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第4話:闇に先立つ沈黙

ユクセイは目を開けた。鼻を突く匂いに促されて体を起こし、周囲を見回す前に瞼をこすった。


天井には青い瓦が見え、洗練された装飾が施されているものの、部屋の残りの部分は質素でシンプルに保たれていた。


不必要な贅沢品はなく、彫刻が施された木製の椅子が一脚と、野生の花が活けられた白い陶器の花瓶が一つあるだけで、その花が空気を満たしていた。


窓のカーテンが微風に揺れ、それまで心地よかった沈黙を破った。


部屋の隅にある小さなテーブルの上には、彼のパーカーが丁寧に折りたたまれて置かれていた。ユクセイは左目に手のひらを当て、記憶を再構築しようと強く覆ったが、それらは断片化していた。

その時、手を下ろすと沈黙が破られた。部屋の外から、くぐもった話し声が彼の耳に届いた。

両開きの扉が大きく開き、黄金の光が差し込んできた。


「おや、もう目が覚めたようだね」足早に入ってきながら、彼は言った。「気分はどうだい?」


「少しはマシになった……と思う」


「素晴らしい。死の淵にいたというのに動けるなんて驚きだ。まあ、君はそのことを何も覚えていないのだろうけどね?」


ユクセイは困惑して彼を見つめた。

「何のことを言っているのか分かりません」


「何? 戦場で自分が何をしたか覚えていないのか?」ラピスは好奇心に満ちた目で彼を観察したが、ユクセイはただ首を振るだけだった。「なるほど……自己紹介をしよう。私はラピス。ラピス・アーサーだ」


「俺は……ユクセイ」


「よし、ユクセイ。私についてきなさい、君に見せたいものがある」


ユクセイはゆっくりとベッドから降りた。脚が少し震えていたが、なんとかラピスに続いて廊下を進んだ。進むにつれて、過去の戦いの遺物である輝かしい鎧が隅々に配置されているのが目に入った。


