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お爺様、お孫さんに迫られてるだけです

「浩一さんこれを」


リリベルは浩一に金の玉を渡す。


「ゴールデンボールです、これであなたの成功を祈っております」


浩一は不思議な力を感じるその球を大事にアイテムボックスにしまった。


そして、浩一たちは別れに涙を流すエルフ達を残し、元レフト王国、現魔国ルシファー領に入っていった。


全員の素早さが上がり、ミッシェルの足についてこられるようになっていて、走ってレフトに向かった。

そしてレフトの外壁が見え、門に向かって走っていると、何か布が広げられている。

文字があるようだ。布は左右のサイクロプスが掲げている。

その布には【お帰りミッシェルたん】と書かれていて、その下で大きく手を振る骨のような男がいる。それを見たミッシェルが速度を上げ、先に走って行くので何とかついて行くと、骨のような男の声が聞こえる。


「ミッシェルたーん!おかえりー!待ってた、ぐえべ!!」


ミッシェルの見事な飛び蹴りが顎に入った。


「ミッシェルさん!!い、い、い、いいんですか!?その人領主じゃ!?」


サイクロプスが慌てて骨の人を助け起こしている。

骨の人は良い笑顔?で言う。


「相変わらず素晴らしい飛び蹴りだね!ミッシェルたん!」


「きもい」


「うーん!辛辣!でも、それがいい」


キャハ!なんて言って喜ぶ骨の男性を見て、確かにこんなお爺さんは恥ずかしいかもしれないと浩一は思うのだが、とりあえず顎にヒールをかけてあげようと思った。


「大丈夫ですか?ヒールは必要ですか」


骨の男性は顔をしかめて言う。


「お前のはいらない」


プイっとすねたように言う骨の男性、アイリッシュがやって来た。


「私ならいいですか?」


「おぉ、お願いしようか」


アイリッシュがヒールをかけ、骨の男性がお礼を言う。そして、浩一を見たと思ったのだが違った。


「あーん!可愛い赤ん坊だねぇ!勇者の生まれ変わりだっけぇ?えーでも、かーわーいーいー」


キャーとまるでギャルのようなテンションに浩一は引き気味だ。正直、このテンションは苦手な部類だ。


「お!立派な男もいるじゃないか、そこの少年も可愛いねぇ何歳かなあぁ?」


ビリーはタジタジしながら言う。


「じゅ、10歳です」


「そうかいそうかい、頑張ってるねぇすごいねぇ、お嬢ちゃんも素敵な魔法だったねぇ、ワシ勇者パーティー好きかもー!」


ギャルだ、ギャル爺だと浩一は思った。

うわぁと引いてる浩一にミッシェルが近づいて来た。


「すまんな、浩一悪い人ではないんだが」


「あ、はい、なんか嫌われてるみたいですけど、大丈夫ですよ、ミッシェルさんのお爺さんですもんね!」


そんな浩一にミッシェルはすり寄る。


「本当にお前は良い子だよねぇ、そのままでいてくれ、こ・う・い・ち♡」


「だからそう言うのやめましょう!?」


そこに二つの叫び声。


「おやめなさい小娘ええええええ!!!」 「許さんぞ小僧おおおおおおおおお」


浩一は「ええええええ」と驚き、ミッシェルが顔をしかめる


「余計な奴らめ」


骨の男が浩一の方に高速移動して胸倉をつかみ叫ぶ。


「他の子はすぐに城に入れるがお前はこのフレイア・ルシファーの迷宮を通ってこい!じゃないとミッシェルたんとの関係なんて認めないんだからね!!!」


「え?」


浩一は心の中で叫ぶ。


「俺は迫られてるだけですぅうう」


そんなこと言えるわけなく、浩一は滝のように汗を流した。


そして、浩一は走っている。


「おりゃ!」


「待て待てー!」


「そっち行ったぞ!」


町中の人達が襲ってくるのを避けたりはじき返したり、道を進むのに邪魔なら動けなくもした。


「おお、なかなかやるな」


「結構いいじゃないか!」


観察していた町の人達がはやし立てる。


避けた人たちは感心する人もいるが、悔しくて追いかけてくる人もいる。


「まだ負けてないんだから!!」


入り口で避けた子がまだ追ってきている。小さな女の子で攻撃しづらく、気絶させたりしたのにいつの間にか追いついて攻撃してくる。


「もう諦めてよー」


「人間がミッシェル様の旦那なんて認めないのー!」


「旦那じゃなーい!!」


そんな会話をする二人を周りは笑って見送る。


「やれー!ダリア!頑張れー!」


「ダリアー!負けんじゃねぇぞーい!」


「俺も手伝うぜー!」


煽る人達と仲間に入る人達と様々だ。

右から剣が飛んできて、それを避け、剣の主を蹴とばす。

今度は鉄球が飛んできて跳ね返して飛ばした主にはじき返す。


