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二度目のチャンス

暗闇。


それだけだった。


痛みはない。


音もない。


寒さもない。


暑さもない。


ただ暗闇だけ。


そして、不思議なことに…


悪くは感じなかった。


どれくらいそこにいたのか分からなかった。


1分?


1時間?


1日?


見当もつかなかった。


自分の体に何かがあるのかどうかも分からなかった。


手を動かそうとした。


何も反応がない。


目を開けようとした。


何も変わらない。


もしかしたら、もう開いていたのかもしれない。


「それで…」


どうにか声が出た。


「僕は死んだのか?」


誰も答えない。


当然だ。


何を期待していたというのか?


何が起こったのか、彼は鮮明に覚えていた。


地震。


爆発。


学校。


閉じ込められた少女。


炎。


痛み。


そして最後に…


体が反応しなくなった感覚。


私は死んでいた。


他に説明のしようがなかった。


不思議なことに、その事実を知った時、想像していたほどの恐怖は感じなかった。


おそらく、死ぬ間際にすでに十分な恐怖を感じていたからだろう。


今…


私は静かだった。


静かすぎるほどに。


メールは来ていない。


電話もない。


締め切りもない。


誰も私に何も頼めない。


誰も私にもっと早く働けと言えない。


誰も私に何も期待していない。


何年もぶりに…


何もすることがなかった。


「これはいいな…」


思わず口にしてしまった。


そして、そう言ったことを後悔した。


私の人生は、死ぬことが休息のように感じられるほどにまで落ちぶれてしまったのだろうか?


「なんて悲しいことだろう。」


もしそれが死だとしたら、私にはどうすることもできなかっただろう。


もしかしたら、そのままそこに留まるべきなのかもしれない。


永遠に。


心配事もない。


責任もない。


痛みもない。


恐怖もない。


ただ休むだけ。



しかし、その時、あることを思い出した。


もう一度チャンスを。


それが私が望んだことだった。


死ぬ前に。


消えてしまいたくなかった。


生きたかった。


いつも明日に延ばしてきたことを、全部やりたかった。


これから始まる一日を憎まずに目覚めるって、どんな感じなのか知りたかった。


私は…


―生きたかった。


その言葉が暗闇にこだました。


そして、誰かが答えた。


―本当にそれが望みなのか?


私は凍りついた。


―え?


その声は男の声ではなかった。



女の声でもなかった。


それはどの方向から聞こえてくるようにも思えなかった。


ただ…


そこにあった。


―あなたは誰?


返事はなかった。


―ここはどこ?


