強くなる理由
「さぁさぁ、私はもう待てないのです、ここでの修練も武器も揃いましたね、では早速エルフの国、神聖国家ルーミヤに参りましょうね」
キラキラしながら浩一の手を握るリリベル女王が言う。
「な、なんでそんなに楽しそうなんですか?」
リリベルは浩一ににっこりと言う。
「こんなに鍛えがいのある原石が我が国に来るのに、心が踊らないなんて馬鹿ですわよぉ」
よく見るとリリベル女王の口の端からよだれが見える、心なしか目がハートな気も?
「お、俺はミッシェルさんが師匠でして………」
リリベルはミッシェルの方を見る。
「共同で鍛えようではないかリリベル女王」
「貴方ならそう言っていただけると思っていました!!」
鬼コーチが増えた予感のする浩一だった。
アイリッシュとガイア、ビリーは合掌した。
そんな三人にリリベルが言う
「あ、お三方も通信水晶で見た皇子や姫が興味を持っていましたわ、鍛えてもらいましょうね!」
三人も顔を青くした。
そんな三人に浩一は言う。
「でもさ!あの、ルーミヤに着くのは時間がかかるしさ!」
そんな浩一の望みを潰す一言をリリベルは言った。
「あら一瞬で行けますわよ?」
「「「「え?」」」」
ロト、ミッシェル以外の全員がリリベルを見る。
そんな4人にリリベルは楽しそうに言う。
「転移魔法を使えばよいのです」
「「「「なるほど」」」」
4人がミッシェルを見る。
「旅も鍛錬だ、簡単にゴールでは何も育たないだろ」
みな、納得するしかなかった。
そして、準備が済み、すぐに動く。
「リラは結婚の為に置いて行きますわね、それでは、みなさん、参りますよ」
リリベルはできるだけ厳かに、しとやかに言うが、興奮がにじみ出ている。
そんなに浩一を鍛えるのが楽しみなのか、魔王も戦闘狂だが、もしかしてリリベルも戦闘狂なのか?
浩一が悩んでいると、地面が光る。
「テレポート」
その言葉で浩一はグワンと目の回る様な感覚に襲われ、気持ち悪くなる。
気持ち悪さに目を開けると、そこは光り輝く美しい森の城だった。
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マーサはゴートのはずれの町まで馬を走らせ、そこから道を急ぐため団員を置いて、ミリセントと凛音を連れてドラゴンの騎獣に乗り、その日の夜になる前にゴートの教会に着いた。
マーサは急いで教皇に謁見する。
そして、教皇の前でひざまずく。
「おめおめと負けて戻ってしまい、申し訳ありません、教皇聖下」
教皇は静かに告げる。
「立ちなさい、マーサ」
マーサが立ち上がると、教皇はわなわなと両手を広げ、マーサを抱きしめる。
「よいのだ、よいのだマーサ、お前が死んでしまうよりも帰って来てくれた。それだけでよいのだ」
教皇が体を震わせ、マーサの無事に安堵する姿を見て、マーサは一筋の涙を流し、悔しそうに言った。
「聖勇者団は、傷もつけられず、簡単に退けられました。まるで赤子の相手をするように、簡単に、ただの世話係の青年に、弱いと退けられました。」
絞り出すように、一言一言を苦しそうに紡ぐ。
「魔王は3000レベルだと、私たちでは弱いと、見下されました。………聖下、私は、大変………悔しいです!!」
教皇はマーサを抱きしめながら言う。
「強くなりたいかい?マーサ」
「は、い!」
「では私が強くしてあげよう、君の為に」
「お願いします」
悔しさと憎さに燃える目をするマーサ、そんなマーサを抱きしめ教皇は怪しく笑った。
そして浩一達はルーミヤに来ていた。
ルーミヤは木々を切らず家を建てていて、家から木が伸びているところもある。
自然にあふれ小さな人の形の妖精や光の玉のような精霊が飛び回り、キラキラと美しい。
全体的に白と緑の町並みで、町の中心にある一番目立つ木は、女性の姿に彫刻されているように見える。
浩一は言葉をこぼす
「お……女の人?」
「あれは創造神ファルスティア様の木です、彫刻のようでしょう?でも元からああなのですわ。あの手の上にあるのが城です、行きましょう」
リリベルはそう言って、先に歩き出した。
浩一たちも後ろについて行く。
浩一はゲームなどを思い出す。
「世界樹ってやつですか?」
浩一の質問にリリベルは満足そうな笑顔を見せる。
「よくわかりましたね、あの世界樹がこの世界の中心にあり、魔力の源なのです、だから精霊や妖精が多いのです、でも、今日は特別ですね、浩一さんに妖精や精霊達が寄って来てますから」
