本当の勇者
驚く浩一にロトは当たり前のように言う。
「いやいや、いくりゃてんしぇいとはいえしゃんしゃいだじょ」
(いやいや、いくら転生者とはいえ三歳だぞ)
ロトの言葉に浩一は慌てる
「いや、でも教皇が!」
やれやれとロトは首を振る。
「あの人は鑑定眼を持っているからな。まだ生きていることには驚いたが、しぇんとうシュキルダメダメの浩一より、おえのほうがゆうちゃに見えたんだろうな」
(あの人は鑑定眼を持っているからな。まだ生きていることには驚いたが、
戦闘スキルダメダメの浩一より、俺の方が勇者に見えたんだろうな)
ロトの言葉に浩一は主張する。
「そうだよ!俺の戦闘スキルは使い物にならないんだぞ!」
その主張にロトは何でもないように言う。
「そうだじょ、お前は弱い、けどテイマーのしゅきりゅ、その特別な魔力、神が求めるのはしぇんとうしゅきりゅじゃない、こうちょうしゅきりゅだ」
(そうだぞ、お前は弱い、けどそのテイマースキル、その特別な魔力、神が求めるのは戦闘スキルじゃない、交渉スキルだ)
「どういうことだ?」
そこでミッシェルが話に入って来る。
「召喚の儀式をするのは人間だ、でも召喚する人間を選ぶのは神、神が勇者として相応しい者を選んで召喚される、それは年齢も加味される、基本的に勇者召喚で赤子が召喚されることは無いんだよ、いくら転生者でもね」
「でも実際にロトがいるじゃないですか」
浩一は納得できず反論する。
「それは君の召喚にたまたま巻き込まれただけさ、または神が教皇の目をごまかすために巻き込んだ可能性もあるけどね」
「教皇を?」
浩一の疑問にミッシェルはロトに問う。
「今勇者様は気になることを言ったね、教皇がまだ生きていると思わなかったと」
その言葉にロトは神妙に言う。
「あぁ、100年前、おえをひおってしょだてた、おえの父だ、見間違えるはじゅがにゃい」
(あぁ100年前、俺を拾って育てた、俺の父だ、見間違えるはずがない)
それにピューレが驚く。
「そんなはずありません!彼は55歳で3年前に教皇に就任した方ですよ!?」
そんなピューレの発言にミッシェルが問いかける。
「教皇になる前は何をしていた人なのかしら」
「え、そ、それが教皇は魔力で決まります、マイケル教皇は教皇選定式で膨大な魔力を見せつけ、教皇猊下になられました。しかも前の教皇猊下と瓜二つで血のつながりがあるのではと言われています」
その言葉でミッシェルとフォーラは目を合わせ、何か通じたようだ。そしてフォーラが言う。
「それは不死鳥の血を飲んでいそうだな」
「「不死鳥の血?」」
ロトと浩一が首をひねり、ピューレが目を光らせる。
「不死鳥の血を飲めば死の淵からも蘇るといいますが、それは事実なのですか!?」
フォーラは頷く。
「あぁ、不死鳥の血は一度心臓が止まり、それから体の若返り、そして復活する、だが不死鳥は希少種だ、魔国の山奥深くで保護管理されていたはずだ、人間の国、しかも教会に居るはずがない」
「魔国からの横流しか」
ミッシェルの言葉にみんな神妙な顔をする。
教会と魔国との癒着は疑いようのないもののようだ。
「ピューレ、ロト、教皇の魔力選定はいつからか知っているかい?」
ミッシェルの言葉に二人は考える。
「確か500年前からと聞いています。」
「おえのちちもたちか前の教皇のこんがいちでういふたつだと言っていた。」
(俺の父も確か前の教皇の婚外子で瓜二つだと言っていた。)
その言葉にフォーラが笑う。
「イグゼル大臣が大臣就任した時期と被るな、そしてその時期から住民の神隠しが始まっている。
魔王様は100年前10歳で魔王になられていらっしゃるし、前の魔王様の代から神隠しについては調査されていた。」
「なら魔王は関係ないということ?」
浩一の言葉にフォーラは確かな自信で言う。
「魔王様は国民に愛されている方、魔王襲名の前から国民の事を愛しており大事にされていた。そんな方が魔国を不幸にする謀をするはずがない」
それは確信、絶対にそんなことは無いと強い目でフォーラは言う。
それにピューレが厳しい指摘をする。
「それを証明はできないのではありませんか?魔王を始めたのは10歳、周りから影響されやすい年齢だと思いますよ」
「我が王を愚弄するか!」
フォーラの怒りに浩一は少し怖気づいてしまったが、ピューレは真っすぐフォーラを見て言う。
「あくまで可能性は考えた方がいいです、不明瞭な事の多いこの二つの事件の関係性を探るためにも、可能性のある場所を安易に潰すのは良くない」
「だから!」「まー待ちなよフォーラさん」
フォーラの発言にミッシェルが言葉をかぶせる。
フォーラはミッシェルを見て口をつぐむ。
「魔国の情報は人間の国に一切入ってこない、それどころか悪い話になって伝わる、貴方が魔王がどんなに素晴らしいと言っても、人間には未知だ、ならば魔国に入って魔王に会って知ればいい、勇者パーティーとはそういう物だ。」
「お前達は魔王様を倒すというのか」
怒りを隠すことなくフォーラはミッシェルに噛みつく。
「だからこしょのこういちしゃ!」
(だからこその浩一さ!)
