第7章 崩壊の始まり
◆ SolidWorks業務ルール会議 ― 崩壊の序章
その日は、派遣社員も交えて
SolidWorksの業務ルールを決める会議 が開かれた。
本来なら、以下の項目は
加藤が実際に運用してきた“実績”をもとに決めるべきだった。
•保存先
•ファイル名ルール
•データ管理方法
•共有方法
しかし――
(……なんか嫌な予感がする)
加藤は、会議室に漂う空気を敏感に感じ取っていた。
◆ 鷲世さちよの差し金で「加藤の実績」が奪われる
会議が進むにつれ、加藤の嫌な予感は的中した。
加藤が作り上げたSolidWorks運用ルールが、
管理者制限によって“使いづらい形”に改悪されていく。
壊れたデータが登録されても処理できる人材がいないため、
“素人でも扱えるように”という名目で、
合理性が削られていく。
保存先も、ファイル名も、
加藤が積み上げてきた合理的な方法は
横取りされた形 になった。
(……鷲世の差し金だな)
加藤はすぐに察した。
鷲世は、裏で課長と小峰を操り、
加藤の成果を潰し、 自分たちの手柄に見せかけようとしていた。
“SolidWorks業務ルール会議”は、
加藤の実績を奪うための儀式だった。
胸の奥に、歯がゆさが刺さった。
◆ SolidWorksデータ管理者:飯野課長
◆ 実務担当:小峰清子(PCスキル極端に低い)
会議の終盤、課長が言った。
「SolidWorksのデータ管理者は……私がやります。
実務は小峰さん、お願いします」
(は?)
加藤は思わず固まった。
•課長 → SolidWorksを一度も見たことがない
•小峰 → PCスキルが極端に低い
•鷲世 → 仕事はしないが裏で2人を操る
どう見ても破綻している。
(……この会社、正気か?)
◆ I DEAXの地獄データ ― 誰も理解していない
さらに会議では、
旧システム I DEAX のデータが話題に上がった。
加藤は説明した。
「I DEAXのデータは非常に危険です。
図面と3Dの大きさが一致していません。
同じモデルが複数存在し、向きもバラバラです。
一つはX方向、もう一つはY方向……
このままではデータの衝突事故が起きます」
しかし――誰も理解しなかった。
課長は頷いているふりをし、
小峰はメモを取るふりをし、
鷲世は腕を組んで黙っている。
(……話を聞く気がない)
そして会議は、 最悪の結論のまま進んでしまった。
◆ この決定が“業務効率の大幅低下”を招く
加藤には分かっていた。
(このルール……後で絶対に大問題になる)
しかし、管理職は見て見ぬふり。
•加藤の実績は奪われ
•使いづらいルールが導入され
•データ管理は素人が担当し
•旧データの危険性は無視される
会社は、 自分たちで自分たちの首を絞めるルールを作った。
首が徐々に絞まることに、誰も気づいていない。
◆ 加藤は“衝突事故”を予見し、先回りしていた
SolidWorksのルール会議が終わったあとも、
加藤は黙ってはいなかった。
(……このままじゃ、絶対にデータ衝突が起きる)
I DEAXの地獄データを見てきた加藤には、
未来が手に取るように分かっていた。
だから加藤は、誰にも言わず、
1000個近い3Dデータを先回りして準備していた。
•色分け
•一目で判別できる形状
•上書きされたらすぐに分かる仕組み
•誰が見ても間違えない構成
•間違えてもすぐに修正できる仕組み
“小峰でも扱えるように” 徹底的に工夫していた。
(これなら……小峰さんでも迷わないはずだ)
加藤は本気でそう思っていた。
◆ しかし、小峰は最後まで理解できなかった
だが現実は違った。
小峰は、加藤の説明を聞いても理解できない。
•3Dの向き
•データの整合性
•衝突の危険性
•色分けの意味
どれも頭に入らない。
(……どうして伝わらないんだ)
◆ ショートカットも拒否される
作業効率を上げるため、
加藤は小峰専用のショートカットを作ってあげた。
「これを使えば、作業が楽になりますよ」
しかし小峰は言った。
「そのやり方は習っていないから使いません」
(……ショートカットくらい理解してくれ)
加藤は頭を抱えた。
◆ 鷲世の“洗脳”がすべてを壊す
裏で鷲世がこう言っていた。
「加藤の言うことなんて聞かなくていいのよ」
その一言で、小峰の思考は完全に止まった。
•加藤の説明は聞かない
•加藤の工夫は使わない
•加藤の助けは拒否する
しかし―― 3Dデータが壊れた時だけ加藤が修正する。
(……加藤は貴女を相当助けています。
貴女は相当助けられています)
加藤は、静かに葛藤した。