本堂の敷居をまたぐと、オーク材の家具に座っている二人の姿が見えた。


近づくと、彼の視線は鋭い目つきをした女性と直接交錯した。


「何を見てるのよ?」彼女は冷ややかなトーンで尋ねた。


「落ち着きなさい、カサンドラ。少年に構うのはよしなさい、ただ珍しくて見ているだけだ」


「珍しがっているのとは正反対よ、ラピス。まるで幽霊でも見ているような顔をしてるわ」彼女は言い返した。


ラピスは小さな笑い声を漏らし、ユクセイを見た。

「耳と尻尾がある者を見るのは驚きかい? 彼女が何という種族か分かるかい?」


ユクセイは沈黙を守り、視線を外すことができなかった。


「分からない、ということにしておこう。彼女は獣人(亜人)のカサンドラだ。そして、隣に座っている男はティック。少し風変わりだが、すぐに慣れるさ」


「ラピス、この男を私たちと一緒に置くつもり?」カサンドラは眉をひそめて尋ねた。「本気だなんて言わないでよ」


「ああ。それが君にとって問題になるとは思えないがね。それに、誰かを訓練したかったのだろう? 彼が君の後継者になるかもしれない」


「だからって、ここから追い出せない理由にはならないわ! あんた、この男の正体すら分かってないじゃない。どこから現れたかも知らないのよ」


彼女は腕を組んで叫んだ。

「カサンドラ、少しは流れに身を任せろと何度言えば分かるんだい? 本を表紙だけで判断してはいけないよ」


ラピスはエレガントに脚を組み、謎めいた微笑みを浮かべながら答えた。


突然、ラピスが手を二回叩いた。その音が広間に響き渡り、再び扉が開いた。二人の獣人の使用人が、湯気の立つ料理と飲み物が載った銀のトレイを運んできた。


ユクセイは、自分に注がれる視線の重さを感じながら、ゆっくりと席に着いた。トレイの上の料理の香りはそそるものだったが、彼の意識は別のところにあった。


「俺がここにいてもいいのか?」ユクセイは小さな声でラピスを見つめて尋ねた。「自分がどこから来たのかさえ思い出せないのに」


「それについては問題ないさ」ラピスは手を軽く振って大したことではないように答えた。「カサンドラが、君が一人で生きていけるように必要なことすべてを教えてくれる」


「はぁ!? でも……なんで私が、行く気もないことに巻き込まれなきゃいけないのよ? 私は子守役じゃないわよ、ラピス」


カサンドラはリラックスした姿勢を崩して口を挟んだ。


「君が適任なのだ。君は私の知る中で最高の剣士だ。この王国の守護者たちを除けば、誰かをゼロから形作ることができる完璧な存在は君しかいない」


「……『王国』と言いましたか?」ユクセイはその言葉を捉えて尋ねた。


ラピスは頷き、テーブルに肘をついた。


「そうだ、少年。君はエーテルガルド王国にいる。あるいは、もっと分かりやすく言えば、獣人たちの聖なる領地だ」


ユクセイは言葉を失い、カサンドラの耳、そして部屋の細部を見つめながら情報を処理した。すべてが現実であったが、まるで遠い夢のように感じられた。


「見てよ、完全に呆気にとられてるわ」カサンドラは唇に微かで皮肉な笑みを浮かべて言った。「ねえ、頭を強く打ちすぎたんじゃないの? 本当はどこから来たのか言いなさいよ。偶然空から落ちてくる奴なんていないわ」


「そう彼女を責めないでくれ。私たちは『堕ちた者』が何を意味するかをよく知っている」


「なら、この男はどうなるのよ。見つかったら私たちが危険にさらされるわ」


「さあね、考えさせてくれ……おや、待ちたまえ。君はいつの間に彼をそんなに心配するようになったんだい?」


「え、む……。そ、そういうわけじゃないわよ、ただみんなのために言ってるだけよ」


カサンドラは恥ずかしそうに耳を伏せ、ラピスに頬の微かな赤らみを見られないように視線を皿へとそらした。沈黙が数秒間続き、磁器に対するカトラリーの音だけが響いた。


「カサンドラ、ユクセイを連れて王国を散歩してきなさい。すべての場所を見せて、一番外側まで行き、そこで戦闘の基本を少し教えてから戻ってきなさい」


「あ、ええ」


「見ての通り、ユクセイはあまり喋らない。ただ、彼を怒らせないようにしてくれ。彼からは何か妙なものを感じるんだ」


カサンドラは急に立ち上がり、動揺を隠すようにベルトの短剣の柄を調整した。


「命令なら従うわ。でも、もしトラブルを起こしたら、容赦なく力を使うからね」


彼女はユクセイと目を合わせるのを避けながら呟いた。ラピスは静かに笑い、椅子に背を預けながら二人が出発の準備をするのを見守った。


「この世界にはどうしても噛み合わないエネルギーを感じるね」


ユクセイはラピスの手元を黙って見つめていたが、カサンドラの隣に座っていたティックが一瞬身を硬くするほどの落ち着き払った動作で立ち上がった。


「何をぼうっとしてるの? 王国は勝手に見えてくるわけじゃないわよ」


カサンドラは歯を食いしばった。少年の大胆さに驚き、そのトーンにはどこか鋭いものがあった。


「歩きなさい、そして黙ってて、余所者」彼女は不機嫌に呟き、彼を敷居へと軽く押し出した。「壁の外に出たら、その口調を後悔させてあげるわ」


ラピスは彼らが去るのを見送ったが、その微笑みは徐々に消えていった。扉が閉まるとすぐに、ティックが初めて、まるで墓の底から響くような声で口を開いた。


「ラピス……彼の影が、体よりも先に動いた。カサンドラがあの少年の中に住む『何か』を御せると、本当に確信しているのか?」


「ああ、ただ結果を待つだけさ」


ティックは唾を飲み込んだ。カサンドラに最善の結果が訪れることを願いながら。



屋敷の敷居をまたいだ瞬間、都市の喧騒がユクセイを襲った。エーテルガルドはガラスの城の王国ではなく、山の峰々へとそびえ立つ、石と古い木材で彫られた大都市だった。空気は鍛えられた鉄と、なめされた皮の匂いがした。


