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聖女屋敷


「ロトだ、ロト、ロトをだせえええええええええ」


うつろな目で病的なまでにロトを求める魔族達、

その数10人、少ないようだが、小さな村、戦える者も少なく平和な村で、1体に対して高位騎士かSランク冒険者でないと戦えない魔族の襲撃、そんな物が来ては逃げ惑うしかないだろう、だが、教会の無いこの平和の村では普段から何かがあったら、ハンベルン邸に行く事となっている。

俊足の少年は誰よりも早くハンベルン邸にこの村唯一の希望、ダニエルを呼びに行くことが仕事だ。

そして、今、ハンベルン邸には勇者パーティー、魔獣達が求めるロトが居るのだ。


冷静に逃げていく村の住人、怪我人は出たが、立ち向かわず戦わない、住民が襲われたら隙をついて解放して逃げるを守っている。

ロト達はそんな村人の中を現場に向かうのだが、「ロト君ファイト!聖女屋敷を守ってね!」「頼むよ勇者!」「頑張ってロトくぅん!」「ロト君ならできる!うわっと!」


何とも緊張感のない逃亡だ、最後の人は怪我を抑えながらの移動、気を付けて欲しいものだ。

それより聖女屋敷とは?それに魔族に対して本当に恐怖心がないし、魔族からの逃げ方もわかっているようだ、まさか、村全体が教会の事を知っている?


ただ団子と言う薬を求めるだけの魔族達、現場に到着すると、

逃げ遅れた村人が、団子を投げている、それに魔族はつられている。

うん、これはみんな知ってるな、今夜あたりでもダニエルさんに説明していただこう。

さて問題は傷つけずにどうやって治療をするか、マーサはアリッサと村人の護衛という事で置いて来た。

浩一とアイリッシュが治療してミッシェルの移転でカラバッシュ支部に送る。そこからは諜報部隊のフォーラも移転が使えるようなので事情説明後、諜報員を育てる隠れ里近くに作られた村に送るらしい。

と、浩一はそう考えていたのに、ミッシェルが真っ先に飛び出して思いっきり魔人を蹴って気絶、というか重症患者だ。


ミッシェルは浩一に言う。


「瀕死でもアイリッシュがいる!遠慮なくやっちゃいな浩一!」


そう言ってミッシェルはまた一人動かせなくする、ダニエル、ロトもだ、

優秀な回復薬が居るからと言っていいのだろうか?とりあえず人を集めよう。


「オノケ!倒れている魔族の人達を集めるんだ!」


「「「キキ!」」」


「私はオノケ達が運んで来た魔族達を治療するわ」


「その前に僕が狂化を治療するよ」


「えぇお願い」


やっぱりアイリッシュも知ってるのかぁと思った浩一、ならばピューレに連絡しても問題ないだろう。


「ピューレさん」


腕に付けた水晶でピューレを呼ぶと部下のサラ・レーベルが現れる。


「ひゃい」


モンスターとしか話せないというサラか、まぁ魔族を受け入れてもらうだけだしいいかと思う。


「狂化した魔族が現れました。そちらに転送します」


「ふぁい!おにゃがいします」


噛み噛みだ、頑張ってもらいたいものである。獣人のフォーラとは普通に話せるようなので人に近くない見た目の魔族なら話せるかなぁと思うのだ。

10人の魔族は最強三人のおかげで瞬殺だった。

そしてケン、ユウ、ダイはえっほえっほと魔族達を浩一達の前に運ぶ。

浩一が狂化の治療をして、アイリッシュが傷を治療する、ミッシェルが魔族を転送するという作業を行い、狂化の解けた魔族達への説明はフォーラにお任せする。


そして浩一はダニエルに聞く。


「アイリッシュもだけど、この村の人達ってもしかしてヤタガラスの事知ってるんですか?」


ダニエルは「あぁ」と何か思い出したように言う。


「そうでした。浩一さんは何も知らないのですね、まず前提として、聖女とはどんなものかわかりますか?」


「えーと、癒しの力を持った特別な存在?」


「そうですね、ですが魔力があれば傷を癒したり瀕死でも魔法で回復できます」


「え、じゃぁ聖女って……」


「聖女は瘴気の浄化ができる唯一の人なんですよ」


「瘴気ですか?」


はい、とダニエルは頷く。


「魔力と言うのは、生き物の源です、枯渇すれば瀕死になる。ですが多すぎれば瘴気となり魔力暴走を起こし、死に至らしめます」


「少なすぎても多すぎてもダメってことですね」


「そうです、ですがそれは生き物に限らず。場所や物にも関係します、魔力が多くなりすぎた場所は瘴気を起こし、狂暴な魔物を生み出し、草木を枯らし、死の地にしてしまいます、けれど魔力を消す魔法はありません、魔力を減らし正常な状態に浄化できるのは聖女だけなんです」


