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第26章 希望の扉と、閉ざされた扉 —— 正社員面談の真実

◆ CEOメールの翌日 —— 人事が“異例の速度”で動いた

翌日。 加藤のメールボックスに、

人事部からの連絡が届いた。――早い。

社内メールで正式に送ったとはいえ、

CEO宛てのメールが翌日に動くとは思っていなかった。


「さすがに、相手がCEOだと対応が違うな……」

加藤は静かにそう呟いた。

打ち合わせの相手は、

•荒木 ゆうすけ課長(人事)

•社員の穴原(女性)


三人で会議室に入り、

加藤はこれまでの経緯を淡々と説明した。


冷却技術開発部署の実態。

SolidWorks導入の経緯。

正社員が仕事をしない構造。

派遣に責任を押しつける体質。

7機種を一人で立ち上げた事実。


すべてを話し終えたとき、

荒木課長は深く頷き、静かに言った。

「……会社側が悪いですね。  

加藤さんに対して、正しい扱いができていませんでした」


そして、続けた。

「正社員になる意思はありますか?」

加藤は一瞬、言葉を失った。

予想していなかった言葉だった。

「……が、頑張ります」

声は震えていたが、 心の中はウキウキしていた。


荒木課長は微笑み、言った。

「では次回、部長との面談を設定します。  

そこで最終判断をしていただきましょう」

加藤の胸に、久しぶりに希望が灯った。


◆ 正社員面談 —— しかし、そこに待っていたのは“壁”だった

面談当日。 会議室には、

•河田 いちろう部長

•荒木 ゆうすけ課長

が座っていた。


加藤は深呼吸し、席についた。

――今日は前向きな話ができる。 そう信じていた。

しかし、面談が始まって数分で、

その期待は粉々に砕かれる。


河田部長は、開口一番こう言った。

「SolidWorksを立ち上げる?  

そんなこと、派遣のあなたに出来るわけがないだろう」


加藤は耳を疑った。

(……は?)

8年間、7機種を立ち上げた本人に向かって、

“出来るわけがない”と言い放つ。


明らかに、事前に誰かと話を合わせている口ぶりだった。

――島村部長だな。

冷却技術開発部署の現状を知られたくない者同士が、

裏で話をすり合わせたのだ。


河田部長は続けた。

「正社員にする理由が見当たらない。  

やらない理由はいくらでもある。  

今回は見送らせてもらう」


荒木課長が何か言おうとしたが、 河田部長が手で制した。

加藤は、ただ静かに聞いていた。

怒りでも、悲しみでもない。


――呆れだった。

そして理解した。

(俺がいた頃とは違い、  

冷却技術開発部署は“CADを重視しない部署”になったのか)


(図面の寸法を変えるだけの、  

あの原始的な作業に戻ったということか)

(だから、SolidWorksを立ち上げた俺の実績が邪魔なんだ)


加藤は静かに悟った。

正社員にできないのではない。

正社員に“したくない”のだ。

部署の無能を隠すために。


◆ 面談後 —— 加藤の胸に残ったもの

会議室を出た瞬間、 加藤は深く息を吐いた。

期待していた未来は閉ざされた。

しかし、心は折れていなかった。


(……俺は、まだ終わっていない)

(この会社は、俺の実力を必要とする日が必ず来る)

(その時、正社員として呼ばれるかどうかは……  

あいつらの都合じゃなく、俺の選択だ)


加藤は静かに歩き出した。

その背中は、 面談で否定された人間のものではなく、

――次の戦いへ向かう者の背中だった。

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