第42話「ネームドモンスター」
ゴルルルルルゥ……!
ズシンズシンッズシン!!
『ゴルァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
ビリビリビリビリ……。
「ぐぅぅ!」
「うるせぇ!」
大地を震撼させる咆哮。
まさにモンスターだ!
「な、何だコイツは?! でかいぞ」
「……黒いオーガ────ま、まさか、こいつ」
知った風な顔の傭兵隊長──って、
「知っているのか隊長?!」
「知ってるも何も、コイツが例のユニークモンスターだよ!」
この街道を危険地帯に変えたオーガの群れを統率しているという噂のユニークモンスター。
またの名を、
「……『谷の番人』!」
ネームドだよ!!
「ね、ネームドだぁぁ?!」
つまりそれって…………。
──ゴクリ。
「賞金首か!」
「って、おおおおい!……なんでちょっと嬉しそうなんだよ!!」
一瞬、喜色を浮かべたライトにズルリとズッコケかける傭兵隊長。
「そりゃぁ、査定に響くからな。こんだけ荷物が破壊されたとあっちゃ──どっかで点数を稼がないとよー」
ちっ。
「冒険者め……」
「冒険者だよ」
だが、それもありだ。
「いいだろう! やりたいっていうなら俺は止めんぞ」
「止められても、仕留めるさ」
はっ、言うねぇ。
「ならやっちまいな! おそらく、そいつを仕留めればオーガどもは撤退するはず」
「つまり、コイツがボスってことか」
いいねぇ。
ボス狩りは慣れているんだ。
「抜かせ!!……そして、いけっ!」
ドンッ!!
背中合わせにしていたライトを押し出すように圧をかけると、ライトも心得たもので、その勢いを射出台にして、脱兎のごとく駆ける。
そして、一気に肉迫すると、ネームドこと『谷の番人』に接近する。
「らぁぁぁ!」
ジャキンッ!!
指鉄砲にレーザーを光を湛えるライトがそいつを照準する。
ネームドこと、『谷の番人』。
ジャイアントオーガの変種らしきそいつは、通常種の倍!
そして、体長5m越えの化け物なだけあって威圧感が凄まじい!!
『ゴルアッァア?!』
どうやらオーガの例にもれずこいつも視界を焼かれているらしい。
だが、それもいつまでも続かないだろう。
すでに、照明魔法をつかってから数十秒が経過。
完全にとはいかなくとも、うっすらと見え始めてもおかしくはない。
……それでなくとも、嗅覚と聴覚が優れているのか、ライトの位置を大まかにつかんだのか、視界がなくとも顔がなんとなくライトを追尾する。
「さすがはネームド!」
一筋縄ではいかなさそうだ。
だから、一気に決める。
そして、デカいだけあって────……。
「狙い放題だよ!」
──キュィィィイイイン!
「発射ぁぁあ!」
ずきゅーーーーーーーーーーーーーーーーん♪
『ごるぁぁぁあ!』
照準高め。
地上波味方に当たるため、上空を向けてレーザーを射出すると、ブシュッ! と、レーザーの真っ赤な光線がネームドの肩を貫通する。
ははっ!
……いいね!
ネームドにも十分通用する!
ライトのレーザーは無敵の攻撃力だ!!
『ゴルアァァアアア!』
「なに?!」
だが、それを食らっても悲鳴一つで、すぐさま反撃!
むしろ、ライトの位置がばれただけか────?!
ドガァァァァアン!!
その拳がさっきまでライトのいた位置を正確に射抜いて、地面を爆発させる。
(おいおい……。こんなの一発食らったらお釈迦だよ)
冷や汗の噴き出るライト。
所詮は魔法使いだ。肉弾戦だと分が悪いのは明白。
「っていうか、」
どうやら、一撃で倒せるほど甘くはないらしい。
なにより、肩を射抜かれたくらいで死ぬ珠ではない。
「──デカいだけあって……タフだな、おい!」
ズキューーーーーーン♪
ドキューーーーーーーン♪
ならば数を当てるまでぇぇ!
ボシュ、ボシュ!
今度は急所狙い!
頭と胸と時々股間だ────……!
『ゴガッァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
ビリビリビリッ!
「な、コイツ──!!」
仲間を……?!
ライトが撃つ気配を察した瞬間、手近にいたオーガを盾にして直撃を逸らす!
「ちぃぃい!」
オーガ暗い数体まとめて貫通するが、それでも、威力は落ちるらしい!
そりゃそうか!!
まったくの無傷ではないが、
奴の顔面はその肉を大きくそぎ落とし、歯茎がむき出しになるほど大けがを負わせることができた。
もっとも、それでも致命傷ではないらしい!
「な、なんて野郎だ……!」
そして二つ目の急所を狙ったそれも、ほとんどが逸れたか、仲間を盾にしことでレーザーの威力が大きく減衰していたらしい。
せいぜい、胸の防具を焦がしただけ。
「……つーか、なんちゅう悪趣味な……」
『谷の番人』の纏う防具は総革製のそれ。
薄明かりの中見えた皮には表情がある。
どうやら谷で襲った旅人の皮をはぎ取って作った者らしい。
「ま、オーガらしいっちゃらしいか」
せいぜい、あの一枚にならないようにしなけりゃな。
そして、
どうやら本当に一筋縄ではいかないらしい。




