魔王様。ボクは恋敵?ライバル出現!?ぬるぬるの触手の魔の手が魔王様を襲う!!4
女の子は少し申し訳なさそうに頭を下げるとパン屋を後にする。
「……ふふっ、今日はごちそうね。帰ったら焚き火で温めて食べよ」
嬉しそうに微笑む女の子がベンチに座ってりんご飴を食べていたボクの前を横切る。
その直後、ボクのお腹の魔王に刻まれた紋章がうずくのを感じた。
ピンク色に光ってじんわりとお腹の中が暖かくなるような感覚にボクは不思議そうに首を傾げたが、その直後に女の子がボクの前まで来て叫んだ。
「あなた! その紋章をどこで貰ったのよ!」
「……えっ?」
ボクがその女の子の方を見ると、女の子は持っていた紙袋をベンチに置いた。
その後、突然自分の服を捲し上げる。
そこにはボクと同じ紋章がピンク色に輝いていた。
「これはフィオレア様から頂いたもの! まさか……あんたが新しい魔王!!」
「魔王だって?」
「どこに魔王が?」
「魔王って! この街に魔王が来るの!?」
女の子の言葉に周囲の人が反応して騒ぎ始める。
その中でボクは困惑しながらも女の子の手を引くとその場から走って離れる。
それを追いかけるようにりんご飴を舐めていたルシアが女の子の荷物を持って、てとてとと追いかけてくる。
ボクは女の子を路地裏に連れて行くと、息を切らしながら言った。
「はぁ……はぁ……あんなところで、魔王なんて叫んだらどうなるか分からなかったの?」
「……ごめんなさい。でも、私はフィオレア様に命を救われたの。孤児だった私の街が野盗に襲われてその時に殺されそうになっていた私を、フィオレア様が助けてくれたの」
そう言った直後、女の子はボクの方を指差して叫ぶ。
「だから、私はあなたを魔王とは認めない! 魔王様は慈愛に満ちたフィオレア・ベルゼブブ様だけよ! 私、リゼ・フィオレアがソアラ! あなたを魔王とは絶対に認めないんだから!!」
「……あの女が慈愛に満ちた?」
リゼのその言葉にボクは拳を握り締めながら俯きながら震えた声で言った。
「ボクだって! あの女に殺されて男だったのに女にされて、しかも勝手にボクを魔王にして、仕事を押し付けて、お腹にこんな変な模様まで付けられたんだ! お前になにが分かるんだ!」
「フィオレア様の事を悪く言わないで! 分かんないわよ! 私にとってはフィオレア様は世界のすべてなんだから!!」
「お前だって、あの女に捨てられたからパンの耳を貰って生きてるんだろ! そんな奴のどこがいいんだ!」
その言葉にリゼは驚いたように目を丸くしながらボクを見ていた。だが、すぐにその青い瞳が涙で満たされ目尻から涙が止めどなく溢れ出してポタポタと地面に垂れた。
「うるさい! うるさい! フィオレア様は私を見捨ててなんてない! なによ! なんなのよ! ばーかばーか!!」
リゼはそう言って泣きながら走り去って行った。




