捜し屋
滝田茜の事件簿
11.
AM 12:00 新宿区歌舞伎町
朝の映画館では、ディズニーのファンタジックな映画が上映されている。そのロマンチックな映像が話題になっているが、ちょうど朝一番の上映が終わり、三々五々と客たちが引き上げていく。
暗くなっていた上映フロアにも明りが灯り残っているのは、最後尾の列の隅にいる一人の男だけ。どうやら昨夜の深酒が祟って、眠りに落ちたらしい。時折、イビキをかいている。ぼうぼうに髭が伸びて、カーキ色のジャンパーに、涎よだれがかかっている。
掃除にきたスタッフも声を懸けたものかどうか逡巡してると、男のジャンパーのポケットで、携帯電話特有ののバイブが唸り始めた。
すると、男はもぞもぞという動きで、携帯電話ーーガラケーであるーーに出たのである。
「おぅ……ふんふん……あー……分かった!」最初は、半分寝ていたが最後には居住いを正し、眼をカッと見開いて、言うと携帯を切ったのである。
その声のあまりのデカさに、スタッフとアナウンスに来てる女性も、驚いている。
男は、伊沢圭介と言った。新宿区で主に、行方知れずになっている人物を探す仕事をしている。場合によっては、危険を省みず救出も行うプロなのである。茫洋とした外見からは予想も附かない働きをする。
おもむろに彼は、朝の新宿の街に出ていったのである。
(つづく)




