異世界から来たお嬢様たちは、生き抜く術を知らない。
私は間違いを犯した。
とんでもない間違いを。
3人の生徒を連れて行くことを決めてから1時間も経たないうちに、もうその意味が分かってきた。
「レン!」
「どうする?」
私は振り返った。
3人は私たちの数メートル後ろで立ち止まっていた。
エリザベスと私は穏やかに歩いていたが、彼女たちは…
まあ。
彼女たちはできる限りのことをしていた。
「泥だらけ」と金髪の少女が言った。
私は地面を見た。
「ああ」
「かなり」
「森だからね」
「でも、私の靴が…」
私は足元を見た。
彼女は黒い制服の靴を履いていた。
すでに泥だらけだった。
「靴がどうしたんだ?」
「ダメになっちゃう」
「…」
私はエリザベスを見た。
エリザベスは目をそらした。
「笑わないで。」
「何もしてないよ。」
「君のこと知ってる。」
金髪の少女は、まるで溶岩の川でも見るかのように、小さな泥の塊を指差した。
「他に方法はないの?」
「もちろん。」
彼女の目が輝いた。
「本当?」
「引き返して、何時間も歩いて、別の道を見つけるかもしれない。そして、怪物に襲われないことを祈るしかない。」
沈黙。
少女は泥を見た。
それから森を見た。
最後に再び泥を見た。
「私なら大丈夫だと思う。」
「いい判断だ。」
彼女は一歩踏み出した。
ザブン。
「ああああ!」
「何が起きたの?!」
「水しぶきがかかった!」
私は目を閉じた。
今日はとても長い一日になりそうだ。
すぐに、私たち二人の間に大きな違いがあることに気づいた。
私はレグノスに何も持たずにやって来た。
何週間も洞窟で寝泊まりしていた。
火の起こし方を覚えた。
水の探し方を覚えた。
危険を察知する方法を覚えた。
戦う方法を覚えた。
魔法を使う方法を覚えた。
彼女たちは…
裕福な家庭の子弟が通う私立学校の生徒だった。
だからといって、彼女たちが悪い人間だというわけではない。
むしろ正反対だ。
彼女たちはとても感じが良かった。
問題は、彼女たちの困難な状況に対する認識が…
違っていたことだ。
全く違っていた。
「彼女たちに名前をつけなきゃ」と私は言った。
黒髪の少女は眉をひそめた。
「私たちには名前があるわ」
「だからこそ聞いているのよ」
彼女は自分を指差した。
「黒瀬茜」
金髪の少女は微笑んだ。
「西園寺深雪」
茶髪の少女は軽くお辞儀をした。
「橘遥。」
「蓮。」
茜が私を見た。
「それはもう知ってるわ。」
「礼儀として言ってるだけよ。」
エリザベスが頭を下げた。
「エリザベス。」
美雪が微笑んだ。
「制服、すごく素敵!」
エリザベスが瞬きをした。
「私の制服?」
「ええ。デザイナーブランド?」
「…」
私はエリザベスを見た。
彼女は私を見た。
「ええと…」と彼女は答えた。「厳密に言うと、オリジナルデザインなの。」
「やっぱり!」
美雪の目が輝いた。
「いくらしたの?」
「タダ。」
「タダ。」
「タダ?」
「蓮様が作ってくれたの。」
沈黙。
私は凍りついた。
エリザベスも。
茜が私を見た。
遥が私を見た。みゆきが私を見た。
「あなた…作ったの?」
エリザベスは無邪気に微笑んだ。
「私の服よ。」
「服の話してる!」
エリザベスが私を見た。
「もちろん。」
私は目を細めた。
彼女はわざとやったのだ。
私は確信していた。
「じゃあ、服のデザインができるのね」とみゆきが言った。
「まあ、そこまでじゃないけど。」
「制服直してくれる?!」
「え?」
3人は私を見た。
「私の制服、破れてるの!?」
「ブレザーのボタンが取れてるの!」
「靴が汚れてるの。」
私は手を上げた。
「待って。」
沈黙。
「私は魔法を操れるの。コインランドリーじゃないわ。」
エリザベスは指を一本立てた。
「技術的には、掃除プログラムを作ることもできるわ。」
私は彼女を見た。
「彼らを煽らないで。」
「ただ可能性を指摘しただけよ。」
美雪は両手を組んだ。
「掃除魔法?」
―いや。
―お願い?
