第46話「光属性の本領」
そして、
「あれか……」
ギャーギャーギャー!!
死肉を漁る鳥類が跋扈する岩山の下。
そこにはぽっかり空いた洞窟と、その周囲に散らばる人骨やら獣の腐った死骸の山──。
ここ以外にそれらしきものはない。
だが念のため、しばらく様子を窺うと、
なにかの肉片を手に、クチャクチャやりながら一匹のオーガが洞穴から出てきた。
『ゴルルルル……』
ぶんっ!
そして、雑にまとめた人骨を外に放り捨てるオーガの雑用。
地面にぶち当たり、ガチャガチャと音を立てて崩れるそれは、数体分──それはまだ鮮血が滴るもので、すさまじくグロイ……。
(う……。ヤ、ヤミーじゃないよな?!)
すでに手をかけられていたら一巻の終わり。
そうでないことを祈るのみだが、食事中の連中に遠慮など望めない。
……それだけに一刻の猶予もなさそうだ。
ならば──。
すぅぅ、
「……一気に行くぞッ!」
だッ!!
潜伏場所から飛び出したライトは、オーガが気付く暇もなくレーザーで狙撃!
『ゴルァ──
ズキューーーーーーーーーン♪
一瞬にして空間を航過した科学の光がオーガの脳天を貫く!
ぶしゅ! と吹き出す血が焦げる臭い。
「とぅ!」
それを鼻孔で感じる暇もなく、かけるライトはためらいもなくその洞穴に飛び込み、すぐさま壁に背をつけ内部を探る。
レーザーの発射音は、それなりにあるので、聞きつけていたらすぐにでもオーガどもが反応するだろう。
そして、10秒、20秒────……よしっ!
覗き込んだ内部はうっすらと明るいものの、そこからオーガが飛び出してくることはなかった。
どうやら、雑用係か何かがたまたま出てきただけらしい。
「無事でいろよ、ヤミー……」
ズザザァ──!
緩やかな斜面となった洞窟内部を滑り降りると、そのまま奥へと向かうライト!
捨てられた骨の様子からも、新鮮な遺体が捌かれたのは間違いない。
傭兵隊長も言っていた、巣穴から生きて戻った者はいないと──。
つまりはそういうこと。……ならば、生きている捕虜もあまり時間がないかもしれない。
(頼む……無事でいてくれよ、ヤミー!)
もう余計なことは言わない!
もう、好きなところで好きにしていい!
だからッ!
──ダンッ!!
祈るような気持ちで、斜面を降りきると、通路に従い奥へ奥へ。
幸いにも一本道だ。ダンジョンの類でもなんでもなく、天然の洞穴らしい。
もっとも、大量のオーガが潜んでいるという点でいえばダンジョンと何ら変わりなはい。
そして、
「……この先か!」
なにやら生き物の気配と臭いが強くなる。
かなり広い洞穴なのか、音が反響していてライトの潜入に気付かれた様子はないが、こっちも敵の位置が掴みにく。
さらに、天井は高く密閉空間特有の息苦しさは感じないものの、それとは別に、息苦しさとはまた違った鼻を衝く悪臭。
それが底についた途端、ブワッ! とライトに押し寄せた。
「うぐ……! ひ、ひでぇ臭いだ……」
思わず鼻を抑えるライト。
まるで、地獄のような臭い……。
家畜小屋──。
(いや、それよりももっとひどい、なにか──……)
それがなんだと想像する暇もなく、
最奥らしき一番底の広いホール状になったところにそれはあった。
「う……!」
……まさに化け物どもの饗宴だ。
ユラユラと揺れる明かりの正体は、巨大な焚火と、くべられている馬車の残骸。
そして、焼かれ、蒸されているのは、連れ去られた傭兵や騎馬のぶつ切りだった。
それらを順繰りに回し焼きながら車座になったオーガども。
「こいつ等、ボスが死んだってのに────笑ってやがる……」
ゲラゲラと笑いながら肉を食むオーガども。
いや、もしかするとそう言った風習なのかもしれないが、人間の目から見ても異状だ。
奥の方には負傷したオーガが深くいびきをかいて寝ていることからも、あの戦場で逃げ込んだ連中なのは間違いない。
ならば、『谷の番人』が撃たれて事も知っているだろうに────。
昨夜の鮮やかな撤退の様子を見るに、知能は低くはないはずだ。
負傷者には、直火でなく鉄板や鍋で調理を振るまうくらいには人並みの知識があるようにも見える。
おそらく病人食なのだろう。
──もっとも、これは鉄板でも鍋でもなく、どこかの町で強奪してきた門扉と鐘のようだが…………。
「……ッッ!」
あ、あれは!
偵察を続けるライトは、寝かされているオーガどものさらに奥を注目した。
果たしてそこには、今まさに捌かれている傭兵が一人が、悲鳴を上げる間もなく────ドンッ!! と、巨大なダンビラで首を切り落とされると、そのまま、鍋にぶち込まれた。
しかし、それではなく────さらにその先!!
(ほ、捕虜……か?!)
もぞもぞと動く人影らしきもの。
どうやら調理間近からしい、昨夜連れ去れた隊商のメンバーが雑に縛られて転がされていたのだ。
(ならば、あのどこかにヤミーも?!)
捕虜の数は10名程度だが、それぞれ重なっているのでヤミーかどうか判別がつかない。
だが、悠長に確認している暇もない。
「……くそっ!」
長々と待っていてはあの全員が鍋の具材になってしまうだろう。
だが、突撃して全部倒すには場所が悪すぎる。
なにより、遠距離ならともかく、残魔力に不安があるなか接近戦を挑めば囲まれれば一巻の終わり──。
「ふーっ」
落ち着け……。
焦ってもどうにもならない。
ならば今はできることを。
最善手をい撃つことだけを考えろ……。
…………。
……。
「よし……」
………………しかたないな。
こうなったら、原点に帰るしかないだろう。……そう。ライトの冒険者としての原点。
「──いいだろう。攻撃力0の冒険者の戦いってものを見せてやるよ」
そう独り言ちると、ライトはステータス画面を開くのだった。