「なるほど、そうなんですね、」


「そしてこの村は別名聖女村、聖女信仰の村で現在ハンベルン館となっているあの屋敷は聖女屋敷と言って聖女が消えると枯れ、聖女が帰ってくると生き返るそんな屋敷なのです元々は2千年前に当時の聖女が世界の危機を救った時に神が授けた屋敷だと言います。

本来聖女が現れた場合にはこの村に連れて来るのが慣例です、ですが、前聖女は教会が奪って行きました。だからこそこの村には教会がありません、村人が追い出しましたので、ここの村人はすごいですよぉ!教会壊して農地にしましたからね」


それは激しい村人だ。ん?


「それって教会に目を付けられたんじゃ……」


それを聞いてアイリッシュが答える。


「そうよ、だからこの村は魔族の襲撃が増えて、戦闘系の村人は毎回相打ち、ダニエル様が来るまでは魔族達に村を半壊させられていた。でも魔族は4日も暴れれば死ぬのこれを不思議に思ってギルドに報告していたらしくて、カラバッシュギルドの人に依頼して冒険者を配属してもらっていたりしていたわ、教会は襲撃のたびに、死体を回収だけしに来ては、助けを求めるように言って来たけど、教会には絶対に助けを求めなかったの」


なるほどと浩一は理解した。


「教会は教会を追い出したことを間違いだったと思わせるために魔族を送ってきているのか」


それにダニエルがため息を吐く、


「前の聖女が死にアリッサが聖女になった時、ハンベルン家はすぐにメンヒルにアリッサを連れてきました。その道中で私達は出会い、そのまま私はアリッサの心の美しさを守るため同行しました。

教会はエルフを遠ざけていますからね、500年前までは教皇はエルフが選んでいたのですが、教会がエルフの庇護下から抜けて、神の子である我らも亜人だと言って勝手に動くようになり教皇も勝手に決めるようになったのです、なので教会内でも過激派は我らを否定し、マーサさんみたいな温厚派はエルフを受け入れてるんですけどね、教会としてはもう命令を聞きたくないからかかわるなって態度なんです。だから私がこの村を拠点にすることで教会は手が出せなくなったんですけどね、」


なるほど、亜人を認めないという教会の教理的にマーサがエルフのダニエルを受け入れているのが意外だったが神の子がエルフと言われているなら何となく理解できるし、教会も一枚岩ではないのかもしれない、


「それで、村人の人にヤタガラスの事を共有してるんですか?」


浩一の問いにダニエルは、


「そうですね、詳しい事は話していませんが、襲撃してくる魔族が病気的な動きであることは度重なる襲撃で判明していました。意識がハッキリしている者が少なく、そこをピューレさんと連携して研究しており、それは村人も知っています、そして詳しい事は話していませんが、草団子を投げれば興味をそらせることを言っています、研究の結果だと言って保護した方たちの事は言っていません、どこから情報が漏れるかわかりませんからね」


なるほど、度々襲撃させる教会も詰めが甘い気がするが……


「ですが、魔族の意識がハッキリしてないとわかってからは襲撃は無かったんですけどね、聖女の村にロト君が居ては都合が悪いという事でしょうか」


ロト、だけだろうか、教会の英雄マーサが聖女の事実を知り、教会に不安を持つこれが怖いのではないのだろうか、あのテイマーギルドでの事件は教会に情報が行っているはずだ、だから急いで王都カラバッシュを出て、メンヒルに来たのだ、マーサは教会でも強い影響力を持っている?と浩一はロトにメロメロなマーサを思い出して少し腑に落ちない顔をしながらもダニエルに言ってみる。


