裏切られていた僧侶
剣を振り下ろした。そこに人はいない、自分は森にいたはずなのに、ゴートの教会にいた。
足元で消えていく魔法陣に見覚えがある、ミッシェルが消滅の魔法だと言ったそれだ。
消滅ではなかった。転移の魔法だった。こんな悔しいことがあろうか、消滅させていたと思った魔族達は……
もしかして魔国に帰していたのか!!
こんなにはらわたの煮えくり返る思いをさせられて、聖騎士である自分を騙し、裏切るなんて!!
マーサは地面を殴った。
「こ、ここは?」
ベルタ達が驚き、周りを見ている。
困惑するベルタ達を見て、マーサは今すべきことを考える。そして、ベルタに声をかける。
「ベルタさん」
「は、はい、」
マーサの顔は能面のように堅く、だがそこに静かな怒りが見える。
その冷たい怒りにベルタは背筋に寒いものを感じ、ぞわっとした恐怖が顔に出る。
「ビリーさんの事を教えてもらいましょうか」
「わ、わかりました」
「ごめんガイア」と思いながら、ベルタは心を決め、村のことを、ウィルのことを話すことにした。
そしてマーサはビリーのことを全て知った。
一方、森では緊張の糸が途切れ、全員が崩れ落ち、ガイアが顔をしかめる。
「こんな形で知られるとはな」
そんなガイアの言葉にミッシェルがふぅと一息ついて言う。
「まぁ、時間の問題だったさ、こそこそするのも限界が近かったしな。それより浩一、ピューレに連絡を」
「う、うん」
浩一は急いで通信水晶を起動する。
『はいはい、どうしました浩一さん、今日は早いですね』
「大変ですピューレさん、マーサさんにミッシェルさんの事がバレました!」
『何ですって!?ミッシェルさんは大丈夫ですか!?』
そこにミッシェルが顔を出す。
「あぁ、この通りぴんぴんしてるよ、それより、私はステータスをごまかせると言った。マーサは実際に私のごまかしているステータスを見ているからな、早急に魔族の冒険者にレフトへ移動するように言え」
『わかりました』
そして、ミッシェルは自分の通信水晶を起動する。
「お爺様、人間の国で冒険者をしている魔族たちの受け入れをお願いできますか?」
ミッシェルの通信水晶に骨のような人が映っている。
『おやまぁ!ミッシェルたんから連絡が来るなんて珍しいねぇ、いいよ、いいよ!ばんばん入れちゃってーーー、それでじぃじに大好きって』ぶち
無理矢理切ったな……と浩一は思った。
「レフトの魔族が協力してくれる。すぐに動け、マーサは教会に送ったんだ、すぐに冒険者の精密検査とか言い出すぞ、あとキジ村を潰される可能性がある。できるだけ助けろ。村人に罪はないからな、村長を断罪してでも助け出せ」
ピューレはすぐに察した。
『承知しました。すぐに動きますので』「待て、ドルーン国王に知らせを送った、ドルーンを経由しろ、ドルーンやルーミヤなら教会がない、捕まる可能性も低い」
『承知しました。ありがとうございます、すぐに、そのように手配します』
そう言ってピューレの通信は切れる。
そうしてミッシェルはすぐに言う。
「浩一、全員をライフボックスへ、浩一だけならドルーンまで2時間で着く」
浩一はすぐにライフボックスを開きみんなを入れる。みんなが入って入り口を閉めると浮遊感を感じた。
「え」
「浩一、舌噛むなよ」
ミッシェルは浩一を抱えたまま走りだしたのだった。
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「マーサ、一人で帰って来たと聞いたよ?何があったんだい?」
教皇が手を広げマーサを抱きしめ、慰めるように頭を撫で顔を見て言った。
「教皇猊下、ロト様は、いえ、ロトは勇者などではありませんでした。罪人ですよ!!あの赤子は!魔族を!魔族とわかっていたのに!私に教えず旅をして魔族を助ける手助けをしていたのです!!」
そんなマーサに教皇は厳しい顔で言う。
「どういうことですか、話を聞かせてください」
マーサはベルタに聞いたことも自分が一緒に過ごしていたミッシェルのことも全て話したのだった。
涙ながらに浩一を思い出した。
あの心優しい青年が魔族に毒されていることに気が付かず、あの場に置いてきてしまったことを悔やんだ。あんなに優しくて素晴らしい青年が魔族の毒牙に染まりきらないことを祈った。




