ベタな一步
一先ず問題なのは、今の状態で命界に降りたらいろいろと面倒くさいということだ。
神が命界に降りるというのはよっぽどのことがないと禁止されているが、まぁ例外もある。取り敢えず、生命神に会いに行こう。
「というわけで、人間の体をくれるか?」
「バカなんですか?」
「バカではない、迷子だ。というか、決めてから二年たった。すべての道を通れば迷子じゃなくなるが、道に迷うことはするからな」
「だいたい、あなた仕事はどうしたんですか」
「仕事って、転生神に任せればいいだろう。基本的に彼奴と同じ仕事だし」
転生神は世界を超えた生命移動を主とする仕事をしている。まぁ簡単に言えば、天命を上手く全うできなかった人間を帳尻を合わせるための仕事だ。
対して僕の仕事は、神隠し。異世界転生ではなく、異世界転移である。それでなくとも、森を歩かせて海を超えたり、まぁ迷子の神様らしいことをしている。
「まぁ、いいですけど、全神は許可出したんですか?」
「前にあった時に許可はもらっているぞ」
「なら、私にも飛び火はしないわね。ちょっと待ってなさい」
生命神に作ってもらった。人の身体。子どもっぽいのは、もともとの身体が小さいのと、生命神の趣味だろう。こいつはショタコンなのだ。
「じゃぁ、行ってくる。例は酒でな」
「ええ、首を長くして待ってるわ」
命界用の肉体をもらうことで、神の力を制限して、命界に影響を与えずに降りることができる。人間に神降ろしができるのは、似たような理由だ。
人の身体に降りるため、能力も小さくなる。まぁ人間の極致くらいの能力にはなるがな。
確か、魔の法がある成果だったな。
「神隠し・異界」
神界とは違う空気。成功だ。
座標は適当だから、海や火山に降りる可能性もあったが、何とかなった。
「それでは、記念すべき一歩と行きますか」
当てもなく、目的もなく、終わりなく、歩いていく。散歩の醍醐味だ。
降りた場所は、踏み慣らされた道がしっかりとした、雑木林だった。この道も、人間が苦労して開拓していったものだと思うと感慨深い。
障害物は基本的に避けて進む。それを、切り拓いて、新たな道を作るのも人のなす技だ。
「キャァァァ!!!」
……ベタだねぇ、ベタすぎる。ベタベタだ。
魔の法ではなく、科学が発展した命界では、こういった異界への転移や転生の物語が多くあった。そして、基本的にそういう物語は相場が決まっている。
高貴な家の者が、賊に襲われると言うものだ。もちろん普通に獣とかもある。
「散歩の邪魔だな……」
格式高い家の出なら護衛をしっかりと付けておくのが筋だと言うのに。展開に面白みがあるというのは、素晴らしいことだが。
「ガキが、一人で何してるんだ?」
「……」
「坊主、見なかったことにしてどっか行きな、」
「優しいなぁお前、金くらい取ってけよ」
「それじゃ可哀想だろ」
ギャァギャァと神の神経を逆撫でする。まったくもって、度し難い。
「なぁ、」
「ん?どうしたんでちゅか?」
「とある国にはこんな格言があってな……触らぬ神に祟りなし。お前らは一生、道にも生にも彷徨っていろ」
「はぁ?」
賊の一人が、一歩踏み出すとするりと滑る。
迷子の神の前で、まっすぐ進めるわけがなかろうに……死者数名。馬車に二人、外に三人……少し迷惑にはならんか、まぁ、どこに行くか分からんが、迷子の神故、適当は許してもらおうか。
「神隠し・世界」
まったく。最初から散歩としては失敗したな。まぁ、今の僕にそんな、メガメートルの距離を飛ぶことはできないけど。
「さて、大丈夫?助けたかわりに聞きたいんだけど、ここどこだか分かる?」
ベタな散歩が始まった。




