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その3  冥府の祭壇

白猫少女と六脚ロボは、死者の住む都市へと辿り着く。

少女自身も武器を手に、祭壇への道を切り開く。

そうして出会った”祭壇”の姿は、少女の想像と乖離していた。

 立ち並ぶ荒れた廃墟群の中に、六脚の変わった機械が停まっている。


 機械の周りに並ぶ半壊の建物は、どうも家屋などでは無さそうだ。数階建ての大きな建物は装飾のような痕跡も無く、無骨な装いからして…それらは恐らく工場だった。そんな建物が大通り沿いに延々と連なっており、その合間にぽつぽつと壊れた乗物などが散見される。

 かつては工業地帯だったらしきその場所で、六脚機の前に白猫少女が杖を携えて立っている。彼女は杖を振り回しながら、まっさらな積雪に足跡を残す。


 どうやら少女は、機械から何か教えを受けているようだった。






『当機の中には、火炎攻撃が行える魔法の武器があります。使用方法も簡単で、神徒(しんと)の魔力であれば有用に使用できると思われます。当機の武装と比べて小回りも利くので活用することを推奨します』


 セイとミカハチが、ゾンビの大群に出会ってから3日目。

 祭壇(さいだん)があるというアードゥラ王都とやらがかなり近付いたという事で、セイとミカハチは前日も前々日もゾンビと遭遇していた。基本的にはミカハチがそいつらを()いたり逃げたりして事無きを得ていたのだが、その間セイは何もできていなかった。

 しかし今後は恐らく、ゾンビ共も増えるだろう…という事で、神徒固有の魔法とやらを未だ発現していないセイは、ミカハチが保有していた魔法の武器の使い方を教わることにしたのだった。


「ちょっとあんた、コレって本当に安全な物なのよね?」

『はい、その通りです』

「…あんたの言葉、全く信用できないんだけど」

 工業地帯だったと思われるその廃墟の広い場所で、セイはミカハチの中にあった魔法の杖を手に持っている。

 杖…とは言っても、先端に付いている赤い石を除き、杖の素材は軽い金属のようなものだった。セイの背丈より長いその杖には中腹に引き金のような部品まで付いており、何故か末端が小さく二股に分かれている。

 それは、セイがぼんやりと想像する“魔法”の姿とかけ離れていた。

「これが魔法ねぇ…。ミカハチ、これ引けばいいの?」

 セイは恐る恐る、杖の引き金に触れる。

『はい、その通りです』

 引き金は冷たい。

 セイの指に力が入る。

「これ、火が出るってあんたは言ったけど…火炎放射器みたいにずっと出続けるの?それとも火の玉が飛んで行く感じ?」

『…』

「あーはいはい、聞き方が悪かったわね…ねえミカハチ、これは火の玉が出る魔法の武器なのかしら?」

『はい、その通りです』

(このポンコツ、本当に面倒ねぇ…)

 セイは呆れながらも、とりあえず魔法を一回使ってみる決意をする。彼女は杖を小脇に挟み、杖の頭をやや上向きに構える。そして深呼吸を一つした後、思いっきり小さな引き金に力を込めた。


 次の瞬間、セイは仰向けにひっくり返った。

「ぎゃっ!」

 杖の反動が想定以上だったセイは、それに耐えられなかった。

 杖から生まれた青白い火球も弾道がぶれ、セイが元々構えていたより(はる)か高く舞い上がった。そしてミカハチの数倍の高さまで浮上した火球はそのままフラフラと落下し、遠くの着弾点で中規模の爆発を起こす。




 倒れて起き上がろうとしないセイの所に、ミカハチがゆっくりと歩み寄る。そして二本の腕でセイを優しく抱き起こす。

『その武器「蒼焔杖(そうえんじょう)」は、反動が大きいので使用には注意して下さい。杖の末端を肩に当てる形で使用することを推奨します』

「…あんたねぇ、そういう事は最初に言いなさいよ」

 むすっとした顔のセイは、言われた通りに杖を構えなおす。杖の末端の二股部分はセイの脇下から肩の間に良い具合にフィットした。先程と比べて安定した杖を構えなおし、セイは再び引き金に指を添え…。