攻撃への対応に感心する人たちが多い中、それを見て「腕試しだー」と突っ込んで来る人もいる。

人間も魔物も、なんでこんなに好戦的なんだ!!と浩一は思いながら走る。


行き止まりで囲まれた時は終わりかと思ったが、狭い路地の壁を蹴って屋根に飛び上がった。

それにみんなついて来るのだから困ったものだ。


できれば傷つけたくないのに何でみんな攻撃してくるんだと思いながら浩一は反撃する。

どうにか追いかけて来る大人たちを蹴散らすのだが問題はダリアだ、顔を真っ赤にしながら涙を目に溜め、必死に追って来る。


「ミッシェル様に近づくななのーー!!!」


「それは仲間だからできないよぉ―――!!」


「なら死ねなのぉー!」


「それもできないごめーん!」


「許さないのぉ―!!!」


そんな追いかけっこをして、何とか浩一はお城の門に飛びこんで倒れると、顔の横で剣が突き立てられる。


「うううううぅぅ」


ダリアが涙をため、その剣を地面から引き抜き振り上げる。


「死ねなのぉ!!」


「わーーーー!たんま!たんまぁぁぁ!!」


だがその剣は鼻先で止まった。そしてダリアの上にピンクの髪が見える。


「やめろダリア、てかなんでここにいるんだ」


「おねぇ様!!」


ミッシェルが剣をつまんでいた。ダリアは剣を手放しミッシェルに飛びつくのでミッシェルが剣を手放し、浩一はぎりぎりで避けた。


「おっと、悪かったな浩一」


ミッシェルがそう言うので浩一は冷や汗をかきながら言う。


「い、いえ、大丈夫です」


「悪いな、浩一、こいつは私の妹、これでも50歳だよ」


「50!?」


「魔族の妊娠や成長は種族によるが平均して妊娠は50年だからな、歳の離れた妹さ」


浩一はダリアを見る。どう見ても10代前半の少女にしか見えない女の子がミッシェルに抱き着き頬を膨らませて涙目で睨んでいる。


「種族の違いかぁ」


ということは?20歳ほどに見えるミッシェルって何歳なんだ!?と浩一は思うのだった。



ミッシェル、ダリアと浩一が城に入ると、


「ダリアちゅーん!お帰りだよーん」


フレイアがダリアに抱き着こうとしたが、


「お爺様、触れたらお家帰るの」


フレイアはピタッと止まる。


「せっかく孫が来てくれたのに、来てくれたのに、帰るなんてやーだー」


ぴえーんと目を潤ませ訴えるフレイアにダリアが一言、


「きも」


「あーん、辛辣うう、だがそれがいい」


キリッと顔を決めるフレイアでした。


浩一たちが城の上階に行き、3階の大きなテラスに出ると王都が見渡せる。そこで望遠鏡を持ったアイリッシュ、ガイア、ロトそして何も持っていないビリーが居た。

ビリーはスキルのスコープアイを使っていたのだろう。


ロトが手を振りながら言う。


「浩一強くなったなぁ!上手く進んだじゃないか」


ガイアが豪快に笑う。


「お前ならやれると思っていたぜ!」


ビリーが飛び跳ねる。


「すごいです浩一さん!誰も殺さず軽傷だけで済ませて進むなんて流石です!」


アイリッシュが駆け寄って来る。


「ケガはないわね、なかなか強くなったじゃない」


そしてねぎまが叫ぶ。


「当り前ですわぁん!浩一様ぁんは勇者なのですものぉん!」


そしてミッシェルが褒めた。


「浩一なら魔王とも渡り合えるさ」


その言葉でダリアとフレイアが叫んだ。


「それはない!」「ありえないの!」


ダリアが涙目でミッシェルに言う。


「あんな、雑魚じゃ魔王様と戦えないの!」


フレイアがミッシェルの肩を掴む。


「ミッシェルたん、よーく考えてごらん?あれ、18、魔王110、経験の差があるよね?レベルも魔王は3000なのよ?ね?そうでしょ、ミッシェルたん」


ダリアがフレイアを蹴り飛ばす。


「おねぇ様に触れるななの、くそじじぃ」


「うーん、いい蹴り!成長したね!ダリアちゅん!」


「きもいなのぉ!!」


頬をぷっくり膨らまして怒るダリアがミッシェルに抱き着き威嚇している。

ダリアとフレイアは魔王も好きなのだなと浩一は思った。

だが空気も読まずミッシェルが言う。


「今日はここに泊まるが、浩一は私と一緒の部屋な」


「「「それはダメ」」なの!」


浩一、ダリア、フレイアが叫び、みんな笑った。


試練も何とか乗り越え、だが休む暇なく浩一は魔国のヤタガラスから救出された魔族の人達を治療する、一口に魔族と言っても、獣人、魔人、魚人、悪魔に亜人と様々いる。

だからって治療法が変わるかというと、そうでもないようだ。魔族は人間よりも桁違いに魔力が高く、だからこそ瘴気化もしやすい。500年前までは人間の国から瘴気の治療に聖女を呼んでいた。

