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ハズレ属性「光魔法」を鍛えまくったら、レーザーが出ました  作者: LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定ッ
第1章『光の少年』

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第54話「進退」

「くそ!」

 くそくそくそっ!


 ……くそがぁっぁああああ!



 ──どすどすどすどす!!



 いかにも苛立ってますと言った態度で戻ってきたライトは、ヤミーを見つけると、その正面にドカッ! と腰掛け、ヤミーがつついているポテトをわしっ! と掴むと、やけ食いとばかりに口に放り込む。


「あー!」

「ん?……あ、悪い」


 ヤミーが悲しそうな顔でポカーンと口を開ける。

 せっかくチミチミ食べていたところ、ライトに半分ほど持っていかれてしまったのだ。


 しまったしまった、ついやりすぎた。

 え~っと、ここは店員さんに──。

「……すんませーん。え~っと、ガベージピザと、川泥魚の香草焼き、一角羊の煮込みと────スパイスポテトください」


  「あいよー」


 ヤミーがしょんぼりしてしまう前に、慌てて追加注文。

 いくらイライラしているからって小さな子に当たり散らすのは大人げないしな。


「悪い悪い。もっと食べたかったら追加していいぞ」

「……ん、ほんと? じゃー。ぐらたん、ください」


   「あいよー」


 あ、食べるのね。

 結構注文した気がするけど──。


 こういう時だけ反応が光の速度並みに早いヤミーちゃん。

 早速運ばれてきた、ピザやグラタンを美味しそうにモグモグ頬ばる。


「うまいか?」

「んまい」


 ん。よきよき。

 なんとなくヤミーの頭をナデリコナデリコしながら、ライトは気持ちを落ち着ける。


 ……実は、結局のところ今回の護衛クエストは当初の護衛分の報酬といくつかの討伐報酬しか払われなかった。

 不幸中の幸いは、雇い主がかなり評価してくれたようで、ギルド貢献度が高かったことくらいだろうか?


 しかし、ネームドモンスターの討伐報酬は保留。

 一端調査するということで、うやむやにされてしまったのだ。


「くそっ! ありえねーぜ」


 勢い込んできたのにこれだ。

 うまいもん食って、いい宿に泊まって装備も新調して──。


「ライト、たべてー」

「ん? あ、あぁ、悪いな」


 どうもライトがイライラしているのを敏感に感じ取って、くいしんぼうのヤミーがライトにピザを差し出してくる。

 手をベチャベチャにしているがそれはまぁ、愛嬌ということで、貰ったそれを口に押し込むと、内臓の味が口の中に広がり、なかなか乙な味。


 しかし、それにしても妙な話だ。


 傭兵団では、『谷の番人』が討伐されたなんて話を聞いていたような節はなかった。

 あの傭兵隊長だって、終始警戒していたし、

 そのネームドだと看破したのも彼だったはず……。



「……誤認なの、か?」



 ネームド級モンスターの討伐対象を間違えるなんてことはままある。

 有名どころではただのワイバーンと飛竜を間違えたとか、

 ゴブリンメイジとゴブリンシャーマンの誤認だとかなんてのは良くある話だ。


 ならば、今現在ギルドで認定されてしまっているネームド討伐の情報はそれなのかもしれない。

 例えば、オーガの変種である『谷の番人』をなにか別種のオーガと間違えることも──ありうるの……か?


「いや、どうなんだろ……」


 うーむ。

 どうにも釈然としないが、一応メリザさんのほうでも調査はすると言ってくれているので、それに期待するしかない。

 さすがに金貨350枚を「はい、そうですか」で諦めることは出来そうにない。


「ま、当面の金には困らないし──いっか」


 チャリチャリ♪

 金貨の入った皮袋を弄びながら顎に手を当てるライト。


 護衛報酬と、依頼主の評価からくるボーナスは決して安い額ではなかったのだ。

 ネームド討伐報酬ほどではないが、撃破数の多さと、元の護衛クエストの報酬で結構な実入りだった。

(ふむ……)

 これなら少しグレードの高い宿にも泊まれるし──……。


「むー。今の実入りならいっそ河岸を変えるか?」


 最近の教会都市では、ろくなことがない。

 長いことここを拠点にしていたがそろそろ時期がきたのかもしれない。

 

 たしかに、すぐに生活拠点を移すのは難しいが……、

 幸いにもライトもヤミーも荷物らしい荷物はない。

 

 それに、Sランクを目指すならいつまでもこの街にとどまっているわけにもいかない、か……。


 ……よしっ。

「今回のことはいい機会だと思うとしよう──」


 ジッと空になった食事皿を前に手を組んで考え込んでいたライトはポツリと零す。

 ポジティブにポジティブを重ねたほうが心も健全だというものだ。


 それに、どうもこの街ではこれ以上の道は望めそうもない。

 ならばいっそ──。


「うん!」


 ぱんっ!


「にゅ?」


 柏手一つ。

 そうと決まれば、

「ヤミー! いくぞ」

「ん? いくー」


 もっきゅもっきゅ


「どこに?」


 口の中をパンパンにしながら振り返るヤミー。

 服とか口の周りベッチャベチャ……。


「……うん、まずは口の中を空っぽにしような」

 あと、ご飯は零すな。

「はーい」


 うんうん、返事はいいのよね、この子。

 素直でいいこ、いいこ。


 なでりこなでりこ


 いっそ、飯さえおいしければ文句言わなさそうなこの子とどこにでも行ってしまおうか。

 まぁ、相棒とはいいつつ、色々足りないところが多すぎるけど、それ以外は無問題(モーマンタイ)


 ただ、ね。

 その、ね。


 くいしんぼうなところと……──とりあえず、


 こほん。


「ヤミーちゃん。返事がいいのは結構だけど。おいしいもの上げるって言われても絶対知らない人にはついていくなよ?!」


 ……ん?


「わか、った?」

「うん、わかってないわかってない」


 その顔はわかってない顔だよ。

 YOUはぜったいわかってないよー。


 …………あかん、不安しかない返事。


「……とりあえず、何があっても俺から離れるなよ?……便所もちゃんと言ってから行けよ」

「はーい」


 まったく……。返事はいいのよ返事はぁ!

 当面は一緒にいないと不安が抜けないライトさんなのであった。



 ──そうして数分後。



 ようやくテーブルのうえの食事がヤミーの胃に消えたころ。

「ケプ……」

 おくびを漏らすヤミーを苦笑しながら見つめつつ、

 手をつないで立ち上がるライトたち。


「じゃ、食ったしいくぞ!」

「ふぁーい」


 もぐもぐもぐ


 まだまだ食べたりないのか、

 最後の残ったピザの切れ端を口に押し込んだヤミーは、しっかりと咀嚼して飲み込むと、ライトを振り返って、

「にっ!」

「はは、よく食べたな」


 いい子いい子。


 ぷっくり膨らんだお腹をさするヤミーの歩幅に合わせながらライトは行く──。

 もちろん目的地はただ一つ。




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