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12. 辺境伯は推理する? -オーキッドサイドー

少し短いですけど。

「お帰りなさい。あれっ? オーキッド、カーンと一緒だったの?」


 タウンハウスに戻って来きた私に、ルイが声を掛けて来た。階段から降りてくる彼は、まるで舞踏会のハイライトで登場する王子のようだね。


「ああ、ただいま。丁度ピーコック商会で一緒になってね。馬車で来ているって聞いて一緒に帰って来たんだ。久し振りに秘密の花園(高級娼館)にも寄って来たよ」


「そうですか。皆さん元気でしたか?」


「うん。元気だったよ。行ってよかったよ。あの本について判った事が幾つかあったしね?」


 ルイがピクリと眉を上げた。


「着替えて来るよ。話はそれからだね。……脱ぐの手伝ってくれる?」


「……絶対、嫌です!」



 うん。いつも通りのルイ君だね。さあ、さっさと()()で着替えよう。






 ピーコック商会で購入した茶葉でお茶を淹れると、良い香りがサロン中に漂ってゆったりとした気分になれた。


「で、あの本について何が判ったの?」


 ルイは興味津々に聞いてきた。手にはあの本を持っている。包装紙は青緑色だったけど、本自体は墨色に金文字の品の良い装丁だ。 

 因みに、カーンは明日本邸のあるパルマン領に行く準備をしているのでここにはいない。


「実はさ、この本ね、秘密の花園(娼館)のチュチュリア嬢が伝手(つて)をたどって注文した本だったんだ。何でも、上流階級の女性達の間で評判になっていて、注文して配達してもらうのが手に入れる方法らしい。彼女もお客から本の評判を聞いて興味を持ったんだって」 

 

 ルイは大人しく聞いている。


「それから、この本の購読層は結構若いご令嬢達もいるね。セーヴル殿の妹君も読者の一人だったよ。他にも年の近い3人のご友人もいたけど。ピーコック商会のティールームで、本の話しで盛り上がってたよ。いや悶えていたというべきか?」


「何それ? セーヴル殿の妹君って、まだ14、5歳でしょう? へえ、今どきの女の子達の嗜好は判らないな」


 そうなんだよね。この本は結構と言うか、何と言うか……甘い。そして()()()()はとても官能的に書かれている。年端の行かない少女達には刺激が強いと思うのだけど?


「それから、メゾン・ド・カレムで、気になる人に会ったよ」


 ティーカップを置いて、本を膝の上で広げる。表紙の裏に著者の名前が書いてある。


「気になる人って?」


 ルイは小首を傾げて尋ねてくる。


「原稿用紙を200枚も買う令嬢だよ」


「原稿用紙?」


 名前の部分を指でなぞる。何となくだけど、ピースが段々集まってきている感じがする。


「あの青緑色の紙袋に、真っ新な原稿用紙を200枚も買って、定期的にピーコック商会の商談室に足を運んでいるんだって。そう言えば、彼女留学までしている才媛でしょ? そりゃあ本も沢山読むし、文章を書くのも得意そうだねぇ」


 正面に座っているルイの顔は、怪訝そうにこちらを見ているけど。


「カレン・ミラノ侯爵令嬢。彼女、何か知っていそうなんだよね。いや、もしかしたら本人かもしれないかなぁ」


「何か、全然判んないのだけど?」


 そうか。ルイはカレン嬢の事を知らないか。


「だからね、このB・Bって著者が、もしかしたらカレン嬢かもしれないなって思ったんだ。

 上等な包装紙はピーコックカラーで、カレン嬢のご友人の所の物。そのカレン嬢は、定期的に商会の商談室に通っている。ピーコック商会が絡んでいそうだね? そして商会から、大量の原稿用紙の購入。それに何より、この前の夜会で会った時の質問が変だった」


「夜会で、変?」


 そうだった。あの時はクラウス君と一緒に挨拶に行ったんだ。そこで変わった質問をされたんだった。女装と男装の比率はどうかとか、コルセットを自分で着るかとか、脱ぐのかとか。更に、エスコート役は

どうやって決めるのかとか。




 興味というより、取材?




「で、オーキッド。この作者を突き止めるんですか? 作者が貴族の令嬢だったら、注意して下さいよ? ややこしい事にしないで下さい。仕事が立て込んで来てるんですから」


 他人事だねぇ。

 自分が登場していないから、そんな呑気にしているんだろうけど、君こそ登場人物に相応しいと思うけどね? 見眼麗しい隣国の王族で、クーデターによって濡れ衣を被って国を追われた美しい青年。

 この本の作者だって、ルイの事を知れば絶対書くと思う。断言できるね。


「ルイ。君も協力してくれるよね? と言うかしておいた方が良いと思うよ。私から君に行きつくのも時間の問題でしょ? 次回作で登場しちゃうかもしれないよ?」


 にっこり微笑んでルイを見ると、カップを持ったまま固まっている。何とも嫌そうに眉間に皺も寄せているけど。


 

「じゃあ、差し当たって、来週のタンザール侯爵家の夜会に一緒に行こう。セーヴル殿の妹君もいるし、きっとカレン嬢も参加するよ? ねっ?」


 嫌そうに顔を(しか)めていても、ルイは可愛い。きっと、何だかんだ言っても付き合ってくれるはずだ。




 そう言えば、以前屋敷にあった本。

 何て言ったかな『宮廷近衛騎士と宰相は何とかの何とかで愛を語る』とか言う、シリウス君とクラウス君がモデルらしきあの本。あれは一体誰が手に入れたんだ? 私もルイも多分カーンも知らない。


 じゃあ、一体誰だ? 誰の物だったんだろう。


 さて、チュチュリア嬢には何て言おうか。それより先にカーンに言っとかないといけないだろうけど、彼が大笑いして、嬉しがる様子が想像出来て教えたく無くなった。


 でも、カーンに協力して貰った方が、早く突き止められそうだ。



 でも、まあ、まずは来週のセーヴル殿のとこの夜会に出てから考えよう。



 何か起きそうな気もするしね?






ブックマーク、誤字脱字報告ありがとうございます。

感想なども頂けると嬉しいです。

評価ボタンの☆も頂けると頑張るパワーになります。


少しずつピースが揃ってきて

カレンさんに近づいてきてますけど。

いつになく、オーキッドさんが

彼女を気にしているのがルイ君としては

不思議なんですけどね。


楽しんで頂けたら嬉しいです。


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