赤いスポーツカー
滝田茜の事件簿
3.
PM 2:15 赤坂
茜と同じ大学でサークルの友人が、確か彼の知り合いだったことを思い出した茜。
電話で頼み込み、彼の所属するボクシングジムのトレーナーに会う段取りをつけてもらったのだった。
彼は、ボクサーなのである。
普通なら、腕力で彼に戦い勝てるはずがない。重量級のハードパンチャーなのだと聞いていた。
その彼が未だに消息不明なのだ。よっぽどのことに違いない。
いてもたってもいられない。心配なのだ。自制しなければ、次々と悪い想像をしてしまう。動いているから、まだ希望がある。
きっと仕事をしていても落ち着かなかったはずである。その意味で所長には、いくら感謝してもし足りないと彼女は思った。
待ち合わせには、まだ余裕がある。3時に六本木交差点で待ち合わせになっていた。
喫茶店で少し待つことにしたのである。
ビルの2階に上がると、通りが見える座席に座る。
ウェイトレスの女性にカフェ・オ・レを頼むと、通りの人の流れが見えた。
首都高の橋桁の下には、車が行き交い都心部の喧噪がガラスごしに聞こえてくる。
3時に5分前。通りにおりた彼女の目に、それは飛び込んできた。
真っ赤なスポーツカーが、赤信号で停車している。
その後部には、紛れもない彼がいたのだ!
停車した一瞬、横顔が見えたのである。
柳沢健太!
彼女は、心で叫んだ。と思ったが、回りの通行人たちが、何だという顔をしてるのを見て、声をあげて思いきり彼の名を叫んでいたのだと、解った。
信号が替わり、瞬く間に赤いスポーツカーは、西麻布の方に走り去り、見えなくなってしまう。
どれくらい呆然と佇んでいたのか。
しきりに咳払いする精悍な中年男性が、「滝沢茜さん?」と言う声に待合せの人物ーーボクシングジムのトレーナーだと分かったのである。
(つづく)