ユクセイは両手をポケットに入れ、見るものすべての効率性を評価するかのような視線で細部を観察しながら歩いた。カサンドラは一歩先を進み、余所者を見ようと足を止める獣人の群衆をかき分けて道を切り開いた。


「離れないで。私の種族はここで人間を見慣れていないの。ある者にとっては珍品、ある者にとってはただの邪魔者よ」


カサンドラは振り返らずに言った。

彼らは「爪の市場」を通り過ぎた。そこでは、猫や犬の特微を持つ商人たちが武器やエネルギーのクリスタルを取引していた。ユクセイは錆びた剣が並ぶ露店の前で足を止めたが、彼の視線は刃ではなく、低い唸り声を上げて彼を観察している熊の男に向けられていた。


「この場所は……原始的だな」ユクセイが言ったその声は、いくつかの敵意に満ちた視線を引きつけた。


カサンドラは素早く振り向き、彼の腕を掴んだ。彼女の耳は直立しており、警戒のサインだった。


「言葉に気をつけなさい、余所者。あんたはこの地域で最強の王国にいるのよ。郊外に着く前に喧嘩を売りたいなら、お望み通りにしてあげるわ」


「喧嘩を売っているわけじゃない、ただ観察しているだけだ」ユクセイは、カサンドラが予想もしなかった力で彼女の束縛を振りほどきながら答えた。「ラピスは俺に王国を見せろと言った。今のところ、本能に頼りすぎて頭をほとんど使っていない連中しか見ていない」


「みんな、聞きなさい! この人間が、私たちは原始的だと言ったわ! 私たちは頭の使い方も知らないただの獣だって言ったのよ!」


ある傭兵が叫び、その声が市場の喧騒を突き抜けて響き渡った。


市場に墓石のような沈黙が降り立ったが、それは武器が抜かれる金属音によってすぐに破られた。数人の獣人――槍を持った狼の集団と、先ほどの露店の威圧的な熊の男――が道を塞ぎ、重い足取りでユクセイへと迫ってきた。


カサンドラは心臓を高鳴らせながら、すぐに暴徒の前に立ちふさがり、緊張で爪がすでに突き出ていたものの、平和を促すように両手を広げた。


「やめなさい!」カサンドラは権威を持って叫んだ。「ただの、自分が何を言っているかも分かっていない余所者よ。彼はラピス・アーサーの保護下にあるわ。私たちは喧嘩を望んでいない、ただ通りがかるだけよ」


「お前は喧嘩を望んでいないだろうな、猫女」熊の男は丸太のように太い指でユクセイを指差しながら、低く唸った。「だが、あの白髪のガキは違う。あいつの目が俺たちを挑発している」


ユクセイは後退することも、後悔の念を示すこともなく、カサンドラの隣へと一歩踏み出し、彼女と肩を並べた。彼の冷徹な視線は襲撃者たちを捉え、彼らの構えの弱点で見事に止まった。


「彼女の言う通り、俺は喧嘩を望んでいない。だが、少しの騒音と錆びた金属で、明白な事実を俺に撤回させられると思っているなら、お前たちの本能は俺が思っていたよりもさらに貧相だな」


ユクセイは言った。その声は侮辱的な冷静さで空気を切り裂いた。


「ユクセイ、今すぐ黙りなさい!」


カサンドラは、街の真ん中で今にも血の海へと状況が爆発しようとしているのを感じて、鋭く囁いた。


しかし、すでに遅かった。

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