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実の子が見つかったからと邪険にされたので、屋敷を出た養女の話  作者: 山田 勝


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反撃の幼女メアリー

「フランツ・ダンです。これが身分証です」


「通ること相成らん!王都封鎖令発令中である!」



 ワシは元ダン男爵のフランツ。

 何だ。領地に戻ろうとしたら・・・王都の門で止められた。

 つくづくワシは運がない・・。いや、王都にいられるか?


 タウンハウスに戻ったら締まっていた。

 お父様活動騒動以来妻とは疎遠だ。


 どこか、ホテルに泊まるか・・・・


 王都を見回したら店は全て閉っている・・・民家もドアや窓の隙間に布を入れて埋めている。

 これはまるで伝染病が広まったみたいではないか?



【王都戒厳令発令!ただいまより聖女メアリー様のエリアヒールが行われます。病人は外に出して浴びせて下さい!】


 何じゃ。空に魔法陣が浮かび上がって、青い霧雨のような魔法の粒子が降ってきている。


 メアリー、あれは訳分からん養子だった。ワシの保証書ビジネスを邪魔して。

 イカン。過去の事だ。前を見るのだ!


 しかし、どこも空いてない。お、あの屋敷は開いているぞ。中に入ろう。




 王都はパンデミック状態であった。

 各治療所が開いていたが、ダン男爵が見つけた避難所はグルジア家であった。




 ☆☆☆グルジア家



「ミ、ミレーヌ、ワシは死ぬのか・・・」

「どうして、私達まで・・」

「姉上・・グスン、その格好怖いです・・」


 私は鳥のくちばしのようなマスクを被って防護服を身にまとっている。これは感染を防ぐアイテムだわ。念のためこの姿で家族を看病しているわ。

 死ぬ前にポーションを飲ませればいいかしら。



「あら、まるで私が感染症を引き起こしたみたいですわ」


 フフフフフ、感染源はここよ。まさか救護所が感染源だとは思わないでしょうね。

 念のために家族も感染させたわ。アリバイ作りね。



 感染はコントロール出来るわ。


「ミレーヌ様、感染者が一人来ました」

「そう、適当にポーションを渡しなさい」



 まだ、メアリーがエリアヒールを放って感染を防いでいるけど、いつまで持つかしら。


 私は窓を見る。


「ねえ。ミリー、エリアヒールは何回目かしら」

「はい、これで三回目です」


 じゃあ、後、二回ね。


 二時間で一回の頻度で放って感染を防いでいるわ。


 通常の聖女で連続三回が限界、メアリーなら五回が限界かしらね。まだ、幼女ですし。


「・・・あのフランツ・ダンです」


「まさか、コロとは思わないでしょうね」


「あの、お嬢様、この度は立派なポーションを頂き有難うございました」


「ヒィ、貴方は・・・ダン男爵!」

「いえ、元です・・・」


 気がついたら背後にいた。


 こいつは有能か無能か分からないわ。でも、チョコチョコ邪魔しに来る。


「貴方、何をしに来たのかしら」

「実は泊まる所がなくて・・・泊めて下さい。メイドからお嬢様に直接聞いて下さいと言われたもので・・・」


「さっさと出て行きなさい!」


 追い出したわ。


「さて、救護所の準備よ!これからは誰も通さないで」

「「「はい、お嬢様!」」」





 ☆☆☆トーマス商会



 一方、メアリーはエリアヒールをかけながら、感染源の調査の指揮を執っていた。

 悪い報告ばかり届く。

 地球の中世、近世の欧州では悪い空気が病気を運ぶと考えられていたが、この世界も瘴気が原因と考えられていた。


「メアリー様、瘴気探知出来ず!」

「王宮の魔道師でも空気は清浄判定です!」



「王都封鎖令!発令されました」

「病人が出た家は完全に空気封鎖をされています」

「でも、感染は止らず!」


「メアリー様、後三十分後にエリアヒールをお願いします」

「はいなの~、ハニャ!」

「「「メアリー様!」


 グラと少し揺らいだ。この体は幼女だ。後、何回エリアヒールを放てるだろうか?

