大洞窟ドルーン
ざーーーーーーーんと土ぼこりをあげてミッシェルは止まる。
大きな山の前に巨大な扉があり、小さい扉の前に並んで入国審査を待っている。
だがミッシェルはその列に並ばず、まっすぐ検閲所に行く。
「なんだい姉さんちゃんと並んでもらわんと困るな」
「緊急なんだよ、魔族だ」
それを聞いて衛兵は真剣な顔になる。
「冒険者カードは」
「これだ」
衛兵はカードを確認する。
「パーティーメンバーがいるようだが?」
「あぁ悪い、浩一みんなを出しな」
浩一はヘロヘロになりながらライフボックスを開く。
入り口にガイアが顔を出す。
「うお、浩一大丈夫か!?」
次にアイリッシュが出て来る。
「よく頑張ったわ浩一、これだけは褒めるわ」
よれよれと浩一はアイリッシュの手を握る。
「ひ、ヒール、ヒールを」
「はいはい、そこ座んなさい」
衛兵は不思議そうな顔をする。
「ライフボックスはすごいが、あの兄ちゃん大丈夫か?」
「大丈夫じゃないぞ?」
「襲撃か?」
「いや、走っただけ」
「は?」
そしてぴょんと出て来たロトにみんなふにゃっと顔を緩ませる。
「大丈夫かぁ?浩一、悪いなぁ俺ライフボックス持ってないからなぁ、うらやましいぜ、ミッシェルさんの抱っこ」
はっはっはと笑うロトに衛兵が言う。
「可愛い赤ちゃんでしゅねぇ♡、噂の勇者様かなぁ?冒険者カード出してねぇ♡」
語尾にハートついてるな、と浩一は見ていた。
そこにライフボックスから最後に出て来た二人に衛兵は驚く。
「だ、第五王子ライオット様に聖なる踊り子リラ様!!!ご無事で!!!」
衛兵がそう言うと周りの者達が傅く、浩一が思わず言う
「え、ライオット君王子だったの?」
それに衛兵が叫ぶ。
「不敬だぞ小僧!!」
それにライオットが怒る。
「俺の命の恩人になんて口の利き方だ!お前を不敬罪にするぞ!!」
「は、は!申し訳ありません!命の恩人というのはどういう事でしょうか」
「俺はお忍びで旅をしてきた!旅をしている時に人攫いに襲われたが、そこをこの人たちに助けてもらったんだ!」
その言葉に衛兵は浩一に頭を下げた。
「そんなことが!!我が国の王子を助けていただきありがとうございます、失礼な態度を取り申し訳ございませんでした!!」
浩一は慌てて手を振る。
「いや、今のは俺が悪いと…………衛兵さんきにしないで、ライオット………様も、脅すのもやめてあげてください」
浩一がそう言うと、ライオットはムッとする。
「浩一は俺の命の恩人の一人なんだ!俺にかしこまるなよ、普通にしてくれよ」
そう言われて浩一は、そういえば元々鍛冶公爵というのは知っていたのにあまりにもフランクだった。
それでもライオットは楽しそうだった。今更かしこまるのも違うだろうなと思った。
「そうだね、友達だもんね」
「そうさ!彼ら彼女らは俺の命の恩人で友達なんだ!てことで国王に報告してくれ」
ライオットの言葉で衛兵が一人返事をして走って行った。
そしてライオットがふふんと楽しそうに言う。
「よし!みんなに国を紹介するぜ!行こう!」
ひざまずく民衆の間を通って浩一たちはライオットの後ろについて行って門を通ると、
スチームパンクの世界だった。
繊細な装飾を施した建物や煙突から出る煙は上空に空いた大きな穴に伸びていって、その大きな穴からは日の光が降り注ぎ、穴の周りの木から蔦が伸びたりなどしている。
建物の横に大きな歯車があったり壁側には洞窟を利用した建物も見え、本当に洞窟を利用した街のようだ。
「ようこそ!ドワーフの国。大洞窟ドルーンへ!!」
浩一はその風景に胸を高鳴らせていたが、奥から土ぼこりを立てながら走って来る男が見える。
「よし、お前らいく」「よぉ、ライオット」
行くぞと言おうとしたライオットの後ろに立つ一人のドワーフの男性
「おう、ディモンド兄上、お元気そうですね」
「あぁ、とても元気だ、今しがた戦争の危機を脱したからな」
「それは良かったですね!気苦労が減ったようでよかった!」
「お前のせいだよ!!」
「あいた!」
ゴチンとライオットの頭に拳が落ちた。
精悍な男性が浩一たちのほうに頭を下げる。
「勇者御一行!我が愚弟と聖なる踊り子、舞姫を連れ戻し、護衛していただきありがとうございます」
そんな男性にミッシェルが声をかける。
「ディモンド王太子殿下、王になる者であれば簡単に頭を下げるものではないよ」
ミッシェルがそう言うと、ディモンドは姿勢を正し、ミッシェルに手を差し出す。
「シスターミッシェルお会いできて光栄だ、フレイア様はご健在ですか?」
「お爺様は元気だよ、気にしてくれてありがとう」
ミッシェルがそう言うと、ライオットが驚く。
「四天王フレイア・ルシファーの孫!?」
「あぁ、そうだが」
ミッシェルの言葉にライオットは停止して、頭に手を当て、こんこんと叩き、次に頭を抱え唸りながらくねくね動いている。
「ライオット君?」
浩一が声をかけると、ライオットはピシッと姿勢を整える。
「おう!シスターだな!シスターミッシェル!」
「あぁそうさ」
ミッシェルはくすくすと笑いながら言う、浩一たちは疑問を持ちながらも、ディモンド殿下に案内され城に向かう。
城の見た目は要塞のようであり、だが繊細な装飾で上品で華やかに見える。
そんな城に入っていき、謁見室に通される。
その部屋には、威厳のある玉座の前に厳めしい男性と端麗な女性が居て、2人はライオットとリラを見て、微笑む。
「ライオット、よく帰った。」
「リラ、いい旅でしたか?」
男性と女性それぞれに話しかけられ、2人は傅く、浩一たちもそれに倣ってミッシェル以外は傅く。
そしてライオットが口を開く。
「父上、今回は勝手な事をして申し訳ございませんでした。ですが、私の意志は変わりません、私はリラと共にいたいのです、エルフのリラと」
グッと握りこぶしに力を入れ、緊張した面持ちでライオットは王と思われる男性を見る。
そんなライオットを見て王はため息一つ、リラを見る、リラは願うようにエルフの女性を見ている
王は女性を見る。
「リリベル女王いいかね」
女王と呼ばれた女性は深く頷く。
「ライオット、お前とリラ殿の気持ちはよくわかった。余はリリベル女王と良く話し合わせてもらった。そして、異例ではあるが、お前達の婚約を許すこととする。」
王の言葉にライオットは唖然とする。
「そ、それは本当ですか?」
国王は呆れたような笑顔で頷く。
ライオットが唖然としていると、リラが抱き着いて来た。
「ライオット認められたのよ!」
ライオットはそんなリラに抱き着き返す。
「よかった!やった!俺達結婚できるんだ!!やったー!」
2人は王と女王の前のことなど忘れて喜んだ。
そして、周りも拍手で称えた。
そんな中、リリベルが浩一の方に行く。そしてその手を取る。
「神託が下りました。勇者、この国で聖剣を授かり、そして我が国の秘薬、“ゴールデンボール”を授けます」
「「「ゴールデンボール!?」」」
全員の声が重なるのだった。




