拾うのは誰か
外出するのは久しぶりだった。夏休みに入り、家の中でゲームをし始めた。ベッドと机と椅子だけで過ごすのはとても退屈なんだ。ゲームとゲームカセット、テレビが必要だった。イヤホンもあればなおいい。それらをコンセントに繋いで、ゲームをつければ、そこからは自由と言っても良いだろう。
外出するのは二週間ぶりになった。夏休みが四週間なので、半分はゲームをしていたことになる。
「元気してた?」
彼女の名はムラサキ。同級生だ。
「うーん、元気してる」
「まあ、いいや、私の辞書がなんか調子が悪いみたいで」
「分かった。貸して」
辞書というのは機械じかけの本のことだ。
「起動させてみて」
「二〇十六、起動」
辞書は古びた時計のように時刻を表示させてはいるが、時刻が深夜の二時だった。朝十時から何十時間もずれていた。
「職人に頼んだほうがいいね」
「そうかな、そうしてみる」
「ひとりぼっちはかわいそうだから、一緒にいてあげるんだよ」
「分かってるって!」
そうムラサキは言い残して、公園から歩いて出て行った。
その日の夜はいつもより少し寒かった。ムラサキの辞書をどうすればよかったのか。悩んでいた。選択肢はいくつかあった、けれども選んだのは職人に頼むということで、伝えたが、果たして、ムラサキと辞書に納得のいく答えであったのか、気になっていた。
朝、気分は優雅だった。何よりも機械じかけの本が広々としたスペースで使えるからだ。ボックスという概念が存在して、それが邪魔だった。今はそれがない、そしてこれからもない。昨日起きたことといえば、公園に行く途中で、小さな枝を拾ったり、朝ご飯の後に、饅頭を食べたことだ。どれも意味のない日常だろうが、きっと何か意味があったのだろう。
「ボックスが消えた理由を教えて」
「了解。学習能力の計測で必要と判断されていたものが、覆りました。よって、ボックスは一時的に収納されます」
本は謎が多い。何百年も前からあると習ってはいるが、どこから出てきたのかについては何も分かっていない。




