愛を貫くドワーフ
ロトにメロメロの二人は緊張感も何もなく、警戒心皆無で話してくれる。
「家族にドワーフがエルフの踊り子と結婚するなんてありえないって反対されて、でもリラと結婚したくて国から逃げて来たんだー」
その言葉にミッシェルが納得がいったという顔で言う。
「土の民で洞窟に住むドワーフと森の管理者で森に棲むエルフそれだけじゃなく、芸術のドワーフと舞踏のエルフじゃ違うしな、見た目も小さく、がっしりしたドワーフ、背が高くスラリとしたエルフ、この2種族が交わったとは聞いたことがない、それは反対されるだろうな」
ミッシェルがそう言うとドワーフは少し不機嫌そうに言う、
「そうなんだよ、エルフの踊り子なんてありえない!って言われて兄貴と大喧嘩して、わかってもらえないからリラと逃げて来たんだ。人間の国なら血が混じるのも気にならないだろ?」
その問いにマーサがうなる。
「まぁエルフと人間、ドワーフと人間は聞いたことがありますが、人間はドワーフとエルフの間のようなものなので混ざっても問題は無いと思いますが、エルフとドワーフは正反対ですからねぇ」
そんなマーサに頬を膨らませてドワーフは言う。
「そんなこと無い!同じ亜人だ!」
「種族としては正反対ですよ」
「それでも俺はリラと結ばれるんだ!」
「子供のわがままですね」
「なんだと!!」
ドワーフがマーサに文句を言おうとしたらエルフのリラがドワーフの腕をつかむ。
「やめて、ライオット、人とまでケンカしないで」
リラに止められ、ドワーフのライオットはシュンと落ち着く。
「エルフのかたはちゃんと状況をわかっているようですね」
「なんだと!!」
「ライオット!!」
「う」
マーサがそう不機嫌そうに言った言葉にライオットが噛みつこうとした時リラが止める。
「ごめんなさい、人間さん私は踊り子のリラ、彼は鍛冶師公爵のライオットです」
「鍛冶師公爵?」
浩一がそう疑問を口にすればリラが答える。
「ドワーフの国ドルーンでは技術者の腕が高い者ほど爵位を得ます、ライオットは国一番の鍛冶師でどんなものでもレジェンド級の物が作れる国王のお気に入りなのです」
「え!?そんな人が駆け落ちしちゃったの!?」
「リラとの関係を認めてもらえないのにあんな国にいれるか!!」
「思考が短絡的でしょ」
「お前さっきから喧嘩売ってるだろ!!」
「勝手に買わないでください」「ライオット!!」
がるるとでも唸るようにマーサを見るライオット、確かに今のはマーサも悪い、マーサは正論なら何でも言っていいと思っているところがある。
「今のはマーサさんも悪いですよ」
「浩一君!?」
「いくら正論でも言っちゃいけない時があるんですよ」
「なぜですか?正しい事なのですよ?」
「でも、それでライオットさんの気分を害してますよ」
「それは、そうですが、彼が悪いのですよ?」
「それでも、あんな言いかたをして怒らせるべきではないと思いますよ、
今は冷静に話を聞くのが先だと思います」
「それは!……そう……ですね……」
「はい、わかってくれてよかったです」
浩一がそう言うとライオットが調子に乗る。
「へっへー、怒られてやんのー!」
「ライオット!!!」
「はい!ごめんなさい!!」
リラの声にすぐ謝るライオット、素直な方ではあるのだろう、
1つため息をつきながら、浩一はリラに聞く。
「リラさんはもしかして駆け落ちに納得していないのでは?」
その浩一の言葉にリラは困ったように言う。
「私としては結婚するなら家族や友達に認められて結婚したいと言ったのですが」
「ダメだ!あいつらは頑固だから!」
「貴方もね、」
「うっ、」
ライオットはバツが悪そうな顔をしてむすっとする。
リラはそんなライオットを見てため息一つ。
