第7話:報酬と新たな噂
ご覧いただきありがとうございます。「迷宮の底、復讐の血脈はモンスターを屠る」第7話です。
オーク討伐を経て「鬼童」と呼ばれるようになったルインが、さらなる高難易度クエストに挑む姿を描きました。周囲の評価を意に介さず、ただ復讐のために闇へ進む少年の孤高の姿をお楽しみください!
「……これで、今回の依頼の報酬と魔素材の換金分だな。間違いないか?」
冒険者ギルドの受付カウンター。
窓口の女性は、目の前に山積みにされたオークの牙や剥ぎ取った皮、そして討伐証明の首実検を終えると、引きつった笑顔を浮かべながら銀貨の詰まった革袋を差し出した。
周囲にいた他の冒険者たちも、カウンターの上に転がるオークの素材の量と、それを持ち帰ったのが僕一人とガルドだけであることを知って、気味の悪いものを見るような目を向けざるを得なかった。
「あぁ、足りてる」
僕は無愛想に革袋を受け取り、腰のベルトの端に無造作に括り付けた。
体中にはまだ昨日の戦いで負った擦り傷が残り、服のあちこちにはオークの黒い血が染み込んでいる。だが、そんなことはどうでもよかった。手に入った金はすべて、より切れ味の鋭い武器や、生き残るための防具を買うために消える。
「おい、ルイン。少しは休めよ」
少し離れた柱にもたれかかりながら、ガルドが苦り切った表情で言った。
あのオークの群れとの死闘以来、ガルドはどこか僕を見る目が変わっていた。恐怖というよりは、底知れぬ狂気を秘めた子供に対する警戒と、奇妙な連帯感が入り混じっているようだった。
「休む必要はない。次だ」
僕がそう短く答えると、ガルドは頭を抱えてため息をついた。
「お前な、Cランクの迷宮をクリアしたばかりだぞ。ギルドの連中もお前の噂をし始めている。『呪われた廃村の鬼童』ってな。少しは自分の身を心配しろ」
「鬼童、ね……」
冷ややかに鼻で笑う。
世間が僕をどう呼ぼうが勝手だ。英雄になりたいわけでも、誰かに称賛されたいわけでもない。ただ、すべてのモンスターをこの手で引き裂き、あの日の暗闇で感じた絶望をそのまま奴らに叩き返してやりたい。それだけだ。
僕がギルドの掲示板に張り出された依頼書の一覧に視線を走らせていると、一際古びた、黒ずんだ羊皮紙が目に留まった。
『難易度:B 地下水路に巣食う異形の群れ・大蛇の棲家』
王都の地下深くを這う古い下水道跡。そこに、本来いるはずのない巨大な魔獣が流れ込み、調査に入った冒険者パーティーが何人もの行方不明者を出しているという。
「……これにする」
僕がその羊皮紙を指先ではぎ取ると、受付の女性が小さく悲鳴を上げた。
「ル、ルインさん! そこはBランクです! 先日までのCランクとは比較にならないほど危険で、毒を持つ魔物も――」
「構わない」
女性の制止を冷たく遮り、僕はギルドの扉へと背を向けた。
ガルドが慌てて追いかけてくる足音が背後で聞こえるが、止まる気はない。
血と鉄にまみれた道は、まだ始まったばかりだ。世界のすべての迷宮を血に染め上げるまで、僕の歩みが止まることはない。
第7話「報酬と新たな噂」最後までお読みいただきありがとうございました!
周囲から「鬼童」と噂され始めながらも、一切ブレることなく次の危険な依頼へと手を伸ばすルイン。彼の闇は深まるばかりですが、その狂気こそがこの物語の推進力となっています。いよいよ次はBランクの地下水路、強敵との戦いが待ち受けています。




