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21. 一難去って、またまた一難

大変な事になってしまいました。


 タンザール侯爵家の夜会で、不覚にも酔っ払ってしまった私は今、()()()()にいます。

 ああ、違いました。不覚じゃなかったですわ。意図的にした事でした。








 壁際の椅子に腰かけて、オーキッド様とクラウス様とお話をしていました。お二人の何気ない会話をネタになるかもと思いながら、シャンパンを飲んでいましたわ。

 すでにオーキッド様とのやり取りでごっそり何かを削られていた私は、緊張を解すためといざとなったら『卒倒』でも、『失神』でも、『持病の癪』でも何でも使ってオーキッド様からの追及を逃れようとしていました。


 「ところで、クラウス殿は誰かに似ていると言われた事はない? 例えば、『若き宰相のクラヴィス』 様とかさ?」


 とんでもない発言に意識が吹っ飛びましたわ。


 シャンパンのグラスを放り投げそうになりました。なりましたけど、一気に煽りました!!


 もう、この場から逃げます! 意気地無しとでもお呼び下さい!






 その後、気付いた時には夜会の休憩用に用意された一室で、お母様に看病されていました。冷たい濡れハンカチで首元を拭われていましたわ。


 何でも意識を失くした私を、この部屋に運んで下さったのがオーキッド様で、お母様を呼んで下さったのがクラウス様だそうです。


「……オーキッド様は?」


 カウチに大きなクッションを背に寝かせられていた私は、身を起こしてお母様に尋ねました。


「貴女を運んで、私が来るまで傍に付いていて下さったわ。自分が傍にいたのに、飲ませ過ぎてしまって申し訳ないと。とても恐縮していらしたわ。そのハンカチもオーキッド様の物よ。わざわざ濡らして下さったの」


 お母様は心配そうに私の顔を見ながら、乱れた前髪を直してくれます。

 オーキッド様のせいでは無いのに。申し訳ない事をしてしまいました。故意にこうなったのに、オーキッド様が気に病んでしまうなんて、思いもしませんでした。


「お母様、オーキッド様のせいでは無いの。私が勝手に、飲みたいだけ飲んでしまったのが悪いのです。恥ずかしいですわ。良い年した娘が酔っ払ってしまうなんて……」


 完全に私の自作自演? ですから、オーキッド様やクラウス様に変なご迷惑を掛けたら申し訳ないです。折を見てちゃんとお詫びしなければいけません。


 だって、折角あんなにお話しできるようになったのですもの。


「さあ、貴女の気分が治ったのなら、今夜はもうお暇しましょう?」


 お母様がそう言って姿勢を正しました。


「えっ? でも、お母様は宜しいのですか? ホールに戻って---」


 そう言い掛けた私に、お母様は衝撃的な言葉を発しました。


「あら、今戻ったら、貴女大変な事になってよ? ()()()()()()()に姫抱きされて、ホールを退場したのだから。うふふっ」


 お母様……最後に含み笑いを付けましたわね。


「きっと今頃は、『あの謎の騎士と、ミラノ侯爵令嬢はどんな関係だ?』って大騒ぎになっているわ」


 うっ。どうしましょう。そんな事になっているのですか!?

 オーキッド様に申し訳なくて、冷や汗が出ますわ。どうしましょう、変な噂に巻き込んでしまいました。


「さて、どうしますの? 戻ってもイイですけど、貴女にその覚悟があって?」


 無いです。一筋も、一滴も、一粒もそんな覚悟はありませんわ。




「……今日はもう、帰りたいです……」



 私の返事に、ニンマリと微笑むお母様の笑顔が怖いです。



 ああ! 一難去って、また一難。そんな感じですわ。


 








 翌日。


 すっかりお酒の抜けた私は、気分爽快に目を覚ましました。自分で言うのも何ですけど、結構お酒には強いみたいです。ただ、限度がいきなりくるリミッター猶予無しのタイプらしく、限界まで来るといきなり意識が跳ぶようです。翌日には残りませんから、飲む量を考えて飲めば良いのでしょうけど……