「実は私も最初はありえないと、彼の事をあしらっていたのですが、彼の情熱と勤勉さに惹かれてお付き合いを始めたのですけど周りは大反対で、彼も家族と喧嘩が多くなりついには駆け落ちしようと言いだして、着の身着のまま飛び出して今に至るんです」
「必要な雑貨はどうしたんだ?」
ロトの問いにライオットは自慢げに言う。
「国を出て最初の町でそろえた、金はあるからな!!」
あー公爵かと全員が納得する。
ミッシェルが頷く、
「ドルーンは世界共通貨幣の生産元だからな、そこの公爵なら手に掴んだ金だけでも相当持って来れるだろうな」
「あぁ、金貨50枚だ!」
ちなみに金貨3枚で一般国民の1か月の生活費だ、
鉄貨10円
銅貨100円
銀貨1000円
金貨10000円
白金貨1000000円
これが世界共通通貨の価値、50万も持ち歩けばそりゃなんでも買えるだろう、だが危険すぎることでもある。
ミッシェルがライオットに問う。
「まさかそれ、街中で出してないよな」
「ん?普通に店で出したぞ」
「それ、店の前でか」
「あぁ、露天だったからな」
全員が天を仰ぎ見る。
「ん?なんだ?」
意外にリラもわかっていない様子。
「踊り子だというリラさんもピンと来ていないのは意外ですね」
そんなマーサの言葉にライオットが答える。
「リラは聖なる踊り子でルーミヤとドルーンの国交樹立祝いの代表踊り子だからな!ただの踊り子じゃないぞ!」
「あんたなんて人と駆け落ちしてるんですか!!」
思わずマーサが突っ込む、そして浩一が疑問を口にする。
「聖なる踊り子?」
その疑問にミッシェルは、ニヤニヤしながら言う。
「聖女は浄化ができることが特別な条件だ、だが傷を癒す、体を癒すということは光魔法を持っていればできる、その中でも、奇跡の癒しの力を持つ者がいる、それは歌だったり、踊りだったり、楽器だったり、絵だったりと、芸術の中に何らかの癒しを施すことができる者達がいる、例えば歌を聞けば傷が治る、絵を見れば病んだ心が癒されるなどなどね、そして聖なる踊り子、聖なる歌い手は広範囲に癒しを届ける事のできる聖女と同じくらい貴重な存在で、特に舞踏のエルフの中では貧民でも才能を開花させれば女神のように扱われるよ」
「つまりこの駆け落ちは公爵と聖女の駆け落ちに近いってことですか?」
「そういう事だな」
「せっかく国交樹立したのに戦争になりますよ!?」
「う、そこまでは考えてなかった………」
「だから私は帰ろうと言ったじゃない」
リラが頬を膨らませ可愛らしく怒る。
とんでもない駆け落ち、これはどうにかしないと、魔王を説得するだけではすまなくなりそうだ、浩一はとりあえずライオットを説得することにする。
「ライオットさん、ライオットさんは大切なリラさんを戦争の火種の花嫁にしたいんですか?」
「それは嫌だ!」
「きっとこのまま駆け落ちすればルーミヤとドルーンで戦争になり、周辺国にもその火種は広がるでしょう、そうして、二人の幸せな結婚を誰にも祝福されない、それどころか恨まれる結婚にし、リラさんを不幸にしたいと?」
「そんなの嫌だ!!」
「ですよね、ならドルーンに帰りましょう、僕たちも向かう途中なんです」
「でも、でも、」
ライオットは浩一の言葉の正当性に頭を抱え、帰るべきだという思いと、認めてくれない家族のもとに帰りたくないという思いが葛藤する。
そこでロトがライオットの手を取る。
「ライオット、俺は勇者だ、俺がお前の家族を説得しよう、大丈夫だ、きっと家族はお前達を認めてくれる。」
「そ、そうかなぁ、お前が言うと、そんな気がする」
浩一の説得よりもロトの魅了の方が効果があったようだ、浩一の説得に何の効果もなかったわけではないだろうがなんだか浩一は落ち込んだ。
「リラ!ごめん!俺が間違ってた!一緒に家族を説得しよう!」
「うん、頑張ろうね、ライオット」
そうして勇者パーティーに新しい仲間が加わったのだ。