 そうだ。


「メアリー様!」

「大丈夫なの~、太極丸があるの~」


 李先生から贈られた霊薬だ。これを飲めば・・・


「メアリー様、お休み下さい!」


 マリーさんが怒っている。そうか、フラフラだよな。

 このトーマス商会には裏組織も集まっている。女男爵のお義姉様とお義母様も炊き出して参加されている。


 オスカーさんも来ている。


「まあ、人口が減ったら商売出来ません。ビジネス的観点から協力しますよ」


 また、串焼き対決の時のフランキーさんも・・

「あれ、そうだ。東地区は任せろ。俺らに病気を恐れる奴はいないぜ」

「恐れるの~」


 後は串焼きストリートの皆さん。

 王宮魔道師のヤクツさんも来ている。


 感染源を特定するにしても、方向性を決めなければならない。

 太極丸を飲んでも後何回エリアヒールを放てるだろう。この体は持つだろうか?


 わたしゃ。王都がせいぜいだ。

 国を覆う聖魔法なんて放てやしない。これじゃ、ざまぁをされる聖女みたいじゃないか?



 ・・・ある軍人は言った。勝ちに不思議な勝ちあり。負けに不思議な負けなし。と。


 偶然、元ダン男爵が現われた。

 彼は緊迫した状況で場違いな発言をした。



「あの~、泊まらせて下さい」


「あなた!領地に帰ったのではないのですか?」

「お父さま、今はそれどころではないのです」


「ヒィ、だって、城門しまっていたんだもん!」

「『もん』じゃないですわ!」


 その声でメアリーは振り向いた。男爵の手にしているポーションに目が行く。


「・・これはグルジア家の紋章なの~。お義父様、グルジア家に潜り込んだの~」

「ええ・・・」

「正直に言うの~、お屋敷で何か聞いたの~、良い子だから話すの~」」


「何か。鳥のくちばしみたいな仮面を被った令嬢が『コロ』と言っていました・・』



 コロ、コロッと死ぬからコレラ、もしかして、コレラか・・・水が感染源だ。もしかして。


「あなた、コロじゃ分かりませんわ」


「お義母様、いいの~!」


 ヨシ。反撃だ。


「ナオミは病人が出た家が使う井戸を聞きまくってくるの~走りまくるの!」

「はい、姫様!くノ一の名にかけて!」


「ヤクツしゃんは瘴気探知は中止なの~、病人が使った井戸の地図を作成するの~」

「了解です」


「フランツは王城に行き騎士団を編成なの~、水を被らない装備なの~!目標はグルジア家に突入なの~証拠を固め次第に突入なの~」

「はい、姫、また野に下ろうとも!」



「他の親分しゃん達はシマで出た病人の水源を調査してヤクツさんに報告なの~」

「分かりました」

「おう」



 あたしゃ。それまで太極丸を飲んでエリアヒールを放てばいいな。


「フフフフフ、アハハハハハハなの~!」


 勝利の幼女の雄叫びがトーマス商会の外まで響いたと云う。





 ☆☆☆グルジア家


「ミレーヌ様、そろそろ6回目のエリアヒールが放たれる時間です」


「そう・・・」



 それはないわね。メアリーの体ではバタンキューだわ。


「これから病人が大勢くるわ。ポーションの準備を」

「「「はい、お嬢様」」」


 聖女メアリー王女は役に立ちませんでした・・

 そして、民を救う私こそ聖女を超える淑女になって王妃に迎えられるわ。



「ミレーヌよ。もう、よさないか・・」


「あら、お父さま、ポーションを飲んだのかしら。もう、お父さまも共犯よ」

「・・・間違えてしまった。王国に自首をしよう」


「あら、病気になって気弱になって、引退なさいませ」




【王都魔道放送局~、これより聖女メアリー様のエリアヒールが放たれます】


「何ですって・・もう放てないはずよ!」


 正に、その魔道放送と共に。


「お嬢様、王国騎士団です!」


 王国騎士団が屋敷に突入をした。



「王命である!コロの病原菌を貴族街の井戸に流した罪により拘束する!」


「あら、証拠はあるのかしら・・」


「商業都市チィナ街よりの告発!

 商業都市でのコロ発生時の死体を商業都市魔道局より買い取った証拠が提出されている!」


「あら、それは・・・そうね」


「その死体と、貴族街の井戸に流された魔素が一致している!死体を井戸に流したな?」


 まあ、終わったわね。一人でやったのが仇となった。

 無法が足りなかったわ。今度は上手く行くかしら。


「ゲホッ!」

「何だ。ミレーヌ嬢が血を吐いたぞ!」


 私は拷問には耐えられないわ。仕込み毒を飲んだ。

 来世ではもっと上手く行くわ。



 この三日後、王都封鎖令は解かれることになる。




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