第16話:地上に這い出る影
ご覧いただきありがとうございます。「迷宮の底、復讐の血脈はモンスターを屠る」第2章・第16話です。
舞台は再び王都の地下へと戻り、新たな脅威の気配が漂い始めます。さらなる激戦とルインの進化を描く新章の幕開けをぜひお楽しみください!
王都の華やかな石畳の通りに、不穏な風が吹き抜けていた。
かつては平和な商業都市として知られていたこの場所も、ここ最近はどこかピリついた空気に包まれている。人々は噂していた。地下深くに潜むとされる怪物の群れが、いよいよ王都の防壁の直下にまで迫りつつあるのではないかと。
「……おい、聞いたか? 最近、南側の排水区画で夜な夜な異様な物音がするってよ」
酒場の隅で、二人の冒険者が青ざめた顔でコップを傾けていた。
「ああ、警備兵が何人か見回りにいったきり、二度と戻ってこなかったらしいぜ。血痕すらなかったって話だ」
その頃、まさにその「南側の排水区画」の最も深い暗闇の中に、ルインの姿があった。
全身に染みついた血と泥の匂いは、もはや彼の体の一部と化している。手に握られた短剣の刃こぼれを、彼は冷徹な眼差しで見つめていた。
(地上の連中は、まだ平穏な夢を見ているつもりらしい)
心の中で冷ややかに嘲りながら、ルインは足元を流れる汚水を見下ろす。
奈落の迷宮を踏破し、さらに強さを増した彼の感覚は、王都の地下水路に渦巻く新たな不穏な気配を正確に捉えていた。それは、これまでの単なる野良の魔物とは違う。もっと組織的で、もっと狡猾な何者かが、この王都の足元で牙を研いでいる。
「グルゥ……」
暗渠の陰から、低い威嚇の声が響いた。
姿を現したのは、人間のように武器を扱い、全身を浅黒い毛皮に覆われた亜人系の魔獣――『獣人鬼』の群れだった。その手には錆びた鉄の剣や棍棒が握られている。
「人間だ……! 肉だぁっ!」
一匹が狂ったような歓声を上げ、錆びた剣を振り下ろしながら突進してきた。
ルインは表情一つ変えず、その巨体の懐へと滑り込む。
「遅い」
冷徹な一言とともに、少年の短剣が獣人鬼の喉元を正確に貫いた。
第2章の幕開けを告げる血の匂いが、王都の地下深くで静かに広がり始めた。
第16話「地上に這い出る影」最後までお読みいただきありがとうございました!
第2章のスタートとなる今回は、王都の地下に迫る新たな影と、変わらぬ冷徹さで敵を屠るルインの姿を描きました。これからどんな強敵や陰謀が彼を待ち受けているのか――?