『祭壇の影響下にあると思われる敵性勢力の接近を確認しました』


 ミカハチが警告を発した。

 セイは驚き、毛を逆立てる。

「て、敵!?」

『敵性勢力の反応は少数、脅威度は中です。協力者の戦力も加味し、逃避を推奨します』

「ああ、危険って程では無いのね。じゃああんたの言う通りさっさと逃げよっか」

『了解致しました』

 セイの言葉を受け、ミカハチは彼が背負う小屋の入り口をセイの方に向ける。セイも服に付いた雪をぱっぱと払って小屋の扉を開く。

(敵…ゾンビ達の数がどんどん増えてるみたい。ミカハチの言う“危険区域”がもう近いんでしょうね)

 セイもそれが分かっているから、今日こうしてミカハチから魔法を教わったのだ。ミカハチ曰く“もうすぐアードゥラ王都に入る”との事だったので、セイも不本意ではあったが覚悟を決める。


 セイは小屋に入り、その戸を閉める。

 遥か後方からゆらゆらと(せま)る屍人から逃げるように、ミカハチは歩き出す。











 その後ミカハチは工業地帯跡地を抜け、全面凍結した湖の上を進んだ。

 湖面にゾンビはおらず、安全に進むことができた。

 進行方向の遠くには高い建物群の影も見えており、祭壇がもう近いのだとセイにも何となく分かった。




『アードゥラで脅威となるのは、王都内と郊外で活動する複数の屍群です。特に王都は狭いため遭遇(そうぐう)を避けるのが厳しく、神徒の援護を必要とする可能性が高いです』


 冷たい風の走る凍結湖面の上、そこに停まっているミカハチ。

 セイはそのミカハチの上、いつも居る小屋の上で何やら作業をしている。

「はぁー…何であたしがこんなメンドーな事をしなきゃいけないの?」

 彼女は小屋の中にあった小さな椅子を屋根の上に置き、それに縄を巻いている。そして彼女はそれを、小屋より一回り高いミカハチの本体部分との境に置く。それを待っていたミカハチが縄尻を受け取り、自身の本体へそれを器用に巻き付ける。

 固定された椅子にセイが座ると、彼女はちょうどミカハチの真後を向く格好になった。

「ここであたしにもゾンビと戦えと、あんたはそう言うのね」

『はい、その通りです』

 ミカハチの小屋の上に座るセイは、ミカハチが「蒼焔杖」と呼んだ武器を携えてむすっとしている。冷たい風を受ける彼女だが、毛皮のお陰かあまり寒さは感じていなかった。


 椅子に座るセイは、足をふらふらさせながら悪態を吐いている。

「あたしに危ない事をさせるとか、あんたどういうつもり?あたしは偉い神徒サマなんでしょ?というか…そもそもあんたがあの大砲を撃てば、無理してあたしが戦う必要なんて無くない?」

 色々な不満を並べるセイだが、ミカハチはいつも通り冷徹だ。

閃紅砲(せんこうほう)の使用直後には魔力回復が必要になる為、一時的に行動不能となります。故に緊急回避的な使用は推奨しません』

「は?敵を倒しちゃえばそんなの別に良いでしょ?」

『アードゥラで脅威となるのは、王都内と郊外で活動する複数の屍群です。特に王都は狭いため遭遇を避けるのが厳しく、神徒の援護を必要とする可能性が高いです』

「あー…相変わらずあんたの話は分かりにくいわねぇ」

 言葉は通じるのに意思疎通が上手くいかないミカハチ相手に苛立(いらだ)ちながら、セイはその言葉をなんとか理解しようと努力する。

「つまり…アードゥラ王都って所にはゾンビの群れがいくつかあって、あんたの閃紅砲?で倒せるには倒せると。だけどそうするとあんたが動けなくなって、その間に別のゾンビに襲われるのが危ない…そういう事?」

