追跡
滝田茜の事件簿
7.
六本木ヒルズ地下駐車場PM8:55
赤いトヨタ車の中で茜は、自分を空しくして、ひたすら待っていた。
赤いスポーツカーが帰ってきたら、あの女の後を、尾行つける積もりだ。柳沢健太にも気付かれないように。
その日の深夜になって、あの赤いスポーツカーが、ゆっくりと居住者用のスペースに進入してきて、停車した。
茜は、気付かれないように車の陰から、様子を窺う。
最初に現れたのは、健太だった。黒のブルゾンは彼の普段着だと一目で確認できた。
少しやつれたように見える。
バタンとドアが閉まる音がした。健太が、外車の運転席側から女が下りるのを手伝い、開け閉めしてるらしかった。
女は、派手な白いブラウスにミンクのコートを羽織り、サングラスをしていて、表情は読めなかった。
女優の赤塚真理に見えなくもないが……。
女は、エントランスからヒルズのエレベーターホールに向かって歩いていく。その後を健太がついていくのだが、ツアー用のスーツケースを引いていた。
茜は、車から車へと姿勢を低くして尾行ついて行った。
時々、女がトランクを気にするように振り返り、ヒヤッとしたが、とっさに壁の間に隠れた。
どうやらトランクに気を取られ見られなかったみたいだ。よほと大切なものが、入っているらしい。
茜は、思わずこのスリリングな状況に、笑いそうになる。が、慌てて声が聞こえないように、手で隠す。
( 探偵って、こんなに楽しんだ。癖になりそう!)
エレベーターに二人が乗り込むのを確認して、茜は階数表示の数字をじっと見入る。
……37…38…39…40。40階だ!すぐに呼出しボタンを押す。早くきて!エレベーターを待つ間、茜は、ジリジリするような気分を味わうのだった。
(つづく)




