第29話:業火を断つ閃光
ご覧いただきありがとうございます。「迷宮の底、復讐の血脈はモンスターを屠る」第3章・第29話です。
竜の放つ業火のブレスの隙間を縫い、死地を潜り抜けてついに心臓へと致命的な一撃を叩き込むルイン。決着の瞬間を描く緊迫のクライマックスをお楽しみください!
視界を埋め尽くしていた赤黒い炎の奔流が、轟音とともにわずかに揺らいだ。
ガルドが展開した闘気の壁は高熱によって激しく軋み、彼の全身から血が噴き出している。だが、その背後でルインの姿は消えていた。
(――消えた?)
怒り狂う漆黒の竜の眼窩が、わずかに動揺の色を見せる。
ブレスの最中、圧倒的な熱量を纏った炎の直撃をあえて正面から受け止めるのではなく、ルインはその熱波のわずかな「気流の隙間」――竜自身の喉元から逆巻く炎のうねりのデッドゾーンへと、自らの肉体を滑り込ませていたのだ。
衣服が焼け焦げ、皮膚が水疱と化し、全身の痛覚が激しく悲鳴を上げる。
だが、ルインはその痛みを完全に無視した。あの日の暗闇で味わった絶望と恐怖に比べれば、この程度の熱などただの心地よい温もりにすぎない。
「見つけた」
ルインの冷徹な声が、轟音を裂いて竜の耳朶に直接届いた。
すでに竜の真下、あの最初に亀裂を入れた傷口のすぐ真下へと、ルインは到達していた。
「お前のその汚い喉から、二度とその声を漏らせないようにしてやる」
ルインが両手でしっかりと握りしめた血まみれの短剣に、全身の全殺意と残されたすべての魔力が一点に集中する。それは技ではない、ただ敵を殺すためだけに研ぎ澄まされた純粋な狂気の奔流だった。
パキィィィンッ……!
先ほど入れた亀裂を起点として、竜の頑強な胸骨と鱗が完全に砕け散った。
ルインの短剣は、迷うことなく漆黒の竜の心臓の核へと深く、深く突き刺さる。
「ガァ……ア…………ッ!?」
竜のブレスがぴたりと止まった。
圧倒的な熱波が嘘のように引き、広間に静寂が戻り始める。竜の巨大な複眼から光が急速に失われ、その巨体がぐらりと大きくバランスを崩した。
第29話「業火を断つ閃光」最後までお読みいただきありがとうございました!
絶望的なブレスの最中、あえて死地へと飛び込み竜の心臓を穿ったルイン。すべての元凶との戦いはいよいよ次回の第30話(第3章最終話・完結)へと突入します。