沈黙。


―おい。


何も聞こえない。


不安を感じ始めた。


「聞こえるなら、せめて…」


「答えてくれ。」


私は黙ったままだった。


声が再び聞こえた。


「本当に生きるチャンスが欲しいのか?」


私の最後の考えがすぐに蘇った。


「もう一度チャンスをくれ。」


「ああ。」


答えは容易に出た。


「本当に?」


「もちろんだ。」


沈黙。


すると声は再び尋ねた。


「また苦しむことになると分かっていても?」


私は眉をひそめた。


「何?」


「生きることは幸せになることではない。」


闇はさらに深まるように感じられた。


「もう一度生き返れば、また痛みを知ることになる。」


そう聞こえた。


「何かを失うだろう。」


声は続いた。


「失敗するだろう。」


再び沈黙が訪れた。


「あなたを傷つける人がいるだろう。避けられない障害もあるだろう。恐怖を感じるだろう。後悔する決断もあるだろう。」


私はすぐに答えなかった。


「それでも戻りたいのか?」


考えた。


ためらうべきだったのかもしれない。


しかし、ためらわなかった。


「はい。」


「本当にいいのか?」


何かが内側からざわめき始めた。


「もうはいと言った。」


「休んでいい。」


声は完全に穏やかだった。


「ここには苦しみはない。」


いいえ。


「義務はない。」


分かっていた。


「失敗はない。」


それは真実だった。


「ここにいてもいいよ。」


ほんの少しの間…


ほんの少しの間だけ…


その考えは魅力的だった。


休む。


永遠に。


もう二度と心配しなくていい。


もう二度と恐れなくていい。


もう二度と何も失わずに。


でも、問題があった。


それも生きているとは言えない。


それに、永遠に休みたいとは思わなかった。


もう十分休んだ。


「嫌だ。」


「嫌だって?」


「戻りたい。」


「たとえ新しい生活が困難でも?」


「うん。」


「たとえまた苦しむことになっても?」


私は歯を食いしばった。


「うん。」


「たとえ――?」


「うん!」


私の叫び声は、果てしない虚無にこだました。


「そうだ、くそっ!」


自分が誰に話しかけているのか分からなかった。


どうでもよかった。


長年の鬱積した感情が一気に溢れ出した。


「生きたい!」


沈黙。


「たとえ辛くても構わない!」


自分のアパートを思い出した。


友達。


母。


やりたかったことすべて。


「完璧な人生なんて求めてない!」


声が震えた。


「ただ、一度だけチャンスが欲しい!」


暗闇は静まり返った。


しかし、まだ話は終わっていなかった。


「失敗したい!馬鹿なことをしたい!人と出会いたい!もし恐怖を克服していたら、どうなっていたのか知りたい!」


そこで目覚めて以来初めて、涙がこみ上げてくるような感覚があった。


「明日を待つだけの人生をもう一度送りたくない。」


何も起こらない。


「だから、そうだ。」


声が柔らかくなった。


「間違いない。」


沈黙。


長い沈黙。


そしてついに…


「わかった。」


声が少し変わっていた。


どう変わったのか、自分でも説明できなかった。


まるで…


満足しているようだった。


「では、あなたの願いは叶えられる。」


私は凍りついた。


「えっ?」


「二度目のチャンスが与えられる。」


私は何も言えなかった。


そんな簡単に?


待って。


そうだ。

しかし、君が行く場所は、君が知っていた世界ではない。


「どういう意味だ?」


「君は別の世界でやり直すんだ。」



別の世界?


