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登録した番号が間違っています

 俺は旋律かなめ、十六歳。高校生だ。とあるトラブルに巻き込まれているがそこは置いといてだ。まずはこの世界がどうなっているのか考えていこう。数学というものはとても重くて解くのには時間がかかる。それでいて面白いと思うこともない。公式が用意されているのはまるで海を渡ろうとする小舟だ。嵐とまでは言わないが、高波が来ただけで航海は終了して大海原に行く前に助けを求めなければならない。何がいいとか何が悪いとかではなく、もっと上手い考え方を学ぶべきなのかもしれない。つまりだ、ただ解くだけでは何もなしえていないのと同義であり、ちょっと寄り道できる環境がとても良いと考えている。

 お世話になった厚くて固い本、どうにも手放すのが勿体無い。こういう時、俺はトラブルが起きていると考える。遠い目で先を見据えておらず、近いところでつまづいているような感触だ。上手く乗り越えられれば良いけれどまだ俺にはできそうもなかった。先日、先輩に会った、長い話の末に言われたことはもっと問題と向き合えよということだった。

 俺の使っている本は暗証番号が必要な機械だ。こいつはよく喋る。

「上手く自分と付き合いましょう」

 起動と同時に何かと喋りかけてくる。

「五六二〇、解錠」

「登録した番号が間違っています」

 ここでなぜか、暗証番号が間違っていることに脳みそが気づかなかった。

「だから解錠だって、五六二〇」

 機械は同じ反応を示した。

 結局、俺は再登録をして、解錠する。

「運用コスト、エネルギーからサイクルに入ります」

「省エネモードで頼む」

「了解」

 その本はコツコツと音を立ててページをめくる。その音は紛れもなく、今まで聴いてきたことのない不思議なメロディのようだった。

 ゆったりとページをめくる動作は最終ページまで続いて、いかにも終わると思わせて、数秒の後に最初のページへと戻った。パタタ、音を立ててページは戻っていった。

「気づかなかったけど、お前いくつになったんだ」

「起動日は六年前、工場出荷日は二十年前」

 つまり、人間で言えば六歳になったわけか。機械じかけの本は人間と一生を共にし、死んだ後もデータは生き残る。そのデータを次の世代へと渡すことを可能にしているのは、職人だ。長い月日をかけて、蓄積したデータをさらに同じように蓄積しても良いように、まとめ上げる機能を追加し、機械にとって何の意味もないと言える時間を成長というものに変えた。機械自体は消えてしまうが、データを引きつがせる。このことに私たちは神秘を感じ始めたのだ。

「生産モードに移行、携帯して外出する」

 教室から自宅へ帰ることにした。

「了解」

 自宅には大きい樹木がある。玄関から家に入ってすぐ、目の前に大きい幹と数本の枝が生えているのが見える。その木のすぐ隣の階段を上がると俺の部屋だ。

 部屋にはベッドと机と椅子、それしか置いていない。だからこの本を読んで暇を潰す。

 

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