世界は表だけではない
浩一とアイリッシュの叫びは届かず、ミッシェルのステータスをマーサは見ている。
「ん?なんですか?浩一さん、アイリッシュさん」
ミッシェルのステータスを見ているのにマーサは何も言わない、そこで浩一は思い出す、ミッシェルのステータスは人間と書かれているのだった。
どんな方法を使っているかわからないがステータスをごまかしていたのだ。
アイリッシュは怪訝な顔をしていて浩一は耳打ちする。
「ミッシェルさんはステータスいじれるんだよ」
「あんたそれ、忘れてたの」
「は、はいぃ」
「ばか!」
コツっとアイリッシュは浩一を殴るのだった。
「アイリッシュさん、何かありましたか?」
「なんでもないです、浩一が馬鹿だっただけです」
「そうですか」
不思議がらないマーサにガクッと落ち込みながら浩一は一山越えて安心するのだった。
「やはり、浩一さんの料理はすごいですねぇステータス向上、身体疲労の回復、魔力の回復、料理1つでここまでの効果を出すなんて」
「あんた、許可してないのに勝手にステータス見ないでくれる?」
「ん?あぁすみません、そうですね、仲間と言えど浅はかでした。」
「まぁいいよ、仲間だしね」
ミッシェルがふっと笑って言うとマーサは腕を組んで言う。
「そうですね、最初は破廉恥なあなたを認められませんでしたが、今は仲間と認めています、貴方のおかげでここまで来れましたしね」
ふんとそっぽを向くマーサにミッシェルがニヤッと言う。
「それは嬉しいねぇ、これからもよろしく?むっつり僧侶」
「な!やっぱりあなたは嫌いです!!!」
どっとみんなが笑い、マーサがミッシェルに抗議する、
そんな楽しい時間は過ぎて、真面目な話になる。
「問題は街を経由するかどうかだな」
ミッシェルの言葉にロトが言う、
「いっそのこと街を避けてドルーンに行くか?」
「まぁ大回りになるが悪い選択ではないか」
ガイアの言葉にマーサが顔をしかめて言う。
「まったく、勇者パーティーのメンバー、それも聖獣使いや聖獣を誘拐しようなんて考えられませんよ!」
そんなマーサにガイアは言う。
「まぁ元聖騎士さんにはわからんだろうなぁ下々の者の中には一部どんなことをしてもお金を集めようとするやつがいるんだよ」
「なんですかそれは!お金の為に悪に手を染めるなんて最低ですね!」
そんなマーサの言葉にガイアは哀れむようにマーサを見る。
「悪に手を染めることを肯定するわけじゃないが、生きるために悪に染まらなきゃいけない事もあるんだよ、学ぶことができない環境で、助けてくれる人がいない環境で、環境が悪ければ、悪になるしかないこともある、みんながみんな恵まれてはいない、悪があるから正義があるんだよ、きれいなところで育った人にはわからないだろうがな」
ガイアの言葉でマーサは顔を真っ赤にする。
「私だって人並みに苦労しています!環境を理由にして悪に走るなんて意思が弱すぎます!」
「強い奴ばかりじゃない、弱い奴の方が多い、あんたは立派だが表しか見ていないようだな」
「何を!」「マーサ!!!」
ロトが叫ぶ、
「マーサ、お前は前聖女の事で裏があることを知っただろ」
「!!」
マーサは目を大きく開いて口をはくはくと動かし、すぐに悔しそうに顔を歪め、口をつぐんだ。
重い空気の中、浩一が口を開く。
「魔王をどうにかして、みんな平和になって貧富の差が少しでもなくなれば裏も表もいい人がいっぱいになるかもしれません、マーサさん、世界を平和にしましょうね!」
「浩一さん、やはりあなたはいいこだぁぁぁぁぁ!!こんな子を不当な扱いする前の世界の親は見る目がありませんよぉ!!!本当にいい子に育ってぇ!!!」
わーーーと浩一に抱き着いて泣くマーサを見てやれやれと呆れながらも、温かく見守る。
「浩一の両親は問題があったのか?」
ガイアがアイリッシュに聞くと、アイリッシュはビリーとガイアに大まかに話した。
「ひでぇ親がいるもんだな」
「浩一さんも、悲しい過去があるんですね」
泣いていたマーサをロトが回収して、慰めているのを横目に浩一はへらっと笑う。
「まぁ、俺の母さんが俺を生んで死んじゃったから仕返しできなかったのを俺にぶつけたのは仕方ないかなとは思うよ、父さんと奥様が俺を恨んでも賢哉が俺を庇ってくれてたからいいんだ」
にっこり笑う浩一を見てガイアは無言で頭を撫でビリーは抱きしめ、浩一は戸惑ったのだった。
とりあえず、今日は休むことになった。
「待ておらあああああ」
朝から穏やかでない声で起こされる、複数の男の怒号だ。
浩一達は急いでそこに向かった。
怒号を上げる男達を見つけ、その先にいる小さな少年と綺麗な女の子、特徴からドワーフとエルフに見える。
「へっへっへ、追い詰めたぞぉ亜人共ぉ」
「エルフは高く売れるんだよなぁ」
「安心しろぉドワーフも趣味の良いオッサンが居るからなぁ」
「離れるのが嫌なら、同時に売ってやるぞぉ、へっへっへ」
厭らしく笑う男達、怒りで飛び出しかけた浩一だが、マーサに止められる。
「むやみに飛び出してはいけません、あの2人の安全を確保できるようにしてからです」
浩一が二人を見ると、こそこそと、エルフとドワーフの後ろにロトが移動しているのが鑑定の目で見えた。
そして、にじり寄る男達と2人の前にぴょん!と飛び出すロト。
「「「「か、かわいいいい」」」」
「今です!」
いつの間にかそれぞれの男たちの後ろに移動していたメンバーで取り押さえる。
アイリッシュの魔法で木の蔓でぐるぐる巻きにされた男、ガイアに取り押さえられる男、ミッシェルに潰される男、マーサに気絶させられる男、ドワーフとエルフはロトの結界に守られている。
一瞬のことで2人は驚きながらロトを見る。
「2人とも怪我無いかぁ?」
ロトがそう言うと、2人はぱぁと顔を明るくし、ロトに抱き着く
「「かわいいいいいい」」
ロトは魅了を使っていないはずだが効いてしまうということは精神攻撃耐性A以下だろうか。
「お前達なんでここに居たんだ?しかもエルフとドワーフのカップルとは珍しいな」
ロトがそう言うと、ロトを撫でながらドワーフが言う、
「俺はリラとの婚約を家族に反対されたから駆け落ちしたんだぁ」
「「「駆け落ち!?」」」