人の国との関係が悪化したことで、魔法を発散させる場所を作り、瘴気化を防いでいた。だがまさか、薬で瘴気化されるとは思っていなかった。


浩一の水晶が足りず、まだ治療の終わっていない獣人の男性に近づく。地元の村から来たという家族が祈っている。


浩一は暴れる男性のもとへ魔力を出しながら近づく。男性は急に暴れるのを止め、惚けたようになる。

浩一は両手で男性の頭を包み、ヒールをかける。


男性は目覚めの微睡にいる。


「目覚めましたか?」


浩一は微笑む。


「あん。た、は?」


「僕は浩一です、おはようございます、ご家族が待っていますよ」


そう言って浩一が身を引くと、涙目の奥さんと子供たちがいた。


「あぁ、あぁ!会いたかった!!」


うわっと泣いて家族が再会した。浩一は次の患者に向かう。


「母さん、あの人は?」


男性が浩一のことを聞く。


「あの方は聖人様ですよ」


ぼーっと男性は浩一を見る。


「聖人様……いや、それよりあの温かさは……」


全員の治療が終わると、今度は浩一が配給場に立つ。


「あ、さぁみなさん、ご飯を食べて元気を付けてください、ご飯は力ですから」


「は、はい」


男性は浩一から肉じゃがを受け取る。

そこに女性の亜人が来る。


「浩一さん、血の汚れって何で落とすんですっけ?」


「大根のとぎ汁がいいですよ」


「ありがとうございます!」


その姿に助けられた全員が納得した。


聖人じゃない



「「「「かぁちゃん」」」」


「え?」


包容力と温かさ、優しい微笑みに、皆、お母さんを思い出していた。

それは女性も男性も子供も老人もみな、ハラハラと泣きながら肉じゃがを食べる。

初めて食べるはずなのに、不思議と懐かしい味だと思ってしまうのだった。


その日からなぜか浩一は城の者にも「かぁちゃん」と言われる。


解せないと思いながらも、浩一は顔を引きつらせ笑うのだった。


もちろん、勇者パーティーのメンバーもからかって「かぁちゃん」と呼ぶのだが、意外とフレイアとダリアも笑いながら言ってくるのだった。


「おいしいなの!!かぁちゃん!もっとこれちょうだいなの!!」


ダリアは配給用のから揚げと肉じゃがをもりもりと食べている。


「まぁ、いっぱい作ってるからいいよ、まだ作りに行くね」


そう言って浩一が配給場所に設営された簡易キッチンのホットスライムたちと料理を作る。

他のメンバーは患者たちの見回りや、患者たちに食事を運んでくれている。


「あ、あんな奴、あんな奴!認められないのに、かぁちゃあああん!!ずぞぞぞ」


泣きながらうどんをすするフレイア、どうもうどんを気に入っているようだ。


浩一の料理は元々バフ効果があったが、魔力を操る力を鍛えてからは、浄化の力や魔力の込め方が上手くなり、

なぜかその効果で料理の温かさが懐かしの味のような、心温まる味になり、大事な人を思い出す料理になっているようだ。


「それで?ラグルス王国を任せているはずのダリアがなんでここにいんだ?」


ミッシェルがもりもり唐揚げを頬張るダリアに聞く。

ダリアは口いっぱいの唐揚げを飲み込んで言う。


「お姉様の旦那になる者を排除しようと思いました!」


胸を張ってふんすと鼻息を漏らして言うダリア。


「うん、元気でよろしい、今はどう思っているのかな?」


「ダリアのママになって欲しいです!」


「義兄さんじゃなかったかぁ」


ミッシェルが笑いながら言うので浩一は、小麦粉を危うくボールの外にぶちまけるところだった。何とか気が付きその事件は免れた。


だがそこにずぞぞとうどんをすすりながらフレイアが言う。


「そもそも、小僧はミッシェルたんをどう思っておるのだ?」


フレイアの言葉に、唐揚げの鶏肉を油に投げ入れてしまって油が跳ねる。


「どうって言うと……」


振り向けば全員が浩一を見ている。


浩一はまた鍋の方に向き直り、考える。


「ミッシェルさん……は、とてもいい師匠です、そう思います、俺には勿体無いほど素敵な人で……だから、その、素敵な人とは思ってますし、好意はありますがそれが恋愛かは、俺にはわかりません」


そんな浩一の言葉にフレイアは言う。


「煮え切らん男だ」


ずぞぞぞとうどんをすすりながらフレイアが言った。

浩一は少し惨めな気持ちになった。そんな顔を見られたくなくて浩一は真剣に唐揚げを揚げ終えて、すぐに「うどんの麺が無くなる」と言って来たメイドに感謝して、うどんを打ちに行った。


そんな浩一をミッシェルはニヤニヤと眺める。

ダリアは追加されたアツアツの唐揚げをほふほふ言いながら食べて、飲み込み、ミッシェルに言う。


「お姉様、あんなことで良いのですか?」


「いいさ、今はね、わからないってことは、それが愛に変わることもあるってことさ、覚えとけよダリア」


「はい、お姉様」


ミッシェルは立ち上がり、わざと浩一を手伝いに行った。浩一が今はそっとしておいてほしいと思っていると知りながら、浩一の心臓はその日一日、落ち着くことは無かった。











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