↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/54

旅に苦労アリ

話もそこそこに、浩一達はハンベルン伯爵家に行った。


そして、ハンベルン家の裏庭から、小さな民家に行きそこから馬車に乗って隣町の民宿で一晩を過ごし、夜も明けぬ暗いうちに民宿を出て少しぼろぼろの馬車に乗った。御者はマーサでロトが甘えて一緒に馬の手綱を握っている。


「見た目はぼろかったが中は後宮馬車並みに乗り心地がいいじゃないか」


馬車には防音魔法がかかっている。アリッサと家令とミッシェルと浩一が馬車に乗っている。

ミッシェルの言葉に家令がクスリと笑う。


「流石は僧侶ゴーシュの弟子、違いの分かる方だ」


そんな家令にミッシェルは観察するような目で見てからニヤッと笑う。


「珍しいね、人間を大事にするエルフなんて」


「え、エルフ?」


浩一が驚いていれば、家令はおろしていた髪を結ぶと隠れていた長い耳が出て来る。


「隠し事を暴くなんて酷いですね、貴方もただの人ではないでしょうに」


え、っと驚きミッシェルを見ると、ミッシェルは頭の横で指を振ると、ヤギの様な角と三角耳が現れる。

浩一は驚き目を見開くと、ミッシェルは笑う、


「いい顔だよ浩一、もう少し黙っときたかったんだがな、私は純血の人間ではないよ」


「ほーう、いい言いかたですね」


感心する家令とミッシェルの真の姿に驚きどう反応すればいいかわからず二人を何度も見比べる、亜人を許さない、魔人や魔族はもってのほかというこの国でエルフと魔族が一緒に居るのだ。

それだけでなく浩一は魔力などない異世界から来た人間、明らかに獣人なフォーラも驚いたが、人の見た目で明らかに人でない特徴があるとそれに驚いてしまうのだが、その人と違う異質なところが、さらに二人の魅力を引き立てている。



そういやギルド総帥も魔族だったか、彼も美しい顔だった。

人ならざる者であるからなのか何なのか、だが目の前にいるアリッサも人でありながら美しい、それは心が美しいからか、そう考えるとこの美しい人たちの中に不細工とは思っていないが、無個性の美しいわけでもない平凡な自分がいる事が悪い事の様に思えてしまいとても居心地が悪い。


「浩一は自分に自信がないねぇ、私には魅力的に見えるよ」


なぜか自分の思っていることを言い当てられ浩一は顔を真っ赤にして小さくなる。


「ふふ、浩一さんはかわいらしい方ですのね」

「にゃー」


アリッサは優しい笑顔で鈴の音の様に美しい笑い声で楽しそうにしている。その膝の上でキララがのーんびりと丸まって面白がるように声をあげる。

本当に清らかで美しい人だ、聖女と言われて納得できる美しさだ。その心の美しさは膝に居るキララがクリスタルフラワーを咲かせていることで顕されている。

家令の人もくすくすと笑う。


「その魔力も納得できる初心(うぶ)さですね」


「魔力ですか?」


浩一がそう言うと家令はにっこりと笑う。


「私はダニエル・カミール、エルフの国、神聖国家ルミエール国の英雄騎士です」


ダニエルの発言でミッシェルが驚いた顔をする。


「あのエルフ国宝が人間の使用人をしてるのかい?」


「エルフ国宝?」


浩一の疑問にアリッサが答える。


「ダニエル先生は魔王の守り龍と言われるエアドラゴンと引き分けてその時代の魔王に認められ、エルフの国との国交を結んだ立役者なのです、エアドラゴンは1000レベル以上と言われていますわ」


