第50話「相棒」
さぁ、幕にしようか。
ライトの宣言の後、オーガどもを狙いすえる。
……魔力は残り僅か。
そして、ヤミーにもすでに余裕はない。
いくら彼女が大量の魔力を保持していても、一晩中、慣れない中級魔法を使い続けていたのだから、当然の帰結だ。
しかも、オーガの隙を見計らって、合間合間を見て、
ライトが持たせておいた護身用のナイフで捕虜を一人ずつ開放しながらなのだから当たり前中の当たり前──。
だが十分!
ヤミーがいてくれるだけでライトには十分!!
だからッッ──。
「──ここは俺たちが引き受ける! アンタらは負傷者を連れて出口まで走れ!!」
……走れ!!
そうだ、走れぇぇええ!
「──わ、わかった! おい、お前ら動けるやつは怪我人を背負え! 俺たちが前後を固める」
ナイフ持ちとダンビラ装備が前衛と後衛を務めて、出口を目指す。
妨害するは──……。
『『『ゴルァァァァアアアアアアアアアアアア!』』』
だが、そうはさせない。
ついにオーガたちが異変に気付いて殺到するも、そこにいるのは子連れ魔術師こと、無敵の外れ属性ライト!!
その手に宿す科学の光は、昨夜みたオーガたちに恐怖心を植え付けるには充分なそれ。
……だから、その恐怖を塗りつぶすべく、奴等は一斉にライトに襲い掛かる。
『『『ゴガァァァアアアア!!』』』
ビリビリビリビリッ!
洞窟を震わす大音声とともに、捕虜など目もくれず、昨夜の化け物ライトを一番に排除するべく。
前から後ろから、そして左右同時に!!
──ゴァッァアァァアアアアアアアアアアアアア!
ほぼ全方位ッ!
全周、全部、全角度!
全部が……敵だ!!
──だけど、上等!
全て上等ッ!
「ヤミー! みんなにLv1の『目隠し』を!」
「……ん!」
ヤミーに闇魔法の行使を頼むライト。
彼女は、一瞬だけ戸惑ったようだが、ライトに何か考えがあると看破し、すぐに頷く。
そして、
ヤミーがそれを行使すると、信じて疑わないライトは、自身も同時に魔力を行使すべく練り上げと、叫んだ。
「ヤミー、今だッ!」
「むー……『目隠し』ー」
刹那、
ヤミーの手から迸るそれが、捕虜たちの目を隠す。
突然の暗闇に、捕虜たちの行き足が鈍る。
「うわ!」「み、みえねぇ!?」「きゃあ!」「なんだこりゃ!」
そう。
オーガたちではなく、そう捕虜たちの────!
……その瞬間、
『『『ゴガァッァ!』』』
オーガたちが一斉にライトを攻撃したッッ。
闇魔法のそれがライト達のミスとでも勘違いしたのか、
その爪、牙、粗末な武器がライト達を四方から切り裂く、その刹那──!
「──からのー…………Lv4光魔法『光爆発』!!」
────ガカッッ!!
突如洞穴全体を覆う光の爆発!
それは一瞬だけとはいえ、何万カンデラという恐ろしい光で、暗闇に慣れた網膜を焼く!
これがライトの切り札。
この瞬間でのみ機能する一瞬のチャンスを、今ここでつぎ込んだ。
『アガァァァア!』
『ゴルァァァア!!』
視界を焦がすオーガたちの悲鳴。
いくら攻撃力0の光魔法とて、これはきついだろう。
「ははっ! どうだぁ!」
会心のポーズを決めるライト。
当然、一晩中暗闇の中にいたオーガたちにはたまらない光量だろう──みな一様に目を抑えてうずくまっている。
そう、これが狙いで、
これがためにわざとオーガを挑発しここに集めたのだ。
そして、捕虜たちはといえば、
この時、この瞬間を狙っていたライトの策によって、ヤミーの闇魔法『目隠し』が『光爆発』を中和する!
──そう。
闇魔法と光魔法にはこんな使い方もあるのだ!!
「あはははははは! あはははははははは! ばーか!」
「ばーかばーか」
こうなればもう、こっちのもの!
何も狭い空間で、相手のホームグラウンドで戦う必要などない。
ゴロゴロと転げまわるオーガどもを尻目に、饗宴の会場を抜け出て、先へ先へ!
そう……外へと!
「や、やるじゃねぇか!」
「へ、どーも」
最後尾をゆく殿の傭兵に褒められると、ちょっと得意げに返すライト。
ヤミーと二人の共同作業。どうやらぶっつけ本番でうまくいったらしい。
そうとも、
光魔法も闇魔法も使い方次第。
決して外れなどではない!!
そして────……。
……出口だ!!
差し込む陽光に思わず手を伸ばすライト達。
その背後では、恨めしそうなオーガの声と、いち早く混乱から立ち直った個体が数体追いすがって来る。
さながら、地獄から脱出するものを追いかける地獄の獄卒の様だった。
「おっと。しつこいな。……悪いけど──まだ、そっちに用はないんでね」
「ようなしー」
わかったら二度と悪さしに這い出してくんなよ、鬼ども!!
──地獄に、帰れぇぇえッッ!!
キュィィィイイイイイン……!
「……とっておきの一発だぜ!!」
おそらく今日最後の一発。
これでとどめの一発。
そう、一発。
「一発あれば十分だぜッ──」
だから、遠慮なしにぶっ放させてもらう!!
「「あばよ、鬼の巣」」
ズキューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン♪
ために溜めたチャージショット!
そいつが洞穴内部に吸い込まれていき、入り口まで這い上がって来たオーガ数体を蒸発させそのまま、地下の焚火があったホールに突き刺さり──猛烈に爆発した。
──ズドォォオオオオオン!!
「ひゅ~♪ 命中」
ふっ! と、指先に息を吹きかけるいつもの仕草。
それを合図にしたかのように、洞穴内部から大量の爆風と土砂が噴き出したのだった。