「え、俺!?」
浩一の驚きにリリベルは笑う。
「貴方の魔力は妖精に近いですから」
戸惑いながら、浩一が周りの妖精をよく見ると、くすくす笑って楽しそうだ。
街中に入ると、町の人達がニコニコと頭を下げる。
リリベルも威厳を持って歩いているようだが、浩一にはなぜかスキップを我慢しているように見える。
なんでだろうか、浩一はそれに寒気を感じる。
にっこにこのリリベルの頭の中では、どう浩一をしごこうかと考えているのだろう。
世界樹の足元にくると、白いクジラが何匹か飛び回っている。
みんなで大きな根の上に乗り、そのクジラにリリベルが言う。
「妖精ホエール、上まで連れて行ってくださいな」
そう言うと一匹のクジラがゆっくりと根の下に降りて来る。
「さぁ、みなさん乗ってくださいな」
白いクジラの背に乗ると、クジラは美しくよく通る鳴き声を上げて空中に舞い上がって行く。
浩一とビリーは少し身を乗り出して下を見ている。
ビリーが聞く
「このホエールも妖精なのですか?」
リリベルは朗らかに言う。
「妖精は精霊が体を得たモノの総称です、精霊が進化したり召喚されると体を得ます、ホエールは光の上位精霊が進化した妖精なのです」
へーとみんなホエールを見る。そしてアイリッシュが聞く。
「エルフは妖精でもあると聞いたのですが同じなのですか?」
リリベルは嬉しそうに言う。
「エルフは妖精に近い存在ですが、妖精ではありません、神の時代、神々は生き物を作りたもうた。」
リリベルは語る。
光と緑の神はエルフとダークエルフを作った。
火と土の神はドワーフを作った。
水と雷の神は精霊から妖精を作った。
闇と時の神は魔族を作った。
氷と風の神は魔物を作った。
生き物たちは好きなように動き、神々は自分達の作った生き物たちを楽しそうに見ていた。
そんな中、魔族と妖精が子を作った。それは人とされた。
人は愚かで、か弱く、繊細だった。しかし魔族の残虐性と妖精の純粋さ、無邪気さを併せ持ち、とても残酷だった。
だから神々は人間の命を早く摘み取った。だが短命になった人間はすさまじい繁殖力で世界に広がって行った。
だから創造神が人々に優しい雨を降らせた。その雨は人間の残酷さを抑えた。
そしてそれぞれの種族は神に与えられし土地でそれぞれ王を立て崇めた。
それが創世記と言われている。
アイリッシュとガイア、ロトは驚く
ロトは腕を組む。
「人間の国に伝わる話とは違うようだ」
リリベルはあーと言う。
「500年前に新教皇が事実として触れまわった歴史ね」
アイリッシュは驚く。
「え!500年前なんですか!?」
そんな会話をしているうちに城の門の前に着き、順番にホエールから降りる。
「この世界に亜人なんて言葉はなかったの、それぞれの種族をまとめて、神の子で子族と言い、他の生き物を魔物と言う分け方だった、でも500年前異世界から転移してきた聖人が力を持ち、エルフの力を凌駕する力を持ち、人とそれ以外の子族を亜人と分け、創生神様が人を作り、五大元素の神がドワーフとエルフを作った。そして亜人が魔獣と交わり魔族が生まれ、魔王が世界を牛耳ろうとしている。だから魔族は悪で倒さなければいけないのだと宣言し、亜人との交流を絶ったのです」
リリベルは悲しそうにそう言って門に向かって行った。
ついて行きながらガイアは驚いたように言う。
「つまり教皇は異世界人なのか!?」
リリベルは振り返ってガイアを見る。
「500年前の教皇はそうですよ、500年前から教会との関係が切れ、教皇に会う機会がないのでわかりませんが、異世界人でも人ですしもういないはずですから」
その言葉にミッシェルが言う。
「どうやら、不死鳥の血を飲んで復活しているようだよ」
「は?」
リリベルは顔をしかめる
「つまりあの教皇が今も教皇をしていると?」
「そのようだね」
リリベルはその美しい顔を怒りの表情に染める
「斉森柊人!あれが世界を混沌に落としているのですね!」
どうやら
教皇は日本人だったようだ
王城の庭は広く自然のままのように見えて整えられた草花や木が生き生きと生えている。
「庭にテイムモンスターを放してもいいですよ、浩一様」
「ありがとうございます、なら、みんなーでておいでー」
ライフボックスからオノケたちもモズラもスライムも嬉しそうに飛び出した。