「1000レベル以上!?」


そんな存在と引き分けられるなんて、どれだけ強い人なんだと驚く浩一。

その時馬車が止まる。ダニエルが髪を下ろし、ミッシェルが指を振って角と三角耳を隠して人間の見た目になる。


「もう外も暗いですしここらへんで、野営しましょう」


マーサが馬車の中に入って来た。


「じゃあここで休もうか、浩一よろしく」


「はい!」


そこから浩一はミッシェルに火の魔法の使い方を学びながら料理をする。


浩一の好きなハーブ料理や薬膳料理を再現した、ハンベルン家にもらった食材や薬草の本を使って美味しい料理を作る。


「はぁ!やっぱり浩一の料理はいいなぁ!」


薬膳粥を食べて満足げなロト、その隣でステータスを見ているマーサ、


「本当に不思議ですよねぇ、ステータス上昇に体力回復、状態異常回復、治癒力上昇……

流石家事能力SSSですねぇ」


「浩一さんの料理毎日食べたいですぅ」


アリッサが美味しさに笑顔を浮かべていた時だった。


「勇者と聖女を出せ!!」


三人の魔族が現れる。


「おやおや、どこからの歓迎だろうね」


ミッシェルはそう言いながら前に出てマーサが浩一とアリッサを背中に回す。


「吸血鬼、ヒューマンウルフ、鬼人か、見事に人に紛れ込ませられる魔族を集めたね」


ミッシェルの言葉など聞かず、魔族たちは叫ぶ。


「シスターに興味はない!魔王様を滅ぼさんとする勇者と聖女だけ滅ぼせればいい!弱きシスターは下がるがいい!!」


リーダーのような女が叫ぶ、


「ほぉ、私を弱いと言うか」


そう言ったミッシェルから突然プレッシャーを感じる、あまりにも強い魔力は恐ろしく、目が合うだけで死んでしまうのではないかと思うほど、息が詰まり苦しくなり、息がうまくできない、過呼吸になり胸が締め付けられる。

そこにふわっと抱きしめられ、優しい空気に苦しさがましになる、横を見るとアリッサの顔。


「ゆっくり呼吸しましょう、私のまねをしてください、吸ってーーーはいてーーー吸ってー」


浩一がアリッサに介護されてる間に、ダニエルがミッシェルの肩を叩く。


「君のお気に入りが死んでしまうよ」


ダニエルに言われミッシェルは魔力をしまい、浩一の方を見る、過呼吸で青い顔になっていたが今はましになっている。


「惜しいね、浩一の方を見ていればよかった」


「いい趣味してるものだ」


「ミッシェルさんはSなんだな!」


いつの間にかロトが足元に居る、マーサも顔を青くして、地面には吐き戻した物が見える。普通の人間にはきつかったようだ。

いや、襲って来た魔族も少し気分が悪そうだ。


「ミッシェルさんの覇気は確かに強力だが何もしゃべれなくなってしまってはダメだな!俺に任せてくれ!」


そう言ってロトはミッシェルとダニエルの前に出る。


「なんだ………この子供は…………」


苦しそうに言う魔族にロトは「ふーーーーー」と息を吐いて可愛いポーズをする。


「俺は勇者の生まれ変わり♡ 俺が勇者だよ♡」


バリトンボイスで可愛い動きで甘えた言い方、うん、別の意味で気持ち悪くなった。


「まぁ可愛らしい」


アリッサの言葉を聞いて浩一は、彼女は精神攻撃耐性SSSじゃないんだなと思った。


「うーん、なかなかにきついね」


「だろ、口を成長させたら声まで成長しちゃってね、困ったものだよ」


ダニエルとミッシェルは普通に会話している、

そして魔族達といえば……


「な」


下を向いてぷるぷる震えている。

怒っている?もしや精神攻撃SSS?と思っていれば。


「「「なっんてかわいい勇者なのぉ♡♡♡」」」


あ、はい、全然抗えずロトの手中でした。

リーダーの女がロトを抱き上げ仲間たちもロトを可愛いと可愛がっている。

そこでロトがきゅるんとした目で聞く。


「君たちはぁ、どこでぇ、この馬車にぃ、勇者と聖女が居るって聞いたのぉ?」


バリトンボイスの甘えた声が聞こえる


「えーとねぇ、私達の村の村長だよぉ」


「村長がな、憎き人間の勇者と聖女が手を組んだって焦っててな」


「村で一番強い俺たちが選ばれたんだぁ勇者と聖女を殺せって」


「でもこんな可愛い子…………」




「「「殺せないよねぇ」」」


もうメロメロだ、教皇はロトの魅了を見抜けなかったのだろうか?

見抜けていたのならこんな刺客は送ってこないだろう。

いや、ロトの魅了が強すぎるだけか?