『はい、その通りです』

「だから代わりにあたしに戦えって訳ね。全く、人使いが荒いわよ」

 セイは肩を落とす。

 彼女の吐いた白い溜息が、凍てつく風にすぐ散らされて消える。

 陽はだいぶ傾き、遥かな地平線に沈む最中だった。


 しかし気乗りしないセイなぞお構い無く、ミカハチの足取りは軽やかだ。

『祭壇への接近を試みます。神徒は十分注意をして下さい』

「え、まさか今日このまま向かうの?もう遅いし明日でいいじゃない」

『全ては大いなる使命の為です。ご理解をお願いします』

 どうやらこのまま一直線で王都に突貫するつもりらしいミカハチだが、そうなると恐らく祭壇到着はどうやっても深夜になりそうだ。滅入るセイだが、外すことのできない黒い首輪がさらに彼女を落ち込ませていた。

「あっそ…。どうせあたしは首輪のせいであんたから逃げられないし、あんたがその気なら付いて行くしかないんでしょ?あたしに選択肢とか無いわけだし」

『はい、その通りです』

「…」

 清々しいまでにセイを振り回すミカハチの態度に、セイはもう返事をする気も起きなかった。




 夕焼けは濃くなり、空はもうすぐ濃紺から漆黒へと変わる。

 寒空には雲一つ無く、(いびつ)な形の月が地平線から顔を出す。
















「はやくはやくはやく!追いつかれるって!?」

『…』

「ちょっとミカハチ聞いてんの!?」

魔障壁(ましょうへき)を展開します。この動作中は閃紅砲の使用が不可能となります』

「ちょ、何て言ったか聞こえないわよ!?」


 深夜、セイとミカハチは廃都を駆け巡る。

 日の入りと共に、1人と1機はこの廃れた都市部へと到着していた。魔法が存在するこの世界に似つかわしくない高層建築群は、かつてこの地に高度な文明が存在していたことを示していた。

 ここが…かつてアードゥラと呼ばれていた国。今や屍しか住人が居ない、沈黙と凍気に支配された地だ。




「ォォォ…」

「あガ…」

「ウゥゥァー…」

 今ミカハチは、舗装(ほそう)された綺麗な雪道を六本足で駆け抜けている。その後方には大量のゾンビが付きまとっており、走りながら色んなものを投げつけて来ているのだった。


「ひー!ひー!早く何とかしてー!」

 …そんなミカハチの上、小屋の上に固定した椅子にセイが座っている。振り落とされないよう自分も椅子に固定し、迫り来るゾンビにひたすら慄いていた。

 しかし今ミカハチの周りには半球状の透明なバリアが張られており、ゾンビ達の攻撃を全て防いでいる。なのでセイも安全ではあるのだが…うるさいミカハチの足音と襲い来るゾンビの(うめ)き声ですっかり(おび)えてしまっていたのだ。

 セイは魔法の杖を抱き締めながら、ミカハチの頭部をげしげし蹴る。

「ミカハチ!祭壇にはまだ着かないの!?」

『…』

「何とか言いなさいよこのポンコツ!」

 このゾンビ都市に入ってからまともに会話をしてくれなくなったミカハチ。

(あーもう“自分でやれ”って事ね!?)