―いや。
―蓮…
―ダメ!
続けよう。
15分後:
―喉が渇いた。
―水を飲もう。
私は即席の容器を彼女に手渡した。
美雪はそれを見た。
―これは何?
―水。
―容器のこと。
―木で作ったんだ。
彼女はそれを調べた。
―これ…消毒済み?
―…
―美雪、―茜が言った。
―何?
―飲んで。
―でも―
―飲んで。
みゆきは一口飲んだ。
目を見開いた。
―新鮮!
―水だ。
―味が違う!
―300円のボトルじゃないから。
みゆきは驚いた顔で私を見た。
「どうして私の水の値段を知ってるの?」
「やっぱり!」
はるかはおずおずと手を挙げた。
「いつも500円のボトルを買ってるの。」
私は立ち止まった。
「何が入ってるの?」
「特別なミネラル。」
「ただの水よ。」
「アルプスの水。」
「それでも水よ!」
エリザベスは口元を手で覆った。
「また笑ってる。」
「ちょっとね。」
本当の試練は、食料を見つけた時に訪れた。
エリザベスは茂みのそばで立ち止まった。
「このベリー、食べられるよ。」
茜は一つ摘んだ。
「本当に?」
「もちろん。」
遥は茜を見た。
「オーガニック?」
私は固まった。
エリザベスも。
「遥。」
「何?」
私は両腕を広げ、森全体を指差した。
「ここは自然の真ん中よ!」
「ああ。」
彼女はベリーを見た。
「じゃあ、そうね。」
「オーガニックってどういう意味だと思ってたの?!」
茜は笑い出した。
「笑わないで」遥は抗議した。
「野生のベリーがオーガニックかどうか聞いたでしょ!」
「確認したかっただけ!」
美雪も笑っていた。
「水が殺菌されているかどうか聞いたでしょ」遥は言い返した。
美雪は笑うのをやめた。
「それは違う。」
「どういうこと?」
「水にはバクテリアがいるかもしれない!」
「それに、ベリーには虫がいるかもしれない!」
二人はベリーを見つめた。
沈黙。
そして、二人は同時にベリーを置いた。
「…」
私は手を…
正面。
エリザベスが近づいてきた。
「蓮様。」
「だめだ。」
「何?」
「何を言おうとしているのか分かってるわ。」
「ただ、大丈夫かと聞こうと思って。」
「だめだ。」
「分かってる。」
しかし…
全てが悪いわけではなかった。
歩き続けるうちに、私は彼女たちをもっと注意深く観察し始めた。
みゆきは世間知らずだった。
本当に。
でも、彼女は誰に休む必要があるかと真っ先に尋ねた。
はるかは内気で用心深いように見えたが、どうすればいいのか分からなくても、助けようとしていた。
そして茜は…
茜はプライドが高かった。
でも、彼女は明らかに他の二人のことを気にかけていた。
みゆきが転んだ時、彼女は彼女を支えた。
はるかが物音に驚いた時、茜は彼女のそばを歩いた。
おそらくそれが、彼女があの盗賊を蹴った理由だろう。
彼女は自分のことを考えていなかった。
友達に触ろうとした時、彼女は反応した。
彼女たちは役立たずではなかった。
ただ…
「完全に場違いだ」と私は呟いた。
エリザベスが私の隣を歩いていた。
「あなたが初めて来た時みたいね」
その言葉に私は黙り込んだ。
彼女の言う通りだった。
初日、私は火の玉をプログラミングしようとして、叫びながら走り回っていた。
違いは、私にはコンソールがあったということだ。
彼女たちにはなかった。
少なくとも、そうは見えなかった。
「私たちが教えなきゃいけないみたいね」
「私たちが?」
「ええと…」
私は彼女を見た。
「あなた」
「レン様」
「わかった。私たちで」
エリザベスは微笑んだ。
日が暮れ始めた頃、私たちは小さな空き地に着いた。
「ここで野営しましょう」
三人の少女は立ち止まった。みゆきは辺りを見回した。
「ここ?」
「うん。」
「どこで寝るの?」
私は地面を指差した。
「あそこ。」
三人は凍りついた。
「…」
「…」
「…」
最初に口を開いたのはあかねだった。
「地面で?」
「うん。」
はるかも辺りを見回した。
「宿屋はないの?」
冗談だと思った。
彼女の表情から、冗談ではないことが分かった。
「はるか。」
「何?」
「周りを見て。」
彼女は従った。
木々。
木々。
さらに木々。
「宿屋は見える?」
「ない。」
「それが答えよ。」
みゆきが手を上げた。
「トイレは?」
「森の中。」
「シャワー?」
「川。」
「お湯は?」
「…」―火。
―ベッドは?
