二歩目、歩いてなんぼです
神隠し・世界。
世界をまたがずに、世界の中で移動する神技、ちなみに、場所の指定はできない。当たり前だ。位置関係が分かるような移動は、迷子にはならない。もともと、迷子神として、小さな神隠しを起こすための技だ。
移動した場所は平原の道だった。やはりどんな迷い方をしても起点は道なのだ。
……起きんな。
「……あれ?大丈夫です?」
「坊主、何したんだ?急に周りの景色が変わったんだが」
あ、困惑して声が出ていないだけだった。
「そうだね、簡単に言えば道先がわからなくなったんだよ。自分の居場所がわかる場所ではなく、わからない場所に飛んでみた。ちょっと荒業だけどね、誤差はキロメートル内だから、1,000〜99,999メートルの間、さっきいた場所を中心に、最大、9,999メートル移動したと思えばいいんじゃないかな?」
「何を言って……幻術だと言われたほうがマシだ……」
「え〜助けてあげたのにそれはないでしょ」
ぶちぶちと煩い人だな。鎧を着た大人。声質的に初老手前かな?フラフラとまだ安定していない立ち姿だけど、こっちに対して警戒は緩めない。
こんな人がいてなんで、襲撃を受けていたんだろうねぇ。舞台神がなにかいじりでもしたか?
舞台神、まぁ主に歴史の転換期を作ることをする神だ。フィクションなどでは、デウス・エクス・マキナとか機械仕掛けの神とか言われてる。ご都合主義が大好きな神だ。
しかし、事前に調べてから来るんだったな。家紋はあるが、それがどの位を指し示すのかわからない。
「そうですよ、アルスシェイド」
「しかし……」
「助けられたのはこちら側ですから、感謝はすれど、敵意を向けるなどあってはなりません」
「はい…」
馬車から降りてきたのは豪華な服を着た姫さんだった。
話がわかる姫さんだことで、隊長みたいな人はアルスシェイドというのか。うん、覚えた。
「ありがとうございます?でいいんですかね、ところで、家紋に見覚えがないのですが……」
失礼にあたるかもしれんが、まぁ恩に着せるという形でこの場の無礼は許してもらおう。僕が読んできた物語では、少なからずの粗相は許してもらっていた。というより、たった一度救われただけで、信用する姫様に心配するほどだ。
「ケレスティア・フォン・フォリオーネです。この度は助けていただきありがとうございました」
「いえ、成り行きでしたので。それに、侮辱されれば相応に返す、ただの私怨です。子供と言われるのは我慢なりませんから」
「子供?見たところ、背丈は私より低いようですが?」
生命神に作ってもらったのは、十二歳程度の身体。まぁ、子供だな。それでも、中身は相応に生きた神だし。人間からすればおじいちゃんだし、って、そこはどうでもいい。相手方のケレスティアとやらも、それが少し成長したような背丈だ。
言動がしっかりしているのは、まぁ、教養がしっかりしているというやつだろう。
「見た目で人は判断できませんよ、それに、助けたのは先ほどの一度きり……ここから一番近い街はどこですか?」
「……お嬢様、ここからは私が」
「わかったわ、アルスシェイド」
「場所を固定できない転移と言ったな、最悪の場合あまり移動していないこともあるわけだな?」
「そうですね、逆に貴方方が進む方向に対して反対に飛んだ可能性もあるわけです」
「すぐ近くかは分からないが、進むべき方向は変わらない。ついてくれば、フォリオーネ家からの礼も出るだろう」
「では、ついていきましょうか、」
ベタベタですね、というか。大人っぽい子供で、礼儀をちゃんと守るようなしゃべり方ってかなり難しいな。普通に素でしゃべりたいんだけど、首はまだくっついてたいからね。この身体は人より少しばかり頑丈なだけで、そんな首と身体が離れたり、真っ二つになれば死ぬ。そうすれば神界に強制送還だ。それだけは避けたい。
「無事な馬が一頭余っている。乗れるか?」
「乗れませんね、馬は専門外です。それに、旅は歩いてなんぼですから」
行き先はというか、方角は決まった。ようやっと、旅が始まる。最初に無差別転移をしたのは邪道だったな。
「本当にいいのか?」
「はい、」
「……名前は?」
「道踏です」
自己紹介もほどほどに、歩いて歩いて歩いていく。馬のペースでも、なんなくついていく。これくらいはしないとね、散歩の神の名が廃るってもんよ。
ちなみに、馬車のなかに二人いたのだが、姫さんじゃなく馭者だった。
「本当にいいのか?」
「大丈夫です」
ペースを変えずに付いていくので心配されるが、普通に問題ない。悪路になれば別だが踏み慣らされた道ならば、疲れもほとんどない。
「そう言えば、隊長さん以外の名前を聞いてないですけど……」
「ん、ああ、そう言えばそうだったな」
「副隊長のオルトだ。よろしくね」
「騎士、ハルヴァイン。他にもいたんだけどね。よろしく」
「はい、よろしくお願いします!」
口調が変わるのは一応子供としての姿で世渡りができるようにだ。流石に見目十歳くらいの少年が人を馬鹿にしたり、上から目線なのは異質だろう。
礼儀が良くても異質かもしれない。
「馭者の方は?」
「カイゼルと言う、非戦闘だからな。今回の襲撃は衝撃が強かったんだろう」
「そうなんですね」
「見えてきたぞ、目指してた街だ」
「運がいい飛び方をしたんですね、よかったです」
適当に跳ぶ技だったけど。目的に対して遠のくのではなく、近づくというスキップをした形だった。
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