「カレン様。ご気分は如何ですか? 朝食は召し上がれますか?」


 クララはカーテンを手際よく開けて、冷たいハーブ水を差し出してくれました。


「ええ、大丈夫よ。朝食も頂くわ。ところで、昨日私が使っていたハンカチなんだけど……」


 オーキッド様が貸して下さったハンカチを、そのまま持って来てしまいました。お返ししなければいけないですわ。


「はい。テーブルに載っていた()()()()()()()()の事ですね? ご心配無く。ちゃんと洗濯してアイロン掛けも致します」


 男性用を強調されました。


「あのね、あのハンカチ、実はオーキッド様の物なの」


「はい? オーキッド様、ですか? 変わっていますね、男性用のハンカチを使われているのですか?」


 そうでした。クララはドレス姿のオーキッド様しか知りませんから、女性だと思っているのです。


「驚かないで頂戴。じつは、オーキッド様って男性なの。オーキッド・フォン・パルマン辺境伯。れっきとした男性なのよ」


「ええっ!? 本当ですか!?」


 驚いたクララの声は、ここ最近聞いた事も無い位の大きさでしたわ。


「ええ。昨日の夜会ではちゃんと騎士の恰好でいらしたの。それで、ずっとご一緒させて頂いたんだけど、酔っ払った私を休憩室迄運んで下さったりと、ご迷惑を掛けてしまったのよ……」


 ああ。改めて口にすると、後悔と自責の念が……押し寄せて来ます。


「まあ、そうだったのですか。でも、あの方が男装? すればそれはそれで麗しいでしょうね? 背も高くて雰囲気のある美形でしたもの。それに、辺境伯って言ったら立派な方じゃないですか? 因みに独身でいらっしゃいますか?」


 クララの目が輝いています。


「ええ。確かそうだと……」


「カレン様!! この機会を逃していけません! こんな出会いは滅多にありませんよ!?」


 はい? クララは何を言っているのでしょう? あちらは作者探しをしているんですよ? 苦情を言うために探しているんですよ?






 朝食を摂るため、ダイニングルームに向かいます。今朝はお母様と二人きりですわ。お父様とお兄様達もすでに王宮に出仕されています。


 きっと、お小言ですね。昨夜の失態を叱られるでしょう。


「おはよう。カレン、気分はどう?」


 お母様はいつも通り声を掛けてくれます。


「お母様、おはようございます。気分は良いですわ。あの、昨夜はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。以後、気を付けます」


 まずは謝りましょう。心配を掛けてしまったのは事実ですから。


「そうね、気を付けて頂戴。オーキッド様とクラウス様のお陰で、貴女がお酒の飲み過ぎで酔っ払ってしまった事は、只の体調不良とされています。感謝なさいね」


 そんな事迄気を廻して下さったのですか? ああ、もう頭が上がりませんわ。


「それで、一つ貴女に聞きたいことがあるのだけど」


「な、何でしょうか?」


 お母様の目線が鋭いのですけど? 


「貴女、オーキッド様と()()あるのかしら?」


 うっ。探られているんです。探られているのですわ。それだけです。それだけですけど、そんな事はお母様に言えません。だって、私がB・Bである事も、作家活動をしている事もご存じ無いのですから。



「えーっと、あの---」




 言い淀んで視線を巡らせていると、






「奥様。ご使者の方が、訪問の前触れにいらっしゃっております」


 執事のモルダーがお母様に声を掛けました。



「どなたから?」


 モルダー! ナイスタイミングですわ。どなたのご使者の方か知りませんけど、ありがとうございます。







「オーキッド・フォン・パルマン辺境伯様です」








 ワタシ、イマ、シネルト、オモイマス。




  


 

ブックマーク、誤字脱字報告ありがとうございます。

感想も頂けると嬉しいです。


ようやく夜会から解放されたのに

今度は屋敷に訪問されそうです。


オーキッドさんの真意は何でしょうか。


さて、そろそろラストに向かって行きましょう

不器用な二人を見守って下さいね。


楽しんで頂けたら嬉しいです。

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