―床。
―枕は?
―リュックサック。
―個室は?
―木!
エリザベスはついに笑いをこらえきれなくなった。
茜も。
みゆきは頬を膨らませた。
―そんな言い方しなくてもいいのに。
―私たちの状況を説明しようとしてるの。
―もっと優しく言ってよ。
―私たちは異世界に迷い込んだの。
―わかってる。
―盗賊に襲われたの。
―それもわかってる。
―一番近い町がどこにあるのかもわからない。
―うん…
―じゃあ、五つ星ホテルのことは一旦忘れよう。
みゆきはうつむいた。
―星3つでいいよ…
―みゆき!
みんなで笑い出した。
みゆきも結局笑ってしまった。
エリザベスが夕食の準備をしている間、私はちょっと確認することにした。
「あなたたち3人。」
女の子たちは私を見た。
「明日は早く出発するわ。」
茜が眉をひそめた。
「歩き続けるため?」
「それとね。」
私は微笑んだ。
「でも、まずは基本的なサバイバルスキルを身につけるわ。」
3人は黙り込んだ。
「何?」
「火を起こす。」
「魔法で?」みゆきが尋ねた。
「違う。」
「ライターで?」
「ライターは持ってないわ。」
「じゃあどうするの?」
私は彼女に2つの石を見せた。
彼女の表情は最高だった。
「違う…」
「そうよ。」
はるかが手を挙げた。
「魔法を使えないの?」
「もちろん。」
私の指先に小さな炎が現れた。
三人は興味津々でそれを見つめていた。
私は炎を消した。
「でも、あなたは使えないのよ。」
「ずるいよ」と深雪は抗議した。
「レグノスへようこそ。」
茜は微笑んだ。
「覚えるわ。」
「完璧。」
遥はためらった。
「難しいの?」
「最初はね。」
深雪は石を見つめた。
「もし手を怪我したら?」
「大丈夫よ。」
「どうしてわかるの?」
「だって、私が生き延びたから。」
彼女は大げさにため息をついた。
「父がこんなことを許すはずがないわ。」
「あなたのお父さんはここにいない。」
沈黙。
三人の表情が変わった。
しまった。
思ったよりひどい言い方になってしまった。
「ごめんなさい。」
みゆきはゆっくりと首を横に振った。
「大丈夫よ。」
彼女は火を見つめた。
「ただ…」
彼女はかすかに微笑んだ。
「戻ったら、この件で誰かクビにすると思う。」
「誰を?」
「分からない。」
「じゃあ、なんでクビにするのよ!?」
あかねは吹き出した。
はるかも笑った。
みゆきは心底困惑した様子だった。
「うちの父は怒るといつもああいう風になるの。」
「なるほどね。」
「ちょっと!」
エリザベスが私たちの前に料理を置いた。
「夕食よ。」
三人は皿を見た。
それからエリザベスを見た。
みゆきはおずおずと手を挙げた。
「デザートはありますか?」
エリザベスは微笑んだ。
「ベリーです。」
美雪は顔色を青ざめた。
「虫のいるやつですか?」
「虫がいるとは言ってません!」
その夜、私はあることに気づいた。
異世界から来た3人の少女を守るのは、モンスターがいるから難しいと思っていた。
盗賊がいるから。
レグノスの未知の危険があるから。
私は間違っていた。
制服を汚さないように食べようと必死な美雪。
皿代わりに使っている葉っぱが衛生的かと尋ねる遥。
煙ばかり出しているのに、火のつけ方を知っていると主張する茜。
そして最後に、私の苦労を少しばかり楽しんでいるように見えるエリザベス。
私はため息をついた。
「影狼、魔法、モンスター…」
エリザベスは私を見た。
「蓮様?」
「何もない。」
私は新しい仲間3人を見た。
本当の
課題は、彼らに家事手伝いなしで生きていく方法を教えることだった。




