修行
村を出ると深い森に入る。浩一はというと
「こ、れって!全員乗る意味!ありますかぁ!?」
「ききぃ!!」
ミッシェル、アイリッシュ、マーサ、ロト、カナ、リアを乗せた荷馬車をオノケのケンと一緒に引いている
「きっきき!」「きききー!」
オノケのダイとユウは、荷馬車には乗っていないが荷物を持って、他人事のように応援している。
「手っ取り早く体力をつけるなら旅しながら鍛えるのがいいだろう」
ミッシェルが笑いながら言うとマーサが時計を見る。
「あと10分ですよ、頑張って」
「頑張れー!浩一―!」
マーサの言葉にロトが声を出し、アイリッシュが荷馬車を見て言う。
「魔獣に引かせるのかと思ったら浩一に引かせるなんてね、大丈夫?虐待になってない?」
アイリッシュの言葉に浩一はニカッと笑う。
「いや!俺とケンのためってわかるし!大丈夫!」
「きーーー!!」
そう言って森の道を必死に荷馬車を引く一人と一匹、ユウとダイが先回りして石やら枝やらの障害物をどけてくれるのはありがたい。
「浩一様ぁん、頑張ってくださいませ!ねぎまを食べますか!?力が出ますわよ!!」
「生ネギはヤダ」
「そんな!!新鮮なのにぃ!!」
「お前こっち来てから何日経ってんだよ」
「私は毎日新鮮ですわぁん」
必死に叫ぶねぎま、そういえば神官も力が出るとか言ってたか、浩一はねぎまを出してがりっと一口食べる。
「お、おおぉ!なんか力出る!!おりゃぁぁ!」
引く力が少し上がり、さっきよりも早い、
「へぇ、ネギも使えるじゃないか」
「私はねぎまですわぁん!!」
休憩を入れながらの約2時間の移動、ねぎまでパワーアップしたがやっとトレーニング時間が終わってへとへとで座り込むケンと浩一、
「うーん、休むにはまだ先だねぇ」
「え!?」「き!?」
ミッシェルの言葉に浩一とケンは顔を青くさせる。
もう歩けなそうな浩一とケンを見てアイリッシュがミッシェルに言う。
「歩けなそうなのが2人いますよ、もうここでいいのでは?」
その言葉にミッシェルはニカッと笑う。
「お前達はまた荷馬車に乗りな、ダイ!ユウ!浩一とケンを荷馬車に乗せな!お前達も乗るんだよ!」
ミッシェルに言われ、アイリッシュは首をかしげる。
「魔獣も乗せたら引く人が居ませんよ?」
「私が引くんだよ」
「一人でですか!?それは無理ですよ!」
アイリッシュの言葉にアイリッシュの頭をなでて言う。
「大丈夫だから、乗りな」
アイリッシュは納得できない顔で荷馬車に乗る、マーサが不機嫌に言う。
「もうすぐ日が落ちますよ、大丈夫なんですか?」
荷馬車から「大丈夫か?」という不安の空気が流れているが、ミッシェルは荷馬車の持ち手を持ち上げる。
「お前ら舌を噛まないように口塞いでしっかり座っとけよ!」
「「「え?」」」
全員がきょとんとしていたら、ミッシェルは姿勢を低くして一歩踏み出した。その力強さで地面が少し抉れ、荷馬車に乗っている人たちに負荷がかかる、風のように荷馬車を引きながら走りだした。
「ここがいいな、開けていてテントも張りやすい」
そう言ってミッシェルがやっと止まり、気分の悪い者達は荷馬車でへばっている。
「ミッシェルさんすごいぜ!めちゃくちゃ楽しかった!」
ロトは元気で、キラキラとミッシェルを見ている。
さすが元勇者、三歳なのに安定しない荷馬車の高速移動でもどうということも無いようだ。
車と同じくらいのスピード出ていたと思うが、車と違って乗り心地は最悪、酔ってしまうのは仕方がないだろう。
「浩一様ぁぁぁぁぁぁぁぁん!!お気をたしかにぃぃん!!」
「なんだ、浩一本当に弱いね、それにマーサも頼りないねぇ聖騎士はそんなもんかい?」
ミッシェルがそう言うとマーサが吠える。
「うるさいですよ、馬車ならいいですが荷馬車なんて気分悪くなって当然でしょう!」
「ロトは平気そうだぞ」「俺は平気だぞ?」
「ロト様は勇者だから……」
力なく言うマーサ、本当に気持ちが悪いらしい、仕方ない、あの揺れ、そして体に圧がかかり飛ばされないように必死でしがみついたのだから。