ミッシェルに噛みつくフォーラにロトが言う
「浩一?そこの青年か」
フォーラの目線に少し怖気づいてその視線に居心地の悪さを感じるが目をそらしてはいけないと感じてこくりと頷く。
そしてロトが自慢げに語ろうとした時だ。
「浩一は「待ってロトあなたの活舌を良くしよう聞き辛いもの」
そう言ってミッシェルは飴を出す、
「この飴は活舌を良くする魔法がかかっているの、使いどころがなかったからちょうどいいわ」
そう言ってミッシェルがロトの口に飴を入れる。ロトは素直に舐めていると、顔を歪め口からポコポコ音が聞こえたと思ったらバフンッと鼻から耳からピンクの煙が出た。
「ろ!ロト!?大丈夫か!?」
「びっくりしたー」
目をまん丸にしているロトの声が低くおじさんの声になっている。
「な、なんだよロト!その声!」
浩一の驚きに、ロトは首をひねる。
「声?声って……は!こ、この声は!NiceGuy勇者の時の皆惚れちゃうバリトンボイス!!!……は!言葉もペラペラだぁ!!」
喜ぶロトだが可愛い3歳児の見た目でそのバリトンボイス、あまりにも気持ち悪い、
「なるほど、口だけ成長してしまうのか」
口だけ成長ってなんだ、と思っているとロトが感動から帰って来て、ふん!と鼻を鳴らす。
「とりあえず!浩一は交渉の勇者なんだ!」
「「「交渉の勇者?」」」
ピューレ、フォーラ、浩一が疑問の声を出す。
「そう、魔王を倒すのではなく、その魔力とテイマーの力で魔物たちと共に魔王を説得し、交渉し人間国との友好関係を築くための勇者なんだ、俺が一緒に召喚されたのは魔国の本当の姿を浩一に教える事だと思えば、赤ちゃんで召喚された理由がわかるぜ」
「なるほど、神は教会の味方ではないという事ですね」
ピューレが嬉しそうに言えば、フォーラが納得する。
「友好のための勇者か、そうか、それならば異論はないが……」
フォーラが悩む姿に微笑みながらミッシェルが聞く。
「何か問題でも?」
フォーラは言いにくそうに慎重に言う。
「現魔王様は戦闘好きでもある、魔王様に進言する際には一度手合わせをしなければならない、負けても、いい戦いをした者は楽しそうに話を聞いてくれるが無様に負けるようなら、側近の方に話を聞かせ魔王様は聞いて下さらない、内容がよければ後日その案を採用される事もあるので後でちゃんと聞かれているだろうがな」
えー、と少し魔王への評価の下がる浩一、それはピューレも同じようだ。
「それはちゃんと政治ができていますか?」
そんな人間達の反応にフォーラはニヤッとする。
「いやこれがいい効果を起こしていてな、進言するには魔王様と手合わせしなければいけない。
だから日頃鍛えている真面目な者や、弱くても信念のある者しか進言してこないから、余計な私腹を肥やしたいだけの怠惰な提案をするやつらは自分じゃ進言できない。
だから、余計な案が出なくていいらしい、ただどうにかいい勝負のできそうな強い者に必死に取り入ろうとするから、膿の選別に役立っていて真に評価されるべき人間が魔王様に自分から来る素晴らしい制度なんだよ!」
自分の王がどれだけ素晴らしい人かわかっただろうと言うように嬉しそうに語るフォーラを見て、本当に魔王を慕っているんだなと思い、ここまで慕えるのは本当にいい魔王なのかもと思う、
「という事はだ?人間の浩一はもしかして勝利しないと話を聞いてもらえないのでは!?」
「え、嘘でしょ!?」
驚いて浩一はフォーラの方を見ればフォーラは浩一から目線を外しながら気まずそうに頷く。
「むむむむ無理だよ!!!俺!喧嘩もしたことないのに!!!」
「だぁいじょうぶだよぉ、浩一ぃ、私がぁ、手取り足取りぃ、教えてあ・げ・る♡」
ミッシェルは浩一の腕をすーと撫で上げ浩一の顎を持ち顔を自分の方に向けてキスでもするんじゃないかと言うほどの距離で恍惚な顔をして言うので浩一は真っ赤になる。
「そ、それは戦い方の事ですよね!?」
「うーん、そうだけどぉ、お姉さんがぁ、大人の階段、教えてあげてもい・い・よ♡」
浩一の頬を撫でながら近距離で意味深に言うミッシェル、マーサのいない今、助けてくれる人はいない。
「け、結構ですうううううう」
何とか動いてフォーラの後ろに隠れ、頭を押さえてぶつぶつと平常心と繰り返し言っている。
それを見ながらロトとピューレはポップコーンとジュース片手に感想を言う。
「うーん、うらやましぃ」
「やっぱ、浩一さんはむっつりなんですねぇ」
「仕方ない、思春期でおかん男子高校生と言われていた浩一には女経験が薄いのだろう」
「なるほど、女慣れをしてらっしゃらない、そんな思春期男子にミッシェルさんの攻撃は強すぎますねぇ」
「冷静に解説してないで助けろよ!!!」
解説する二人に浩一は吠えるのだった。