 セイも腹を決め、魔法の杖を構える。

 ミカハチに教わった通り、蒼焔杖を構える。

 杖の先端を、追い(すが)るゾンビの群れに向ける。

 そして深く呼吸をして、引き金に力を込めた。


 杖の先端から迸った青白い火球は、セイの狙いよりだいぶ手前に落ちる。

 そしてそれは地面に着弾すると、ゾンビ達の眼前で爆発した。




 爆炎に包まれるゾンビの群れ。

 セイは目を輝かせる。

「や、やったわ!」

 しかし次の瞬間、爆炎の向こうから続々とゾンビが現れる。

「グゥゥ…」

「おェぁ…」

 セイの魔法で倒れたのは、どうやら最前列の敵だけのようだ。

 全く好転しないこの状況に、セイはその白い毛並みを逆立てる…。

「ギャーもうダメ敵が多すぎてこんな魔法じゃキリが無いわよ!ミカハチ急いでー!」

 うんともすんとも言わないミカハチに苛立ち、後方ばかり見ていたセイは上体を(ひね)って杖でミカハチを殴ろうとする。


 その時。

 セイはミカハチの進行方向…彼方から襲い来る大軍を見てしまった。


 状況はまさに挟み撃ち。

 セイは蒼焔杖でミカハチ頭部をベコベコ叩く。

「やばいやばいやばーい!どうすんのよポンコツ!?」

 ひたすら喚きたてるセイに、ようやくミカハチが返事をする。


『進路を右方向に変更します』


 ミカハチが急停止する。

 そしてミカハチはその六本足で瞬時に機体の向きを変え…急激に振り回されて白目を()くセイに全く構わず、自身とほぼ同じ幅しかない路地に突入した。











 セイが目を覚ますと、そこは暗い屋内だった。




「は、吐きそう…」

『セイ、おはようございます』

「…ナメてんのあんた…ぐ、おえー…」

 地面が冷たい。

 よろよろと立ち上がったセイは、ひとまず傍らのミカハチに蹴りを入れる。

 先程ミカハチの見せた急旋回及び猛ダッシュのせいで、無遠慮に振り回されたセイは気を失っていたのだ。彼女は吐き気をこらえて、周囲の状況を確かめる。


「ォあ~…」

「ぃぃぃ…」

「ぐゥえ…」


 ゾンビの声。

 近い。

 セイは飛び上がり、反射的にミカハチの小屋に飛び込む。

「もう嫌ー!」

 しかし対照的に、ミカハチは暢気(のんき)だ。

『現状況の危険度は低、敵への警戒は不要です』

「は!?」

『現状況の危険度は低、敵への警戒は不要です』

「…どういう事なの…」

 セイは恐る恐る、ミカハチの小屋の外に出る。




 セイとミカハチが居るここは、真っ暗な細い通路のような所だった。

 どうやらここはどこかの建物の入口で、そこにミカハチが無理矢理突っ込んだようだ。その巨体が入口を丸ごと塞いでしまっており…セイからは見えないが、ゾンビ達はその向こうに(ひし)めいているようだ。

 ほとんど光源の無い暗闇だが、セイの猫目はそんな場所でも全てが見えた。

『祭壇が近くにあるので、神徒は封印を試みてください。方法については接近すれば自ずと分かる筈です』

「え…!?」

 セイを(うなが)すよう、ミカハチが前腕で通路の先を指し示す。

 しかしあまりに急過ぎて、セイはまだ戸惑っている。

「さ、祭壇…意外とすぐ着いたわね。でも本当にあたしにできるのかしら…?」

『神徒の使命は、人々に害をなす祭壇を封じる事です。困難ではありますが貴方ならきっと成し遂げるでしょう』

「まあ、これをやんないと帰れないって言うんだから仕方ないわよね」

『神徒の使命の果てに、この世界に住む全ての人々の平和があるのです。この厳しい世界をより良くするために、当機と共に頑張りましょう』

「…ふーん、まあその祭壇ってのを封印すればあたしは元の世界に帰れるのよね?じゃあ行ってみましょうか」

 セイも内心、ある不安を抱えてはいた。

 しかしとりあえず、彼女は前に進むことを選ぶ。




 暗い通路の先、セイの猫眼には薄明かりが見えている。











 通路の最奥。

 そこに、それはあった。


 壊れた大扉を越えた中に大部屋があり、その中央に赤黒い容器があった。

 その容器はよく見ると赤い液体で満たされており、透明度の低いその中身は伺い知れない。部屋には壁沿いに大量の機械が並んでおり、まだ動いているらしいそれらが暗い部屋に(わず)かな光と音を与えている。

 そして…その設備達から伸びた配線が、赤い容器の前に置かれた操作盤らしきものに接続されている。


「…なにこれ、これが祭壇なの?」

 あまりに想像とかけ離れていた祭壇の姿に、セイは困惑する。

 “祭壇”…宗教的なその名から、セイは目的地が教会のような場所だと勝手に思っていた。異世界の宗教施設に不気味な想像をしていた彼女は、飾り気のない機械ばかりのあまりに無骨なこの空間に唖然とするばかりだった。