「ききぃ?」「きぃぃ」「き!き!」
オノケ達も平気そうだ、浩一がアイテムボックスを開くと、テントを取り出して準備してくれているくらいだ。
この広場なら危険もなさそうだと判断し、カナ、リア、スライムたちも出す、バブスライムの清が汗を食べてくれていくらかスッキリした。
カナとリアも心配そうに見て浩一に寄り添っている。
アニマルセラピーならずモンスターセラピーで癒されたのだった。
少し休んで、ご飯の準備をする。
鍋でご飯を炊いて、その間に野菜や薬草を切る、ウ・コッケイの胸肉を細切れにしていく、
ロトの分は野菜も肉も、さらに細かくする、肉を細かくしていたらご飯が炊ける。
そしたらボウルに2日分の卵を入れる。卵はカナも今朝産んでくれたので12個だ。それを割って混ぜて、塩と砂糖で少し味付け、次に肉を火にかけ、肉が色づいたら野菜や薬草を入れて少し炒め、それを別の皿に一回移し、中華鍋の様なフライパンに卵を入れて、少し火が通ったら米を入れて、具材を入れ、味付けをして混ぜる、チャーハンの出来上がりだ。
そして屋敷でウ・コッケイの骨を煮出して作った、鶏ガラスープの素と醤油を使って簡単に中華スープを作り、
今日の夕ご飯は完成だ、
この世界では、あまり元の世界と食事が変わらず、調味料もある程度揃っていて助かる。
「夕飯できたよー」
それぞれ好きなことをしていたメンバーはその言葉で集まってきた、そしてロトのいただきますでみんなで食事だ。
「やっぱり浩一の料理はいいねぇ、力が湧くよ」
「このスープも初めて食べる味ですがとても美味しいですよ浩一さん」
「薬草にこんな組み合わせがあったなんて」
「美味い!美味いぞ浩一ぃ!」
「浩一様ですもの、当たり前ですわぁん!」
「「「ききぃ!」」」「ピピ!」「ぴぴゅるる」
オノケたちは同じメニュー、カナとリアは鳥の餌を美味しく食べている。
温志には火の玉をぽんぽんと出して与えながら、浩一は暖かな食事のひと時を楽しむ。
食事が終わったら浩一とミッシェル、アイリッシュは訓練をするからと少し森の奥に入る。
ロトがマーサを野営地での筋トレに付き合ってくれと言って引き留め、二手に分かれる。
連絡会かな?と思って付いて行けば、
「やっぱり居たか」
それはバシカの群、バシカは、ウマのようなシカだが、頭の悪いのと頭のいいのとの差が激しく、群れで動いている時、馬鹿と賢い者がペアで動くが、馬鹿はペアをよく忘れるし、逃げて走っているのに、それを忘れて走り続けようとするので、賢い者のストレスが凄い、馬鹿のバシカの肉は柔らかく豊潤で、賢いバシカは弾力があり食べ応えがあるというモンスターだ。
「浩一、バシカを二頭狩ってみようか、ペアで狩ってやらないと可哀想だからね、1ペアを離して、私とアイリッシュで追いやってやるからやってみな。」
「わ、わかりました。」
浩一は緊張して言うと、ミッシェルはニヤッと笑う。
「よし、行くよアイリッシュ」
「はい!浩一、しっかりね!」
そう言って二人は飛び出し、左右から群を追い詰める。すると、一頭のバシカが飛び出し、それにもう一頭が付いて行く、浩一はさっとその前に出て、ミッシェルとアイリッシュは逃げ場がないように左右に広がり、ノームウォールで壁を作り逃げられないようにしている、逃げられるのは浩一の方だけ、だが浩一は鍛えたおかげで結構俊敏に動け、何とかバシカを逃がさないようにしている。
それでバシカの賢い方が戦わなければいけないと思ったようで、浩一に角を向けて走って来た。
「今ですわ!」
ねぎまの声で浩一はねぎまで頭を強く殴った。
バシカはその一撃でフラフラと後ろに下がり、馬鹿な方のバシカを守るように立つ、浩一はごめん、と思いながらサンダースピアを放つと電撃の槍が2匹を麻痺させ気絶させた。
「上手いじゃないか浩一、訓練の成果が出たね」
「なかなかやるじゃない」
「浩一様なら当たり前ですわぁ!」
3人に褒められ、照れながらもバシカを見て、浩一は手を合わせる。せめて美味しく食べよう、それが供養になるだろう、そう思って浩一はバシカの血抜きをミッシェルと一緒に、2匹同時に行ってアイテムボックスに入れる。動画では見たことあったが実際の血抜きは大変だった。
