故郷を亡くした者達
テントに戻ると、マーサがロトの歯磨きをしていた。
「おや、遅かったですね、それで何の話だったんです?」
浩一は焦る、まさか擬人化の練習などとは言えない、だが、ミッシェルは堂々と言う。
「ビリーが軟弱すぎてムカついたから技かけてた!」
「え?」
浩一が驚いていると、アイリッシュが言う。
「あの技はカッコよかったですよぎちぎちってビリーも気合が入ったでしょ?」
「え?」
浩一は動揺するがビリーは顔を染めながら言う。
「はい、すごかったです」
「いや、ビリー君なんか違うよ」
「え!?」
浩一の言葉にビリーはまた顔を染めた。
「ビリー君に何をしたのです、この破廉恥シスター!!!」
「私は浩一しか興味ないよ」
「俺を巻き込まないで!!」
「純情な男の子たちをからかうんじゃありません!!」
マーサが怒鳴って、ミッシェルは、「はいはい」といなすのだった。
浩一が軽く食事を作り、ガイアとビリーは美味い美味いと食べていた。
「そういえばビリー君はずいぶん幼く見えますがおいくつですか?」
マスクを外したビリーにマーサが問う。
「あ、今年で10歳になります」
「そんな若くして旅に?」
マーサの問いにガイアは言う。
「俺達の村は魔族に壊滅させられてな、それからはなかなか居つける土地も無く、各所を旅してるんだ」
「あー」
マーサはガイアを見て微妙な顔をする。
「あーってなんだあーって、その顔なんだ」
ガイアの言葉にマーサはにへっと笑う。
「いえ、なにも」
「へーへーいつけねぇのは俺のせいだよ!がさつなんでなぁ!」
「私は何も言っていませんよー」
マーサって結構失礼だよな、と浩一は思う。
ガイアはマーサの言葉を聞いて睨みながらもため息をつき、座る。
「俺はガサツでこんなのだから、よくいざこざに巻き込まれていた。でもビリーの父親はそんな俺の味方になってくれて、仕事のできねぇ俺に剣と仕事を教えてくれた。」
****ある小さな村****
「またかガイア!なんで皿1つも洗えねぇんだ!」
「うせぇ!俺に皿なんか洗わせんな!」
そのガイアの声に男が笑う。
「そうだぜ、大将、もうガイアに店を継がせるのは諦めた方がいいな!」
「ウィル!」
ガイアは喜んでウィルに飛びついた。
「そうは言ってもなぁウィル、うちにはこいつしかいないからなぁ」
「俺は冒険者になるんだ!!」
「お前に冒険者なんかできるか!わがままガイア!」
「はは!大将!他の後継者探さなきゃな!ガイアを借りて行くよ」
「ウィル!」
まだ若いガイアをウィルは笑って連れて行った。
ウィルとの剣の稽古、それがガイアにとって一番楽しい時間だ
村唯一の食堂を継がせようと雑用を押し付けてくる父から逃げ、魔族のウィルと楽しむ。
村人もみんなウィルは魔族だが大好きだ、昔、ウィルが村長を魔物から助けその後、魔族襲撃から村を守ってくれた。だから自分達は魔族を自分達で倒したと言って、ウィルを教会から隠していた。
ガイアが40歳になる頃にウィルは村娘と結婚した。
そしてその間に人ではない子供が生まれた、それでもみんな受け入れた。
ウィル一家は小さな村でみんなに愛されて暮らした。
でもウィルの子供ビリーが5歳の時、また、魔族に村が襲われ何とか勝利したが、ウィルは命を落とした。
「ウィル!ウィル!死ぬなよ!ウィル!」
「ガ………い……ぁ……びりぃ……を、たのっ………む………」
「ウィルうううううう!!!!!」
ウィルのおかげで村は半壊ですんだ、だが、ウィルを失い、守りを失った。
だが冒険者ギルドや国に護衛を頼めばビリーが殺されてしまう。ビリーはもうこの過疎地の村の唯一の子供で、皆に愛されていた。けれど背に腹は代えられない、ビリーに深く帽子をかぶせ、マスクをさせて生活させ、冒険者ギルドに手紙を送った。だが、その前にまた魔族の襲撃にあった。
