16. 辺境伯は網を引く -オーキッドサイドー
本日2話目です。
少し短いですけど。
キリが良いので。
まるで人形の様に固まっている。きっと彼女の頭の中は、凄い勢いで回転しているのだろう。
さあ、どう答える?
「あの、オーキッド様? それはどんな方なのですか? 夜会では、伺った事が無いお名前かと思いますけど……」
私を見上げて小首を傾げている。その表情はまるで初めて聞く様な感じに見えるけど、表情と動作が一致していないよね。でも、そう来たか。誤魔化そうということだね?
「そうですか? ご存じないですか? 貴女なら良くご存じかと思ったのですけど」
甘いよ。甘々ちゃんだね。君はそんな器用な事が出来そうには見えないんだけど。何とも可愛らしく白を切るその様子が面白くて、ついつい揶揄うように笑いかけてしまった。
そして、その手をキュッと握ってみたら。
「っ!?」
握られた手と私の顔を交互に見ながら、彼女の耳が真っ赤になっているのに気が付いた。
可愛い。今までにいなかったタイプだ。
「あ、あの、オーキッド様、そ、そのお探しの方というのは---」
彼女の首筋もほんのり朱に染まっている。何とか誤魔化そうと必死な様子が見て取れた。虐めすぎないようにしないと、ルイに叱られるな。
「私と似ているようです。黒髪黒目の辺境伯。ああ、でも彼は隻眼の騎士らしいですけど」
彼女が息を飲んだのが判った。そして、もう一言尋ねてみた。
「やっぱりご存じありませんか? 貴女は良くご存じだと思ったのですけどね」
数秒の間が空いた後、彼女はさも残念そうに眉を下げて私を見上げた。
「残念ですけど……でも、その方にお会いする事がありましたら、オーキッド様にお知らせしますわね」
「そう? じゃあ、私も引き続き探そうかな。オーランド殿をね?」
「!?」
社交界でありがちな当たり障りのない返事で誤魔化そうだなんて。そう言う事はもっと、手練手管を磨いてからの方が効果的だよ。
可愛らしい拙い手管に、今日の所は嵌ってあげよう。そう思って、もう一度手を強く握った。
「カレン嬢、私の連れを紹介しよう。こちらはルシェール・サウザランド。今はタウンハウスで一緒に住んでいるんだ。私の大事な友人の一人なんだ」
ミニテーブルまで彼女をエスコートする。すでに待っていたルイは、女性だったら誰もが見惚れる様な笑顔で彼女を迎えている。
ルイ君。少し、サービスし過ぎじゃないの。
「カレン嬢。ルシェール・サウザランドと申します。以後お見知りおきを」
彼女は綺麗なカーテシーで応えると、にこにこと微笑んでいる。年の近しい二人は、何だか醸し出す雰囲気が似ている様な気がする。気のせいかな?
「ルイはね、私の大事な友人であり家族なんだ。私は彼の為なら何でもできる。そう思っているんだけど、彼は全然気づいてくれないんだけどね」
私はそう言うと、ルイの髪を一筋撫でる様に梳いた。
「ちょっ!?」
パシリと嫌そうに、私の手を叩き落した。酷いよね、口より先に手が出るんだから。
「ねっ? カレン嬢。釣れないでしょう? いつもこんな感じなんです」
頬を紅潮させて、キラキラと輝く瞳で私とルイを見ている。でも、何か違うんだよね? 普通の女性達の視線と言うか、見られている感が……
「ふふふ。オーキッド様とルシェール様は、仲が宜しいのですね?」
微笑ましいモノを見るように言っているけど、君の瞳は淑女の憧れの輝きじゃないね。
さて、どうやって彼女と遊ぼうかな?
ブックマーク、誤字脱字報告ありがとうございます。
感想なども頂けると嬉しいです。
さて、目に見えない攻防戦を
しつつ二人は何となくイイ感じっぽい。
次話はそんな二人を見たある人物が
乱入します。
さて、誰でしょうか。
楽しんで頂けたら嬉しいです。