「ロトと言うより、マーサさんに教会の裏を知られたくないのでは?」


浩一の言葉にダニエルとアイリッシュは、はっと気がつく。


「マーサ僧侶はヤンカル王国と魔国との戦争の英雄、教会内ではかなりの発言力があるわ」


「マーサ僧侶が教会に不信感を持つと教会にも不利益が被るという事ですか」


マーサはそんなにすごい人だったのかと浩一は驚く、聖騎士で優秀なだけかと思っていた。

そんなすごい人をロトに付け教会の力を強くするのが目的だったのに、なぜか教会にとって悪い方に向かってしまう、だから自分達に都合の悪いメンヒルに来ないようにキジ村から刺客を送って来た。

まさか先日のドラゴン……


「そういえば、魔国に教会の協力者が居たんでしたね」


ダニエルの言葉にアイリッシュが驚く。


「そうなんですか!?じゃあこの前のドラゴンも……」


「この辺にドラゴンなんて現れないからね、その可能性が高いね。」


これはこの平和な村には居れなくなったぞと浩一は思い、アイリッシュもダニエルも思った。


「これはすぐに旅立った方がよさそうじゃないかい?」


ミッシェルが最後の魔族を送って、合流した。


「まったく、教会はどこまで卑劣なのか」


ロトがやれやれと首を振りながら戻って来た。


「魔族はもういないみたいだ、早速屋敷に帰って、出発の準備をした方がいいだろうな」


ロトの言葉に全員頷き、急いで屋敷に戻った。


少し時は戻り村人が避難してくるハンベルン邸、もとい、聖女屋敷、マーサは玄関前で、避難してくる村人たちを家に誘導している。


ダニエルへの信頼からか、村人に緊張感はない、今はダニエルだけじゃない、ロトもアイリッシュもミッシェルもいる、後は浩一の従魔のオノケも、浩一は未だに頼りないが従魔は強い、だから連れていかれ、腕の立つ自分が護衛に残されたのだと理解したい、なぜ自分だけ残されたのかと思うのだが、これらの理由があるからだと納得するしかないと思いながら最後の怪我をしている村人を屋敷の奥に連れて行くと、アリッサが一人一人に声をかけて治療をしている。

その姿は確かに聖女だ、聖女の本来の仕事は瘴気と化した土地や人、生き物の浄化、それは本来教会が依頼され、教会が聖女に依頼し、聖女が派遣される。だが今は瘴気の依頼は直接メンヒルに依頼が来る。

瘴気化は問題だが滅多に起こる事でもない、魔力が濃くなりすぎないように、人間なら幼い頃から魔法を学ばせ、遊びの中にも魔法を取り入れ、魔力の放出をさせる、場所なら環境魔法を使って薄くするなどの対策をしている。


そのおかげで瘴気の発生は少ない、それでも、発生することがあるから聖女は重要なのだ、

聖女は魔力の他に精霊魔法も使える、魔力と違う癒しの力は傷だけでなく病も癒すだからこそ教会は聖女が欲しいのだ、だが聖女とは尊く、偉大な存在そんな存在を大事にしないなんてことがあるだろうか。


教会に居るのは聖女村に依頼を出すより教会に居た方がすぐに対応できるし、こんなのんびり平和で弱い村より、教会の方が聖騎士も居て安全だ、それなのにアリッサは教会を拒否する。


教会が前聖女を酷く扱ったからだという、確かに前聖女まで聖女はメンヒルに居た。

だが聖女の安全をより確保するため、恵茉様はメンヒルに送らず、教会にご案内したのだ、尊き聖女を守るために、そんな聖女を教会が酷使していた?

確かに聖女に不遜な態度をとる一部の聖騎士はいた。そういうやつには自分が注意していた。

だが恵茉様はいつも柔らかな優しい笑顔を湛えていた。

いつも忙しそうにしていたが、中庭でくつろがれている時に、声をかけると、嬉しそうに笑ってくれていた。


確かにお疲れの様子もうかがえた。晩年痩せているようにも見えた。今思い返せば、恵茉様の大事にされていない証しが見えていた気がする、それなのに自分は気がつかなかった。

それがどれほど悔しいか。


マーサは聖女屋敷に着いてから読んだ恵茉の日記を思い出す。


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