ゴールデンボール
ゴールデンボール、その響きから連想できるのは下ネタなのだが、こんなところで言うはずがない、そして周りの反応は自分とはどうも違うようだ。
「あのゴールデンボールを?」
ロトが驚いているとビリーが尋ねる。
「本当に実在するんですね」
それにミッシェルが答える。
「あぁ実在はするさ、伝説の秘薬だがエルフの王宮でだけ栽培されている。」
浩一は恐る恐る聞く。
「あの、ゴールデンボールって何ですか?」
浩一が問うと、アイリッシュが目をキラキラさせながら言う。
「ゴールデンボールは清浄な魔力が満ちるエルフの王城でしか栽培できないの、10年栽培しなきゃいけなくて、実るために細やかなお世話が必要で一瞬気を抜くだけで9年の努力も無駄になるほど枯れてしまう繊細な実なの!だけどその実は万能薬であらゆる呪いも病気も治し、健康的な体で一口食べれば死をも克服できるのよ!」
「そ、そうなんだ、それはすごいね」
アイリッシュの勢いに浩一は少し押され、タジタジとしている。そんな浩一にミッシェルが手を差し伸べる。
「よく勉強しているじゃないかアイリッシュ、今アイリッシュが説明してくれた通り貴重な秘薬になる実なんだ、この実を手にできるのはエルフの王族と、エルフの王族に気に入られた者だけだ、だからこそ異例だ、リリベル女王、どの神からの神託だい?」
リリベル女王は優しい笑顔で言う。
「創造神、フェルスティア様です」
その言葉に全員が瞠目する。
浩一はフェルスティアと言う神は知らない。だがその前の言葉、創造神つまり最高神ということではないだろうか、そんな最高神からのお告げで浩一が勇者としてお告げが下りたと言うこと。
浩一は恐る恐る聞く。
「フェルスティア様って創造神てことは偉い神様ってことですか?」
その質問にリリベルが答える。
「フェルスティア様は全ての神の王でありこの世界を作った方です。その方が貴方を勇者と示し、ゴールデンボールを授けなさいとお告げをくださったのです」
つまり本当に浩一は勇者として召喚されていて、ロトはついでだということだ。
ミッシェルが聞く。
「なぜゴールデンボールが必要だと?」
リリベルは目を伏せる。
「必ず必要な時が来るとしか聞いておりません、最終決戦にて」
最終決戦、それは何を指すのか、
「魔王戦で必要になると?」
ガイアが問う。
「いいえ、その先です、あなた方はその答えを持っているはずです」
「つまり教会と戦いになるということか」
ロトの言葉に皆、押し黙る。誰かの唾を飲む音が大きく聞こえる。
そしてビリーが言う。
「教会は僕と父さんを消すためだけに村を潰したんですよね」
そんなビリーの言葉に浩一はアイリッシュを見る、ライフボックスの中で話したのだろう難しい顔をしている。
だがミッシェルは簡単に言った。
「おそらくその可能性は高いな、だが目的としては、魔族と共生できる村ごと消したかった、だなお前達が居るだけで教会には都合が悪かったんだよ」
「ミッシェルさん!」
アイリッシュは責めるようにミッシェルを見て、ビリーに駆け寄る。
「僕のせいで」
ビリーは大粒の涙を流して、苦しそうに泣く。それにミッシェルは厳しく言う。
「なぜそうなる!人間と魔族が交わることで何か悪いことあったか?お前の村は襲撃以外で悪いことあったのか?」
「な、無いけどっ、ひくっ」
泣きながら言うビリーにミッシェルははっきりと言った。
「悪いのは勝手に魔族に喧嘩売ってる教会だ!そうだろ!」
ビリーはめそめそ顔でミッシェルを見て、そして袖で涙をごしごしと拭いて、赤い目で真剣にミッシェルを見る。
「う、うん!僕もみんなと教会を止めたい!」
「そうさ!その勢いだ!魔王倒して教会も倒すぞ!!」
「うん!倒す!」
おお!!と盛り上がる浩一以外のメンバー、浩一だけは自分の拳を見つめる。
自分が本当に勇者として呼ばれていた。
最終決戦が魔王との戦いで無いのなら大きな戦いは2回あるということ、いや、魔王の前のドラゴンとの戦闘、それも難しい戦闘になるだろう。
死をも克服する万能薬ゴールデンボールが必要な戦闘、どんな壮絶な戦闘になるのか………
一方、マーサは教会の中庭の池の前で池を見つめていた。
1つため息をつき池の魚に餌を投げる。
池から数匹のアーティー、水の体の犬たちが遠くで楽しそうに遊んでいる。
そして岩場で人魚が美しく歌っている。
魔族は許せない、けれど教会でも魔物を飼っている。知能ある魔物は魔族と捉える者もいるが、あの人魚は光の属性が混ざった聖獣だ、真っ白で群から外れていた。
浩一のカナも群れでイジメられていた。
神聖なものは群にはなじめない、勇者パーティーで自分はメンバーを仲間だと信用できると思っていた。
それなのに、二体も魔族が紛れていた。
それを自分以外全員が知っていた。そう言えばバブスライムを使っていた時、異常に静かだった。
もしかして防音魔法で秘密の会話をしていたのだろうか。
ガイアに言われた表ばかりが世界じゃないという言葉、きれいな世界しか生きていないと言われた。
「私は仲間として認められていなかったのか………」
信じていた人たちに、あの楽しい日々に、裏切られた悲しみで一粒の涙が池に落ちる、アーティーたちが匂いを嗅ぎに来ている。
そこに優しく声をかけられる。
「マーサ」
その声の主は教皇だった。
「大丈夫ですか、マーサ」
「教皇猊下、私は愚かです、人の国で魔族と旅をして信用していたなんて」
教皇はマーサを抱きしめる。
「あぁ、マーサ可哀想に、魔族に騙され、私が間違って召喚した勇者のはずだった者に騙されていたなんて、私が間違っていたのですマーサ、怪我をしたからと幼い頃から勇者になるべくして育てたあなたを信じず勇者召喚なんてするべきではなかった。」
しくしくと泣く教皇にマーサは慌てて言う。
「そんな、私がミスして戦争で怪我などしなければ、あんな者達を呼ぶ必要はなかった。私のせいです」
教皇はマーサの肩に手を置いて、しっかりと目を見る。
「マーサ、貴方の傷を治す魔法が見つかりました。また勇者になる修行を再開しますか?」
教皇の言葉にマーサは強く頷く。
「はい、私が魔王を倒し、魔族を殲滅します」
「頼りにしていますよマーサ」
そう言って教皇は教会に戻っていく、そして教皇は教会の自室に入る、様々な魔物の素材や小さな庭には妖精もいる。
「さて、どこまで探られているのでしょうか」
教皇は小さな庭のいちりんの花を握りつぶした。




