
「この戦いだけの話じゃないの。」
彼女は私の手を見た。
「彼の魔法の制御力、適応力、そして分析速度は、すでに私を上回っている。」
「でも、あなたはまだ経験が豊富だ。」
「今のところは。」
その二つの言葉に、私は微笑んだ。
今のところは。
私はコンソールを見た。
レグノス生存記録
29日目
ほぼ一ヶ月。
これで終わりだ。
計算によると、到着してから約4週間が経過した。
シャドウウルフから必死に逃げたあの男から4週間。
今…
エリザベスを倒せる。
しかし、不思議なことに、無敵になったという感覚はなかった。
むしろ正反対だった。
学べば学ぶほど…
自分がどれほど何も知らないかを痛感した。
「エリザベス。」
「はい?」
私は地平線を見つめた。
森の向こうには、広大な世界が広がっていた。
都市。
王国。
魔法。
人々。
怪物。
もしかしたら、私を容易に滅ぼせるような存在もいるかもしれない。
私たちはあまりにも長い間、身を隠しすぎていた。
「そろそろ時が来たと思う。」
エリザベスはすぐに理解した。
「森を出る時?」
私は頷いた。
私は生き延びる術を身につけた。
魔法を習得した。
肉体を強化した。
私は…
私は独自の技を編み出した。
ダブルシャドウ
マジック・パースアーズ
ウィンドステップ
そして他にもたくさん。
しかし、成長を続けるためには…
レグノスを知る必要があった。
あの世界が実際どうなっているのかを知る必要があった。
誰が力を持っているのか。
彼らはどのように魔法を使うのか。
どんな国が存在するのか。
そして何よりも…
この世界の中で、私が居場所を見つけられる場所を。
私はコンソールを閉じた。
「この世界を見てみたい。」
エリザベスは微笑んだ。
「では、私も同行しましょう。」
「私があなたを倒した後でも?」
彼女は胸に手を当てた。
「あの悲劇的な出来事については、二度と口にしないで。」
「たった2分前のことだ!」
「私の心にはまだ時間が必要なの。」
私はため息をついた。
ああ。
彼女の人格をプログラミングした時、確かに何かおかしなことをしてしまった。
荷物をまとめるために洞窟に戻る途中、訓練した場所を最後にもう一度見渡した。
私は自分の力の使い方も知らずにそこにたどり着いた。
今、私は戦える。
創造できる。
改造できる。
学ぶことができる。
しかし、これはまだ始まりに過ぎない。
ただステータスが高いだけの人間になりたくなかったからだ。
自分の力を隅々まで理解したかった。
それを完全にマスターしたかった。
そして、レグノスに私より強い者がいるなら…
それこそが好都合だ。
それは、私にまだ目指すべき目標があるということだから。
私は微笑んだ。
この世界がどれほど強力なのか、今こそ知る時だ。