頭が少し働いた。


「待って、待って。」


聞き覚えのある言葉だ。


アニメ。


マンガ。


小説。


これまで読み漁ってきた物語の数々から、この話がどういう展開になるか分かっていた。


「つまり、僕は…」


「君は再び生きるんだ。」


声が私の言葉を遮った。


「だが、君を待ち受ける世界には、前世では経験したことのない危険が潜んでいる。」


突然、面白そうに思えなくなった。


「危険?」


「怪物。争い。君が知らない力。君が愛するものを破壊できる人々。」


最悪だ。


素晴らしい。



二度目のチャンスを求めたが、どうやらそれは高いハードルだったようだ。


「だからこそ、君には力が与えられる。」


私は立ち止まった。


「力?」


「その世界で生き、遭遇する障害に立ち向かうための能力だ。」


まさにあの話に出てくるような話だった。


「どんな力?」


沈黙。


「超人的な力?」


何も反応がない。


「魔法?」


声は何も答えない。


「せめて役に立つものなのか教えてくれないか?」


「役に立つようになる。」


「それじゃ何も解決しない。」


「使い方を覚えるんだ。」


「おい…」


「君の能力は、君が最もよく理解しているものと結びつく。」


その言葉に私はハッとした。


「私が最もよく理解しているもの?」


すぐに一つのことが頭に浮かんだ。


プログラミング。


「言わないで…」


「あとは君次第だ。」


「待って!」


暗闇が変わり始めた。


目の前に小さな白い点が現れた。


「まだ疑問が残っている!」


点が大きくなり始めた。


「生きろ。」


「それだけ?!」


「決めろ。」


光が強まった。


「おい!」


「間違えるな。」


光はますます明るくなった。


「せめてどこへ行くのか教えてくれ!」


「そして今度は…」


光がすべてを包み込んだ。


「自分の人生を自分のものにしろ。」


「待って!」


目の前に巨大な閃光が炸裂した。


「ああ!」


目を覆おうとした。


今度は腕を感じた。


手を感じた。


体を感じた。


光が目をくらませた。


そして…


「ああ!」


目を開けた。


飛び起きた。


「一体どういうことだ?!」


息を呑んだ。


心臓が鼓動している。


胸の感触がある。


手の感触がある。


足の感触がある。


そして…


「私の体?」


顔に触れた。


鼻。


口。


髪。


「体がある。」


手を見た。


「手がある。」


手を動かした。


10本の指。


完璧だ。


「生きている。」


凍りついた。


そして、もう一度繰り返した。


「生きている…」


緊張した笑いが口から漏れた。


「生きている。」


信じられなかった。


叫びたかった。


笑いたかった。


泣いてしまうかもしれない。


たぶん、全部泣いてしまうだろう。


そして、ようやく周りを見渡した。


「…」


森だ。


いや。


巨大な森だ。


巨大な木々が、真っ青な空に向かってそびえ立っている。


木々の葉の間から陽光が差し込み、小さな金色の光線を作り出している。


見たこともない花々が咲いている。


蝶がそれらの間を舞っている。


遠くで鳥のさえずりが聞こえる。


風が優しく枝を揺らしている。


深呼吸をした。


空気は…


澄んでいる。


驚くほど澄んでいる。


車は一台もない。


建物もない。


エンジン音もない。


電話もない。


ただ風の音だけ。


鳥のさえずりだけ。


そして、遠くで聞こえる水の音。


ゆっくりと立ち上がった。


「本当に…」


周りを見渡した。


「…別世界だったんだ。」


信じられない。


まったく馬鹿げている。


しかし、死んで、虚無の中の声と口論し、見知らぬ森で目覚めた後では、驚きを感じる力も薄れ始めていた。


自分の服を見た。


彼女は以前とは違っていた。


シンプルなシャツに、黒いズボン、そしてブーツを履いていた。


「ええと…」


ポケットを確認した。


空っぽだ。


「最悪だ。」


携帯電話がない。


お金がない。


食料がない。


身分証明書がない。


地図がない。


「二度目のチャンスには、サバイバルキットくらいは含まれていたかもしれないのに。」


頭上で鳥がさえずっていた。


「ああ、ありがとう。」


すると、水の音が聞こえた。


喉が渇いていたことを思い出した。


音のする方へ向かった。


木々をかき分けて進むと、小さな川を見つけた。


水は澄み切っていた。


川底の石が見えた。


私はひざまずいた。


「信じられない…」


両手を差し出した。


すると、水面に何かが見えた。


顔だ。


私は立ち止まった。


「え?」


水の中にいた若い男も立ち止まった。


私は右へ移動した。


彼も同じようにした。


左へ。


私も。


私はさらに近づいた。


「まさか…」


自分の顔に触れた。


水面に映った自分も全く同じように触れた。


「あれは私?」


私の顔は違っていた。


完全に違うわけではない。


いくつかの特徴は認識できた。


でも…


もっと若い。


ずっと若い。


疲労の痕跡のない肌。


あのひどいクマもない。


髪がもっと多い。


顔が細くなっている。


私の目は…


生き生きとしている。


私は急いで立ち上がった。


自分の腕を見た。私の体も変わっていた。


「私は何歳なの?」


私は再び水の中に入った。


18歳。


もしかしたら19歳かも。


27歳ではないのは確かだ。


頬に触れた。


「若返らせてくれたんだ…」


思わず笑ってしまった。


笑いが止まらなかった。


「若返らせてくれたんだ!」


私の笑い声が森に響き渡った。


木から鳥の群れが飛び立った。


「ごめんなさい!」


口を手で覆った。


そして再び水面に映る自分を見た。


18歳。


もう一度。


彼らは私に新しい命を与えただけではなかった。


彼らは私を元に戻してくれたのだ。

あるいは、何年も。


永遠に失ってしまったと思っていた年月。


喉に何かが詰まったような気がした。


今度は、涙をこらえようとはしなかった。


一筋の涙が川に落ちた。


「ありがとう…」


誰が聞いているのか分からなかった。


もしかしたら誰も聞いていないかもしれない。


そんなことはどうでもよかった。


「ありがとう。」


涙を拭った。


深呼吸をした。


怖かった。


自分がどこにいるのか分からなかった。


どんな危険が潜んでいるのかも分からなかった。


あの世界がどうなっているのかも分からなかった。


今夜どこで寝るのかさえ分からなかった。


でも、本当に久しぶりに…


オフィスに戻る必要がなかった。


プロジェクトもなかった。


締め切りもなかった。


評価もなかった。


不可能なことを期待する上司もいなかった。


ただ一人。


見知らぬ森。


そして、二度目のチャンス。


私は微笑んだ。


「よし。」


最後にもう一度、鏡に映る自分を見た。


「今度は違うやり方でやる。」


すると、何かが起こった。


目の前に、青い光の細い線が現れた。


それは瞬いた。


一度。


二度。


すると、空中に浮かぶように、いくつかの文字が現れた。


私はすぐにそれが何であるか分かった。


それがその世界のものだったからではない。


かつての人生で、似たようなものを観察し続けてきたからだ。


それはコンソールだった。


そしてその中に、たった一行だけが表示されていた。


システム準備完了。


私の笑顔は消えた。


…」


瞬きをした。


窓はまだそこにあった。


「まさか」


二行目が現れた。


マジックコンソール ― アクセス許可


じっと見つめた。


そして、あの声の言葉を思い出した。


「君の能力は、君が最もよく理解しているものと結びつくだろう」


背筋に寒気が走った。


「プログラミング中…」


コンソールが点滅した。


そして、最後の行が目の前に現れた。


ようこそ、レン。


私の新しい人生が始まった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、評価や感想をいただけるととても嬉しいです。


皆様の応援が執筆の励みになります!

これからもよろしくお願いします!


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