第12話:奈落の深淵、血の歓迎
ご覧いただきありがとうございます。「迷宮の底、復讐の血脈はモンスターを屠る」第12話です。
ついにAランク迷宮「奈落の迷宮」の深部へと降り立ったルイン。待ち受けるおぞましい魔物の群れを相手に、さらなる狂気と殺意を爆発させていくバトル回です。ぜひお楽しみください!
縦穴から落下した僕の身体は、硬質な石畳に激しく叩きつけられた。
衝撃で肺から空気が弾き出され、激しい咳き込みが喉を突く。だが、痛みを感じる間もなかった。着地した瞬間に肌を撫でたのは、地上の空気とは比較にならないほど濃密で、どす黒い魔力の淀みだった。
「……ここが、奈落か」
立ち上がり、周囲を見回す。
松明の光が届くのはほんの数メートル先までだ。古代の遺構である巨大な神殿跡のような広間は、どこもひび割れ、苔と黒ずんだ血痕にまみれていた。天井は見えず、ただ底知れぬ暗闇が頭上を覆っている。
(――来る)
本能的な警告が脳裏を鳴らした瞬間、暗闇のあちこちから不気味な気配が這い出してきた。
カチカチと硬質な甲殻が擦れ合う音。湿った地面を引きずる這いずり音。そして、何十もの狂気に満ちた赤い目玉が、闇の中で一斉に浮かび上がる。
現れたのは、犬ほどの大きさを持つ二つ頭の巨大蟲――『地獄双頭蜘蛛』の群れだった。
その口元からは、触れたものを一瞬で腐らせる強酸性の糸と泡が垂れている。
「……いいだろう」
僕は怯むどころか、むしろ口の端を歪めて冷徹な笑みを浮かべた。
これだ。これほどの圧倒的な死の気配こそが、今の僕を最も強く満たしてくれる。
「まとめて、殺してやる」
数匹の双頭蜘蛛が、一斉に糸を吐きながら跳びかかってきた。
空中ですれ違うように身を翻し、僕は一番手前にいた蜘蛛の頭部めがけて短剣を突き立てる。ぐにゃりと柔らかい脳髄を抉り抜く感触が手に伝わり、黒い体液が周囲に飛び散った。
だが、ここはAランクの迷宮だ。雑魚の一匹一匹が、これまでの比ではない。
別の蜘蛛が死角から放った酸性の糸が、僕の左肩の服をかすめ、皮膚をジリジリと焼き焦がした。痛みが神経を刺激するが、その痛痒さが逆に頭の芯を冴えわたらせる。
「もっとだ……もっと血を寄こせ!」
狂気に満ちた咆哮を上げながら、僕は群れの中心へと単身で飛び込んでいった。
血と鉄にまみれた奈落の底で、少年と魔物たちの終わらない殺戮の宴が幕を開けた。
第12話「奈落の深淵、血の歓迎」最後までお読みいただきありがとうございました!
Aランク迷宮の洗礼を受けるルインですが、恐怖どころか歓喜すら覚えて単身で群れに突っ込んでいく姿は、もはや完全に「復讐鬼」の領域です。肩を焼かれようとも、その殺意は一歩も揺らぎません。
次はこの奈落の底で、さらにどんな強敵が彼を待ち受けているのか――?




