第43話「VS ネームド(前編)」
グルァァァァアア!
ズキューン!
ズキューン!
「くっそ。撃ちにくい!」
闇を切り裂くレーザーが『谷の番人』めがけて発射されるがそのことごとくが逸れていく。
それもそのはず。
現在のライトは酷い縛りプレイを強いられている状態だ。
というのも、現在の戦場は野営地の中。
周囲は味方と、我が方の物資だらけ。
つまり、闇雲に撃てないということ。
幸いにも奴の体高がかなり高いことも有って狙えないこともないが、その狙い自体はかなり高めとなる。
つまり、野営地を巻き込まないように低い軌道の射撃はできないということ。必然的に射撃は上方に向かって撃たれるため、線から点のピンポイント攻撃に限られてしまった。
おまけに、あの図体のくせに早いッ!
「ちぃ……!」
逃げるな、クソ!
ライトの射撃の隙を縫って、闇の中を縦横無尽に駆け抜ける巨躯のオーガ──『谷の番人』よッ!
つーか、どこが番人だよ! 逃げ回ってばかりじゃねーかよ!
「おい。子連れ!」
「子連れじゃねぇ!」
今、ヤミーはここにはいねぇよ!
「って、そうじゃねぇだろ! 照明をなんとかしてくれっ!」
傭兵隊長の懇願。
「なんとかって……」
たしかに、周囲は元の暗闇に落ちようとしている。
いつのまにか、周囲には残光程度にしか灯りは残らず、ライトの光魔法の効果が尽きようとしているらしい。
「俺は松明じゃねーぞ!」
「お前の任務は護衛だろうが!」
ち……!
そういやそうだったな!!
照明役として雇われたわけではないが、
護衛クエストなだけあって、護衛対象を守るという意味では、広義の意味で言うと傭兵どもを援護しなければならない。
それにこのまま光が消えれば、オーガと人間の双方ともに、再び闇の中での戦いになるが──暗順応までに時間がかかる人間が不利だった。
「おい! はやくしろッ! 明かりが消えるぞ!」
ギリギリとオーガと切り結んでいる隊長が叫ぶ。
……あーもう!
「わかってる!」
こっちはこっちで谷の番人と戦ってるってのに──。
ドカーーーーン!
「っぶねぇ……!」
直後、ギリギリを掠める荷箱の投擲。
見れば、件の『谷の番人』がライトを睨みつけている。
『ゴルアァァァア!』
集中しろってか?
『谷の番人』は奴なりに、ライトがかなめだと気付いているらしい。
だから、一対一で戦い、他の手下に野営地の蹂躙を任せているのだろう。
ズシンズシンズシンッ!
そして、地響きが接近する。
ライトが乱射できないことを看破しているのか、適度な距離をとり、
傭兵や障害物、そして味方のハズのオーガを盾に大きく円を描くようにグルグルと機動する『谷の番人』。
「──あのネームド……」
ライトにどんな魔法を撃たせないつもりなのか、
……魔法を使うそぶりを見せると即妨害してやると言わんばかりに、手近な荷箱をつかみ取ると投擲の構え。
そのうちにも、徐々にスターライトの明かりが消えていく。
「ち。……いっそ、こんなことなら、はじめっから照明魔法を灯していればよかったぜ」
集団で行動していることと、
もはや松明役でないということに奢っていたのだろうか。
昔のライトなら言われる前に野営の際は照明役に徹していたはず。
「だったらこーいうのはどうだ!!」
『ゴルァァァア?!』
ライトが地形制約を受けて戦いないというのなら……。
「こっちから場所をかえてやらぁぁ!」
『ゴアァァァアアアア!!』
幸いにも野営地はオーガの奇襲で防壁は穴だらけだ。
どこからでも脱出できる。
そして、ライトの照明もレーザーも邪魔なものだと理解している以上『谷の番人』はライトを追わざるを得ない。
「──来いよ!」
そう啖呵をきると、一気に駆け抜け、防壁から谷間の木々に中に身を躍らせる。
「お、おい。どこへ行く?! 敵前逃亡は──」
「馬鹿野郎! 誰が逃げるか!!」
……狙撃が無理なら──。
向こうから接近させて仕留めるまで!
「隊長さんよぉ。俺は森に突撃して奴を仕留める!」
「は? 森に突撃って……お、おい、待て! ひ、一人で行くな──いま手練れを何人か寄越す……」
……はん!
「いい、いい! 隊長さんは野営地を護衛しててくれ!」
だいたい闇の中に付いてこられても足手まといだ!
それになにより、アイツはライトにしか仕留められないはず!!
「光球!」
森に入る直前────ライトは野営地に向かって数十発ほど光魔法を乱射する!
「すまん……こいつで何とか凌いでくれ!」
「お、おおい! お前ッ」
なにやら隊長が怒り狂っているが、知るか!
こっちはこっちで大変なんだよ!!
「……つーか、これのどこがBランククエストだ!」
ネームド級モンスターが率いるクエストなんて、最低でもAAクラスだろうが!!
森まで駆け抜けたライトに追いすがる様にして、『谷の番人』が背後から迫る気配がする。
……いい子だ。
どうやら、一騎打ちには乗ってくれるらしい。




