第19話:鬼面の呪術師
ご覧いただきありがとうございます。「迷宮の底、復讐の血脈はモンスターを屠る」第19話です。
鬼面のシャーマンが放つ強力な呪術を、圧倒的な執念と肉体でこじ開け、一気に距離を詰めるルインの緊迫した攻防を描きました。亜人の群れを統べる黒幕との決戦の行方をぜひお楽しみください!
「オオオ……ルルル……!」
鬼面のシャーマンが骨の杖を激しく地面に突き立てた瞬間、周囲の空気が重く澱んだ。
顔に貼り付いた醜悪な木製の面が不気味に揺らぎ、その眼窩の奥から禍々しい紫色の呪力が噴き出す。シャーマンの口から紡ぎ出されるのは、人間の理解を絶するおぞましい呪詛の詠唱だった。
直後、ルインの足元の石畳がひび割れ、無数の黒い泥の手が這い出てきて彼の足首をガッチリと掴んだ。動けない。呪術による強制的な縛り付けだ。
「ルインっ!」
少し離れた場所でオークの群れを押し返していたガルドが声を張り上げたが、間に合いそうにない。
群れの中から、数体のトカゲ型の亜人が錆びた短剣を掲げ、身動きの取れないルインの背後へと一斉に跳びかかってきた。死角からの致命的な一撃。普通の人間であれば、ここで終わりを迎えていただろう。
だが、ルインの表情には微塵の焦りも浮かんでいなかった。
あるのは、底知れぬ冷たさと、獲物を捉えた獣の眼差しだけだ。
(……これくらいの呪いで、僕の足を止められると思ったか)
胸の奥で、あの日の胃袋の底から湧き上がる黒い熱量が全身の神経を駆け巡る。
ルインは足首を掴む黒い泥の呪手を自らの筋力と殺意で無理やり引き千切り、足元を自由にした。あまりの自傷的な力技に、呪術を操っていたシャーマンの目が驚愕に大きく見開かれる。
背後から迫る短剣の刃を、ルインは身体を半身に捻ることで紙一重で躱し、そのまま流れるような動作で敵の首筋へと短剣を突き立てた。
鮮血が飛び散り、トカゲ型の亜人が音もなく崩れ落ちる。
「ガァッ……!?」
シャーマンが慌てて杖を向け、紫色の呪弾を放とうとしたが、すでに遅かった。
ルインの踏み込んだ足が一瞬で距離を詰め、その眼前へと迫る。
「お前のその面も、まとめて叩き割ってやる」
冷徹な宣告とともに、少年の拳と刃が鬼面のシャーマンへと迫った。王都の地下水路を揺るがした異形の軍勢の統率者との決着が、いままさに下されようとしていた。
第19話「鬼面の呪術師」最後までお読みいただきありがとうございました!
呪術による足止めを自らの殺意と力技で強引に突破し、一瞬で形勢を逆転させるルインの圧倒的な戦闘力が際立つ回となりました。シャーマンとの直接対決がどのような結末を迎えるのか、そして王都の地下に隠された真の秘密とは何なのか――?