その後はミッシェルとアイリッシュ対浩一の戦闘訓練を行い、
訓練が終わったら、ピューレとの通信水晶での話し合いになった。
『ヤタガラスはどうやら1か所ではないようです、A支部やB支部などの言葉を聞いた人たちがいるようなのです、』
「ヤタガラス殲滅はなかなか骨が折れそうだねぇ」
ミッシェルの言葉にアイリッシュが悩む
「大本の教会の不正の証拠がつかめればいいんですが・・・」
そこでピューレが言う。
『今、フォーラさんが教会に潜入しています、フォーラさんは人型化して聖職者として教会に入っています。これで何かわかればいいんですが……』
「教皇に近づけるかどうかだな」
そうミッシェルが言ってアイリッシュも頷く。
「魔王攻略までに教皇に近づいて欲しいですね」
うーんと悩む3人、だが浩一は教会の事より、魔王攻略という言葉に顔を青くする。
本当に自分は魔王を満足させる戦いができるのだろうか、今日やっとバシカを倒した。
ねぎまのサポートで、
ミッシェルとアイリッシュの戦闘訓練で、今日もボロボロ、ほぼミッシェルとの戦闘で、アイリッシュは所々で魔法のトラップをしていただけ、だがそれを避けるのも大変だった。
そこに何かの雄叫びが聞こえる。
ものすごい轟音を立て、それはこちらに向かってくる。それは瘴気に侵され黒く瘴気を纏ったバシカだった。
「ケーーーーーーーン!!」
叫び声をあげて走ってくるバシカ、その後ろからボロボロだが、何とかそのバシカに追いつこうとしているバシカがいる、
「瘴気化されたバシカか、あの泣いているのは賢い方か」
「可哀想に、相棒を失うことになるなんて、」
瘴気は聖女にしか浄化できない、殺すしかない、そう思った時だ、浩一はアリッサに貰った剣型のネックレスを思い出す。
そしてミッシェルが手を構えた時、浩一は走り出した。
「浩一!?」
「何してんのよ馬鹿!!」
浩一はネックレスの剣をバシカに向け叫ぶ。
「悪しき者を浄化せよ!ヒーレル!」
すると、剣は光り、その光がバシカに伸びる。バシカは光に包まれ、黒い靄は消え、頭の悪いバシカは倒れて気を失う、頭のいいバシカは慌てて頭の悪いバシカに近づき心配そうに顔を近づける。
やはりだめかと思った時、倒れたバシカからぐーーーーーと聞こえた。
いびきをかき出したバシカを見て、頭のいいバシカは、足で頭を軽く小突いて安心した顔をする。
そして、浩一達に頭を下げ、倒れているバシカを今度は強く殴れば飛び起きて、一緒に森の奥に走って行ったのだった。
「驚いたね、浩一は浄化もできたのかい」
「それ、アリッサに貰ったアーティファクトよね、魔力強化のアーティファクトだと思ってたけど浄化の力が?」
『浩一さんには浄化の力もあるですって!?もしかして狂化の治療は聖力とテイマーの力が混ざった結果なのでしょうか……』
それぞれに色々言っている。
浩一は頭をかきながら言う。
「俺もわからないんです、アリッサが俺には浄化の力があるから、このアクセサリー使えば、その力が発動するって言われたんです」
頭を抱えるアイリッシュ
「これはマーサさんに見つかったら大変な事になりますね」
ミッシェルは考えるポーズで浩一をじっくり見る。
「浩一は一度詳細鑑定をした方がいいね、ギルドじゃ隠れスキルや聖力はステータスに出ないからね」
ミッシェルがそう言うと、アイリッシュがまだ頭を抱えながら言う。
「聖力鑑定なんて、神殿か教会か神聖国家ルーミヤでしかできませんよ……普通、聖力鑑定は女性にしかしません、男が聖力を持っているなんて初めて聞きましたよ……」
『浩一さんは転移特典いっぱい貰っていますねぇ、あの魔力は聖力も混ざっているという事ですか、それは盲点でした、キララちゃんがアリッサさんの浄化じゃ、浄化できなかったので』
全員の話を聞き、浄化の力の問題に気が付いた浩一。
「俺やばい?」
「「『やばい』」」
みんなの言葉に浩一は冷や汗をかくのだった。




