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滝沢茜の事件簿  作者: 安西邦彦
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10/15

捜し屋

滝田茜の事件簿

10.

3日目AM8:45

渋谷

「フムフム」

茜が昨夜までの経過を、所長に報告していると、ソファにゆったりと座った彼の父親が率然として唸った。

第一線からは退いたとは言え、叩き上げの元刑事である。警視庁では、落としの福屋と言われていたらしい。悪い奴にはトコトン食らいつき離さないドーベルマンのようだったらしい……。それが、ある事件で、同僚が不運にも殉職してーーさながら昭和の熱血刑事ドラマさながらにーー、父君は、潔く辞表を出した。その後に開いたのが、この探偵事務所なのである。

今は、見る影もないが、ーー失礼!これは失言。人間中身ですからーー温和な表情からは、まるでマンションのオーナーかという印象さえ受けるのであった。

しかし、茜の話が大事なところに来ると、悠揚迫らぬ中にも、キラリと一瞬目が輝くのだ。

「……という訳で、今晩あの女優が、会うという人物を確かめたいのですが……」最後は、伺うような目付を意図して茜は、言った。

所長は、しばらく沈黙していた。

頭脳明晰な所長には、ことの経過を組み立てて、それを解決へと再構築することができるのだ。それは、過去の難事件でも常に発揮されたのである。

そして、言った。

「分かりました。どうやら、今回のケースは我々が遭遇する最大の事件になりそうです。新宿に、この調査にうってつけの人物がいます。夕方までに、彼に来てもらうよう手配します。茜さんは、それまでここで待機していて下さい。」と言った。

まるで、今夜の献立の手配をするように。

(つづく)



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