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5.抱えごと

《皆様、おはようございます。二つ目の惑星に着きましたので、操舵室へお越しください》


二度目のコールドスリープから目覚めた私は、アナウンスを無視して一直線に自室へ向かう。

ドアを開けて、さっき伏せて放置したタブレットを視界に捉えた。

裏面には星のロゴマークが付いている。

それを裏返し、電源を着ける。

画面が光る。

ホーム画面が表示され、検索アプリをタップしようとしたそのときだった。

アプリのアイコンが白黒になっていて元気がないみたいだ。

一応タップしてみるが、無反応。

そのとき、もはや恐怖を覚えるポーンという軽快な音が鳴る。


《冬芽様、現在地球からとても離れており、地球のインターネットにアクセスすることができません。皆様が採取をしている間に復旧を試みてみますので、まずは操舵室にお越しください》


私は冷や汗をかきながら、無言でそれに従う。




中央ホールには夏木がいて、バーには酔い姐がいる。

だが今の私にはそんなことどうでもよくて、頭の中であの画面が浮かんでいた。


……愛城大と関係がある?

先生って何者?

どうして私たちを選んだの?


「さっさと行くぞ、冬芽」


夏木に声をかけられてハッと意識を現実に戻す。

酔い姐が「いってらっしゃ〜い」と手を振ってくれる。


「え、酔い姐は?」


「聞いてなかったのか?船内じゃないと顕現できないんだって」


ずいぶんと思考に更けていたみたいだ。

ごめん、と謝りながら私たち二人でエレベーターに乗る。


操舵室に向かう間、夏木がタブレットの件について話し出す。


「タブレットで調べられたか?俺は今使えないって言われた。探索後ならいけるかもって言われたんだが、どうだ?」


私はサジェストの件を伝えた。

夏木は目を細める。


「そうか。しっかし、恋慕大か……」


「知ってるの?」


「いや?そもそも実在するのかどうかもわからない」


夏木は頭を掻く。


「んー、でも出てきたし実在はすると思うけど」


私がそう言ったあたりで部屋が上がりきり、操舵室に着く。

まだ考え足りなかったが、目の前に惑星が映ったディスプレイが出てきたので一度思考を切り替えざるを得なかった。

その惑星は、周りが紫色の気体に覆われており、雲のようだった。


《皆様にはこちらの惑星で、青色に光る鉱石と赤色に光る鉱石を採取していただきます》


その声と同時に、小さなディスプレイが現れてその鉱石を表示する。

青色の鉱石も赤色の鉱石も、クォーツによく似た六角柱状でそれぞれの輝きを放っている。


下から再びロッカーが出現し、そこから宇宙服を取り出す。

下降中なのか時々大きく揺れる。

私も少しだけバランスを崩すがなんとか持ち堪えた。


すると、周りが紫色に覆われて、その直後眩しい光が差してくる。


《下降が完了しました。エアロックを開きます》




懐中電灯のようなライトが放つ光が洞窟内を照らす。

黒い土が続くからかとても窮屈に思えて、照らされた場所が明るいからこそ暗闇が余計に際立つ。

よく照らしながら前に進む。

いや、既に方向感覚は当てにならなくなってしまったが、ナビがルートを示してくれているので進めている。

分かれ道があっても迷うことはない。

驚くほどスムーズである。

それはまるで前に一度来たことがある場所を歩いているかのようだった。


前方から微かな光が漏れている。

嬉々として向かうと、そこはとてもひらけた場所で、数多もの結晶がそこにあった。

左に紅い鉱石。

右に蒼い鉱石。

自ら眩ゆい輝きを放ち、その輝きが乱反射して洞窟全体を明るくする。


思わず息を呑む。

私たちの目にも輝きが写り、目を輝かせて絶景を眺める。

ほおが緩む。


《ここが目的地でございます。ふふっ。素晴らしいものでしょう?》


「……ほんとだね」


「あぁ……」


やはり、自然はうつくしい。

この旅に参加できて良かったと、初めて思った。


《皆様感動しているところだとは思いますが、採取に移りましょう》


その冷静な言葉を聞いて、再び脳を稼働させる。

私は紅い鉱石、夏木が蒼い鉱石を取ることになった。


《先生からの伝言によりますと、“根本の方から手折るようにすれば案外簡単に取れる。いちご狩りのときみたいに。”だそうです》


どういう表現なのか理解に苦しんだ私だが、それの通りに一本の鉱石の根本を掴んでみる。

そして手前に手折ってみた。

するとすぐに結晶がパキパキと音を鳴らす。

石を割るにはあまりにも小さい力で割れた。

特定方向の力には滅法弱いようで、断面の奥側が高く手前が低くなるように斜めに割れた。

見た目に反した割れ方をして私は違和感を覚えた。


……どういう構造なんだろう。


未知の惑星なのだから、未知のものがあるのは当然だと思う。

だがしかし、私が感じたそれは先生も感じたはずであり、だからこそあの謎の伝言を残したのだと推測する。


……先生は何をどこまで知ってるんだ?


そう考えながら割った紅い鉱石を、集気瓶を大きくしたような容器に入れて蓋をする。

両手で抱えて持つ。

夏木の方も同様に、蒼い鉱石が入った容器を抱えていた。

抱えている鉱石が顔を下から照らし、目元が暗くなっている。

夏木も何か考え事をしているようだ。


何故だか安心しない。

景色は素晴らしいのに、危険なことはないのに。

顔は暗く、指先は冷たい。


その不安を消し去ろうとしたのか、AIの声が聞こえてくる。


《戻るまであともう一息ですから、頑張りましょう》


その言葉は心に届かなかったが、帰らなければならないので自然と後ろを向く。

振り返ったそのときだった。

来た道がない。

どこを見ても出口がない。

ライトで来た道があるであろうその場所を照らす。

必死に視線を動かす。

勘違いかと思って目を凝らす。

だがやはりない。


無駄に高くて広い洞窟の一室に私たちの声がただ響く。


「ない……」


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