鑑定眼で特殊スキルのレベルは見れない、見たければスキルボードを見せてもらうかスキル鑑定するしかない、ならば教皇はロトのスキルレベルを測りかねていたという事。

もしかして…………


「スキルボードをあの状態で見せてもらうのってずるですかね?」


「それは少し失礼かもしれませんね」


浩一の言葉にアリッサは言うがいつのまにか来ていたマーサは


「魔族なのです、失礼も何もありませんよ」


「そういうところは嫌いですわ」


「私もあなたが嫌いです」


「私も教会は好きではありませんわ」


俺を挟んで睨みあわないでくれと浩一は思うのだ。

スキルボードを見るのはダメだが聞くのはいいだろう、


「ロト、その人たちの精神攻撃耐性聞いて」


浩一の言葉にロトはきゅるんと聞く。


「みんなわぁ、精神攻撃耐性―ど・の・く・ら・いぃ?」


なんでかわいこぶって聞くんだよと思いながら、浩一はもう危険も感じないのでミッシェルたちの方に行く。


「わっちは精神攻撃耐性SSです」


「俺はSだ」

「あたちもS―」


なるほど、


「ロト君が強すぎるのか」


「まぁもともとSSSランクなんてめったにいないからね、18で精神攻撃耐性SSSなんてどんな環境で育ったのかと心配されるもんだよ」


浩一はミッシェルからそう言われ苦笑いをする。

自分の過去なんて人に話すほど楽しいものではないから。


「浩一、ピューレに通信繋げな」


ミッシェルに言われ、浩一は慌てて通信水晶を使う。


『はい、どうされました?』


水晶にピューレが浮かぶ


「魔族の襲撃に遭いました。ギルドに報告した方がいいかと思いまして」


『なるほど、ご報告ありがとうございます』


そしてロトは質問を続ける。


「君達の村はぁどこにあるの?」


その質問にもうデレデレのリーダーが言う。


「ゴートのはずれの隠れ里だよー」


「そんなところに魔族の村があるのぉ?どんな村なのぉ?」


刺客たちはもうべらべら話す。


「私たちの村はキジ村って言って、人間のヤタガラスって工場で無理矢理働かされている人たちが保護されて、匿われている小さな村なの」


「魔国に帰りたくても遠いしどこでまた人間に襲撃されるかわからないからねぇ、私達はそこの村で生まれ育って、戦い方を教えてもらっていたの」


その言葉にマーサが反論する。


「人間が魔族を無理やり働かせるですって?何を言っているんです?国にだって入れるはずないでしょう!ヤタガラスなんて聞いたことも無い!」


ここでヤタガラスの情報が出るとは、キジ村という新しい情報、向こうが失敗して沢山の情報が出て助かるが、今は教会の信者であるマーサが居る、詳しい話はできない。


「魔族の村があるなんて、早急に教会に知らせ、潰さなければ!」


「「「なんだと!」」」


殺気立つ刺客たちとマーサ、真冬の吹雪の中の様に冷たい空気になったが、ロトがパチンと手を叩く、


「ま、双方落ち着きたまえよ!ここでもめてもいいことなどないだろう!」


「「「勇者たん」」」「ロト様……」


少し、空気が柔らかくなる、


「キジ村を襲撃しても問題のヤタガラスの調査をしなきゃ第二、第三のキジ村が生まれるかもしれないだろ?

まずはギルドで調査して、調査結果をギルドが教会に渡すといいだろう、君達3人はギルドで調査に協力して欲しい、何、悪いようにはしないさ、どうかな?」


ロトの発言にマーサは苦言を呈す。


「いけませんロト様、魔族は信用できません、ここで処分しなければ」


「マーサ……」


いい空気になりそうだったのにその空気を壊すマーサにロトは呆れの顔を向ける。


そこにミッシェルが指を鳴らす。


「OK、私が処分しよう」


え?と全員がミッシェルを見る、


「ロトー、そこから離れなさーい」


ミッシェルの目を見てロトはぴょんとリーダーの腕から飛び出る、そしてミッシェルが三人に手をかざす。


「何をする気だ!!」


叫ぶリーダーにミッシェルは薄く笑う。


「ばいばい、幼い魔族諸君」


三人の足元に魔法陣が浮かび光って、彼らは消えたのだった。


「今の魔法は何ですか?」


マーサの問いににっこりミッシェルは答える。


「消滅魔法だよ。ゴーシュ様が教えてくださった唯一の魔法さ、まぁあの人はこの魔法をゴミ処理に使っていたけれどね」


ダニエルはくすっと笑い、マーサが感心して言う。


「ゴーシュ様は筋力強化に特化し魔法をほとんど使えないと聞いていましたが、めんどくさがりだったとも聞いていましたし、その魔法を使っているのは納得できますね、私、初めてあなたがこのパーティーに居てくれてよかったと思いましたよ」


満足そうなマーサはそのままミッシェルに握手を求める。


「ただの破廉恥さんかと思っていましたがちゃんと神カラバッシュの教えを守っているのですね、見直しました!貴方が居て下されば……」


ぺらぺらとミッシェルに近づきながら褒めるマーサを見ながら、ダニエルはアリッサと浩一に耳打ちする。


「あれは転移魔法ですよ。ギルドに3人を送ったのでしょう、生物を送れる転移魔法なんて伝説級の魔法ですからバレないでしょう」


「ならよかったですわ、可哀想な方たちですもの」


アリッサは胸を撫でおろす。

マーサは魔族を消滅させたと勘違いし、こちらは彼らが無事だと知っている。

双方平和な解決策を一瞬で考え実行できる伝説魔法を使えるミッシェル、彼女はどんな人なんだろう。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。