第18章 父・堅三との決着
◆ 電話 —— 過去が突然、呼び出してくる
ある日、電話が鳴った。
受話器を取ると、父・堅三だった。
「元……会えないか? 相談だ」
加藤は会うことにした。
若いころ、空手とボクシングジムに通っていた。
いつかこの日が来ると予測していた。
堅三は加藤建設の元No.2。
会社が繁盛していた時代、
社長引退後にNo.1になったが——
•遅刻
•無断欠勤
•威張り散らし
•最後は職員全員に追い出される
その後は、今でいう“引きこもり”。
母は仕事をしない父を追い出した。
そのときの言葉を、加藤は覚えている。
「必ず大物になってやる。
金を沢山、山のように持ってくるから!!」
誰も何も期待していなかった。
◆ 家の前での対峙
呼び鈴が鳴り、出てみると堅三だった。
「土地勘があり、この辺は詳しい」と言っていた。
加藤は静かに身構えた。
(どこかで偶然顔を見かけたら、
格闘人生の全てを叩き込んでやろうと思っていた相手だからだ!)
しかし、あのころの迫力はすっかり無くなっていた。
「元〜、頼もしくなったな(笑) やり直したいんだ」
笑顔で言ってきたが、
詫びる言葉は一つもなかった。
加藤は言った。
「先ずはごめんなさいだろ。
自分が悪かったと!」
堅三は家に入ろうとした。
加藤は一歩前に出た。
「家に入ることは許さん。
金を山のように持ってくる約束だったよな……
何も話すことはないぞ、 帰ってくれ!
二度とこの場所には来るなよ!」
堅三は大人しく引き下がった。
最後に、母の写真を欲しいと言ったが
—— 加藤は静かに告げた。
「そもそも貴方とは家族ではないだろうよ!!」
拳を握り締め、無言の圧力をかけると、
堅三は背を向けて帰っていった。
◆ 人間の末路
デイサービスの老人も、父・堅三も。
会社の中で高い地位にいたのなら、
周囲の人を導いてあげればよかっただろう。
引退して時が経っても、
感謝される存在になれただろうよ。
「時々思い出してもらえる人」になれただろうよ。
しかし—— この会社の部長たちも気づかないまま、
人生が終わるのだろう。
加藤は静かに、しかし深くそう思った。




