第47話「スニーク・ミッション」
攻撃力がないなら、ないなりの戦いってものがある。
そう、こんな風にな──!
ステータスオープン!
「光魔法:Lv7光学迷彩!」
──ブン……ッ!
空気と空間の震える音と主に、ライトの姿が景色の中に濁っていく。
なんと、小さな魔力の奔流がライトの足先に生じると、一瞬にしてその姿を消してしまったのだ。
これぞ、光魔法の本領。
攻撃力が0であっても生存せよと言わんばかりにスキルだ。
これは、目つぶし、目くらまし以外にも、目──そのものに錯覚を見せる代物で、光魔法のひとつ。
ま。
その実、光を歪ませ、背景を投影し、いかにもその人物を透明に見せているだけの代物ではあるけどね──。
叩けば当たるし、刺せば血が出る。
そして、獣にはほとんど効果がない────……さて、オーガはどうだろうな。
「昔は結構使ってたんだけどな──……」
ちょっと難易度の高い採取系クエストなんかでは重宝した。
モンスターを倒せないライトがこっそりと素材採取するときなんか、特に、ね。
そうとも、ちょうどこんな風にモンスターの脇をすり抜けていくのにちょうどいい魔法なんだ。
「……待ってろよ、ヤミー」
普通なら躊躇する場面でもライトは怯まない。
もはや、怯えることすらしない。
なぜなら、自身の半身ともいうべき少女を救うためなら、苦労も厭わないし、恐怖を覆い隠すことができるのだ。
……だから行く。
そして、潜伏場所から、そろそろと捕虜の方へ向かって進むライトの足取りに迷いは微塵もなかった──。
『ゴガ……!』
『ガルル……!』
ブチ……。
クッチャクッチャ──。
異臭、そして、異臭……。
異様な臭いを放つオーガの食卓の脇をすり抜けていくライト。
正直生きた心地がしない。
ライトはレーザーを覚えたことで無敵の攻撃力を手に入れはしたが、所詮は生身の人間だ。
しかも戦士系統と違い、脆弱な魔術の体。
つまり、この距離でオーガにみつかれば死は免れない。
ゴクリ……。
『ゴルゥ?』
『グルゥ?』
一瞬、首をひねるオーガたち。
何かを感じ取ったのか不意にキョロキョロとあたりを見回す。
(嘘だろ……)
『『ゴルルルゥゥ……』』
笑っているのか、唸っているのかわからない低い声色で、オーガたちが肉を食みながらないやら会話している。
ドクン、ドクン……。
明るさは感じないが、どこか笑っているようにも見えて不気味さを覚える。
もしかして気付いていながらあえてライトを泳がせているのだろうか?
ふいにそんなことを想像し、汗が噴き出す。
(ダメだ……落ち着け──汗をかけば体臭が強くなる)
『ゴル?』
オーガが特別鼻がいいというのは聞いた事はないが、人間のそれより上位と思た方がいい。
緊張と悪臭で、今にも吐き戻しそうだ。
奴等の体臭しかり、焚火で焼かれている肉の臭いだって、それが人間の物であると知れば鼻に入れたくもないほどだ。
それ等が、容赦なくライトの鼻を突き、眩暈すら覚える。
落ち着け……。
落ち着け──。
「はぁ、はぁ、はぁ」
じゃり
じゃり
かきたくもない汗がツツツと頬を伝い、衣服を内側から湿らせていく。
とめどなくあふれる汗──。
それでも、一歩一歩着実に、急ぎ過ぎないように慎重に慎重に進む────。
カツンッ……コロコロ。
(し、しまった……!)
なにか地面に特記のようなものがあったらしい。
前に進むことばかり気を取られて足元がおろそかに──……ッ!
(……人骨?!)
しかも、よりにもよって人骨。
食い散らかしたそれが無造作に地面に転がっているではないか。
その音か、それ以上の違和感か、
とにもかくにも、ついに、一匹が違和感を感じたのか不意に鼻を引くつかせ始める。
(ま、まずい……!)
くんくん
くんくん
「くっ──……」
一か八か、一気に駆け抜けるしか──。
慌てたライトは、オーガの背後を息を殺して走り抜ける──静かに、それでいてスピーディに抜ける。
『グルルル……?』
『ゴルルルル……?!』
こなくそっ!
息を止めて体を低く、一気にッ!
(そうだ! あの闇だまりまで行けば──……!)
ズザザッ────……。
「くっ!」
一気に走り抜け、目星をつけていた岩陰に飛び込むライト。
音を立て過ぎたか?!
さすがにオーガがどれほど間抜けでも気付くかもしれない。
(こうなったら一戦交えるしか──)
ジャキンッ!
そんな悲壮な覚悟で、壁に背をつけ、指先にレーザーを──────。