「見つけたぞ、忌まわしき混血」
一番まともそうな魔人がビリーに襲い掛かった。
「ビリー!!」
ガイアは応戦していた魔族を切り伏せ、ビリーを助けに行くが間に合わない、
だが、その魔人にガイアの父がしがみついた。
「なんだお前!」
「ガイア!ビリーを守れ!ビリーと逃げろ!!」
「何やってんだよおやじ!」
「離せこのじじぃ!」
大将は絶対に魔族を離さない。
「立派な冒険者になれよ」
「おやじ?」
「ファイア!!!!!!」
「うわああああああああああああああああああああ」
炎は大将もろとも魔族を燃やした。
「おやじいいいいいいいい!!!!!!!!」
すべてが終わった。ガイア一人では村は守れず、壊滅、生き残ったのはビリーとガイア、そして手紙を届けに行っていた青年だけだった。
「母さん!父さん!!」
青年は変わり果てた親に泣いてすがっていた。
「ま、ま?う、うわあああああああ」
ビリーも母親の亡骸に泣いた。
ガイアは墓を掘った。一緒に悪戯した幼馴染、優しかった農家の爺さん、ウィルと逃げる時に笑って見守ってくれていた村人たち、気になっていた女の子、そして、切り刻まれた母親、魔族と一緒に燃え尽きた………父親。
ガイアと青年、ビリーは協力して村人たちの墓を作った。
「俺は冒険者ギルドと教会に報告に行くよ」
「そうか」
「悪いけど、俺、ビリーと行動できねぇ」
「おい、」
「わかってるよ、ビリーもウィルおじさんもいい魔族だ、けど割り切れねぇんだ、お前だって本当はそうだろ!」
「お、俺は……」
「ビリーのせいでお前のおやじ死んだんだぞ」
「!!……で、も、ビリーはウィルの………」
「まぁいいわ、お前の好きにしろよ、俺は隣町に住む、けどビリーと行動すればどこにも住めねぇぞ」
「わかってるよ」
「じゃぁな、お前達が平和に暮らせるのを願うよ」
そう言って青年は隣町に向かって行った。
そうして、地図にものらない小さな村は人知れず消えた。
「元冒険者で村で一番強い男だったビリーの父親が死んで、その後に来た魔族の襲撃を何とか俺一人で応戦したが5歳のビリーしか守れなかった。親父はビリーを襲った魔族を倒すために全力の火魔法で一緒に燃えて死んだ。それから俺達は根無し草さ、立派な冒険者になれって言うおやじの言葉を実現させるためにな!」
ニカッと笑うガイアにマーサとロトはダバーと涙を流す。
「が、頑張って来たんだなぁガイアぁ」
「ガイアさんもビリー君も辛かったですねぇ」
ガイアが口で話していた内容と少し違うビリーの父親とビリーがちゃんと魔族の姿をしている映像が見えていた。
だがそれはマーサには見えていなかったらしい。幻覚のスキルでも持っているのだろう。
あまりに凄惨で悲しい映像に浩一も涙をぼろぼろと流す。
「なんだお前ら、泣いてくれんのか?ありがとうな!村のみんなも浮かばれるわ!」
がはははと笑うガイアに10歳のビリーはめそめそと泣いている、そしてミッシェルが言った。
「魔族襲撃、どうにかしないとね」
「いい事言いますね破廉恥シスター、必ず魔王を倒しましょうね!ロト様!」
「おうよ!魔王を何とかするんだぞ!」
盛り上がるマーサとロトに浩一は苦笑いをした。
混血のビリーが居る事を知っていた魔族、魔族の襲撃に来ていたまともな魔族はキジ村の人か、または魔国のヤタガラスから送られたのかどうなのか…とりあえず教会に魔族を囲っている事がバレていたのだろう、だから潰された。魔族が友好的と知られたら困るから。
この不幸を食い止めなければならない。教会を止めるために魔王の協力を得る、それが浩一の仕事だ。
果たしてそれができるのか、浩一は不安を抱えながらキャンプの寝袋で寝たのだった。




