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滝沢茜の事件簿  作者: 安西邦彦
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3/15

赤いスポーツカー

滝田茜の事件簿

3.

PM 2:15 赤坂

茜と同じ大学でサークルの友人が、確か彼の知り合いだったことを思い出した茜。

電話で頼み込み、彼の所属するボクシングジムのトレーナーに会う段取りをつけてもらったのだった。

彼は、ボクサーなのである。

普通なら、腕力で彼に戦い勝てるはずがない。重量級のハードパンチャーなのだと聞いていた。

その彼が未だに消息不明なのだ。よっぽどのことに違いない。

いてもたってもいられない。心配なのだ。自制しなければ、次々と悪い想像をしてしまう。動いているから、まだ希望がある。

きっと仕事をしていても落ち着かなかったはずである。その意味で所長には、いくら感謝してもし足りないと彼女は思った。

待ち合わせには、まだ余裕がある。3時に六本木交差点で待ち合わせになっていた。

喫茶店で少し待つことにしたのである。

ビルの2階に上がると、通りが見える座席に座る。

ウェイトレスの女性にカフェ・オ・レを頼むと、通りの人の流れが見えた。

首都高の橋桁の下には、車が行き交い都心部の喧噪がガラスごしに聞こえてくる。


3時に5分前。通りにおりた彼女の目に、それは飛び込んできた。

真っ赤なスポーツカーが、赤信号で停車している。

その後部には、紛れもない彼がいたのだ!

停車した一瞬、横顔が見えたのである。

柳沢健太!

彼女は、心で叫んだ。と思ったが、回りの通行人たちが、何だという顔をしてるのを見て、声をあげて思いきり彼の名を叫んでいたのだと、解った。

信号が替わり、瞬く間に赤いスポーツカーは、西麻布の方に走り去り、見えなくなってしまう。

どれくらい呆然と佇んでいたのか。

しきりに咳払いする精悍な中年男性が、「滝沢茜さん?」と言う声に待合せの人物ーーボクシングジムのトレーナーだと分かったのである。

(つづく)


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