(…でも、これを封印するのがあたしの役目で、それを果たせば元の世界に帰ることができるんだ)

 セイは頭の片隅にある不安を振り払い、“祭壇”の操作盤らしきものに歩み寄る。




 あとは全て、何をするべきかが直感的に分かった。


 セイが操作盤に手を翳すと、その液晶画面に光が灯る。

 セイはそれに触れる。

 画面の中で意味不明な文字が大量に流れる。

 そしてそれが収まると、画面中央に四角い表示が出現する。

 セイは操作盤筐体の隅にある赤いボタンを押す。


 たったそれだけだった。

 それだけで操作盤と周囲の機械が休止状態に移行し、部屋の中は静まり返り、多少明るかったその場所は操作盤の僅かな光を残して暗闇へと変わっていった。











『祭壇の封印、お見事でした。当機からも感謝申し上げます』


 セイがミカハチの元に戻ると、建物入口で犇めいていたゾンビ達も皆静まり返っていた。ミカハチがそれらを踏んで行こうとしたのをセイが嫌がり、今は建物内を通って別の出口から帰ろうと移動していた。

 暖かいミカハチの小屋の中、セイは寝床に座っている。

 使命を果たしたというのに、その表情はあまり(かんば)しくない。

「あれで本当に、祭壇は封印されたのよね?」

『はい、その通りです』

「自分自身でも何やったか良く分かって無いんだけど、本当に?」

『はい、その通りです』

「これであのゾンビ達も動かなくなったって訳ね?」

『はい、その通りです』

「…」

 聞くのが怖い。

 でも、確かめない訳にはいかない。

 セイは意を決して、ミカハチに問いかける。


「じゃああたしは神徒としての使命を果たした訳だから、これで元の世界に帰れるって事ね?」


 ミカハチが停車する。

 そして、あまりに冷淡な言葉を返す。


『いいえ、そうではありません』


「…」

 セイも、予想していなかった訳では無い。

 彼女は両手で顔を覆う。

 耳と尻尾が元気無く垂れ下がる。

(最悪…でも、まあ、そうよね。分かっていた事じゃない…)

 落ち込むセイに追い打ちをかけるよう、ミカハチが淡々と続ける。

『祭壇は全部で5つ存在しています。これら全てを封じる事で聖地への扉が開き、貴方はこの世界で得た奇跡の力を持って元の世界に帰ることが出来るのです』

 機械の言葉は、極寒のこの地よりも、冷たい。




 突然、セイはミカハチの小屋を飛び出す。

 暗く狭い通路を、ミカハチから離れるよう全力で走る。

 当ては無かった。

 無駄だともわかっていた。

 でも、そうせずには居られなかった。

 そしてある程度走るとセイの黒い首輪が空中で静止し、その衝撃で彼女は仰向けに倒れ込んだ。


冥府の(・・・)祭壇なんて名前が付いているんだから、祭壇が1個だけの訳無いじゃない…。そしてあたしより前、7人の神徒がこうして護送機と一緒に旅をして、戦って、そして…みんな死んでいったんだ。こんな簡単に使命が終わる筈が無いのよ)

 力なく倒れるセイの眼から、涙があふれる。

(異世界ではあるけど、折角生き返ったのに…何も思い出せない、何も好きにやれない、危険な目に遭わなきゃならない。こんなの、こんなのって…!)

 起き上がろうとしないセイの元に、ミカハチがゆっくり歩み寄る。

 そしてミカハチは両の前腕で、優しくセイを抱き上げる。

『神徒の使命の果てに、この世界に住む全ての人々の平和があるのです。この厳しい世界をより良くするために、当機と共に頑張りましょう』

 もう反抗する元気も無かった。

 セイは黙ったままミカハチの小屋に入り、寝床に倒れ込む。




 そして神徒を乗せた御籠護送機(みかごごそうき)は、真っ暗な通路をゆっくりと歩いて行く。

これを読んでくださった方に感謝を。

セイとミカハチの旅の行く末が良きものであるといいと思ってます。


自分でもよく分からなくなりそうなので、細かく章分けをする予定です。

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