第32章 疑惑が確信へ ——静かに閉じられた扉の正体
◆ 契約解除という言葉
派遣元との面談。 支店長と貞富が向かい合って座るその空気は、
まるで“処分を言い渡す場”のように重かった。
そして——
「……契約解除になります」
貞富の口からその言葉が出た瞬間、 加藤の胸の奥で、
何かが静かに カチリ と音を立てた。
(……やっぱり来たか)
怒りではない。 驚きでもない。
ただ、 予想していた未来が、現実として目の前に置かれた
そんな感覚だった。
◆ 加藤、静かに“カマをかける”
表情には出さない。 加藤はあくまで冷静に、淡々と口を開いた。
「貞富さん。 この間、面接に来てましたよね。
熱交換課の部長に会ってましたよね」
その瞬間—— 貞富の目が、ほんの一瞬だけ揺れた。
その揺れは、加藤には十分すぎる反応だった。
(……図星だな)
貞富は慌てて視線をそらし、
支店長は表情を固めたまま動かない。
加藤はさらに静かに続けた。
「私を契約解除して、別の人を入れるための面接だったんですよね」
貞富の喉が、ごくりと鳴った。
支店長は沈黙。 だが、その沈黙こそが答えだった。
(やっぱり……裏で全部決まってたんだ)
◆ 疑惑が“確信”へ変わる瞬間
加藤の中で、 これまで“疑い”だったものが、
ゆっくりと、しかし確実に 確信 へと変わっていく。
胸の奥が冷たくなる。 だが、不思議と怒りは湧かなかった。
(そうか…… 最初から俺を続けさせる気なんてなかったんだ)
貞富は震える声で言った。
「……その話は決定事項です。 変わりません」
その言葉を聞いた瞬間、 加藤の中で最後のピースがはまった。
(決定事項。 つまり“誰か”が裏で動いて、
俺を切るために…… “誰か”を入れたのか 全部、つながった)
疑惑は完全に確信へと変わった。
◆ 加藤は静かに席を立つ
怒鳴りもしない。 責めもしない。
ただ静かに、 椅子から立ち上がった。
(……言いたい事は明日言えだったな)
その決意は、 静かだが、揺るぎなかった。