「庭を荒らしちゃだめだよー」
「ききー!」「ぴぴー!」
みんな楽しそうに庭に出て行ったのだった。
そして浩一たちは美しい広い部屋に案内された。
美しいながらも華やかで、優しい色合いの応接間だ。
そこには先客がいた。
「おお!待っていたぞぉ!ガイア!」
エルフと言えばスラっと背が高く優美で美しく神聖な見た目を想像する。
だがガイアの腰を持ち、あろうことか高く掲げている人は背の高い筋肉だるまだ、顔だけが体に似つかわしく無いほど美しく優美である。
「マルシー、嬉しいのはわかりますが急すぎますわ、まずご挨拶しなくては」
「ん?オーそうだな!悪かったなぁ!はっはっは!!俺はマルシーだ!リリベルの夫だ!こんななりだがエルフだぞー!見えないだろ!はっはっはっは!」
笑うマルシーはガイアを降ろして肩をバンバン叩きながら言っている。
そんなマルシーにミッシェルが言う。
「相変わらずいい筋肉だな、マルシー」
「おお!ミッシェル!鍛錬はしているか!」
「あぁ、マルシーとゴーシュ僧侶の頃と比べれば甘い物だが、しているよ。まぁ今は自分だけじゃないからね、鍛えるのは」
ミッシェルの言葉にマルシーは浩一を見る。
「異世界人の青年だな!君もなかなかに面白そうだが、俺はこいつだなぁ!ガイアはグラディウスの才能があるぜ!」
わはっはっと笑うマルシーに圧倒されていたら、美しい二人のエルフが椅子から立ち上がってこちらに来る。
「お父様、ばかりずるいですわ」
「我らの紹介もしてください」
リリベルにそっくりな姫とマルシーを柔らかくエルフらしくしたような男性が来る。
そんな二人にリリベルがクスクス笑って言う。
「二人が異性に興味を持つなんて嬉しいわぁ、ビリー君私の娘は弓の名手なのよ」
リリベルがそう言うと、女性は両手を胸の前で重ね、右足を後ろに下げて足をクロスするようにし、膝を曲げて礼をする。この国の挨拶だろうか、見たことが無い。
「マミリアですわ、貴方に私の全てを教えましょう」
マミリアが挨拶すると、リリベルが隣の男性を手で示す。
「こちらは息子よ、魔法がとても好きなの」
その言葉に胸の前でグーにした手を置き頭を下げる男性。
「フリーダだ、君はとても魅力的だ」
「へ!?」
アイリッシュが真っ赤になる。
言った本人は何も感じていない冷めた真顔である。
いきなりの告白にみんな固まる。
リリベルが噴き出して言う。
「フリーダ、それじゃ告白よ」
フリーダは不思議そうにして、「あぁ」と気付く。
「君の魔力は魅力的だ。人間の域をはるかに超えている。君の魔力を育てたい」
あっとアイリッシュも意味を理解する。
「私の魔力だけですか」
「あぁそうだ、君に恋愛的な興味はない」
真顔のフリーダの言葉にアイリッシュはなんとも言えない表情を浮かべながら言う。
「ご指導ご鞭撻お願いいたします」
「あぁ、君の才能は必ず俺が大輪の花を咲かせよう」
フリーダは相変わらず表情を変えないままだ。
ニコニコとリリベルが見ていると、マルシーがガイアの肩を掴む。
「よし、挨拶はすんだな!なら夕食まで修行のカリキュラムの話し合いだガイア!俺の部屋に来い!」
「お?おう、よろしくお願いございます、マルシー様」
変な敬語で返事をしながら、ガイアはマルシーに連れていかれた。
「では、ビリー君は私の部屋に」
マミリアの言葉にビリーはもじもじする。
「僕が王女様の御部屋に行っていいんですか?」
上目使いのビリーにマミリアは「はぅっ」と何かくらっている。
「全然いいのよぉ、さぁ行きましょう」
「ふふふふ」と笑いながらマミリアがビリーを促す。
「は、はい、よろしくお願い致します。」
マミリアは頬を染め、にっこにこでビリーを連れて行く。
その様子を見ながら、浩一はビリーの身が心配になった。
そしてフリーダも言う。
「では、君は俺の研究室に来てもらおうか」
「あ、はい、よろしくお願いいたします。」
「あぁ、まずは古代魔法の基礎を教えよう」
そうしてみんな部屋からはけて行き、浩一とミッシェル、リリベル、ロトだけ残る。
「ではミッシェル、浩一様の訓練メニューを組みましょうか」
「あぁ、そうしよう」
2人の楽しそうな顔に浩一は顔を引きつらせる。
「お、お手柔らかに……」
ロトはロキを人型にして部屋の隅にある茶器セットでお茶を嗜んでいたのだった。




