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#67「スキル習得で強くなりすぎてね?」

ほぼ平坦な雪原を、白バニー姿のティアはうさぎのように軽やかに跳ねている。


このような「箱庭タイプ」のダンジョンには深度という概念はなく、どこかにある転移ポータルを見つけて次の箱庭に移動をする。


広さには限りがあり、世界の端に発生している濃い霧の中に入って進むと、真っ直ぐ歩いていたはずなのに、なぜか霧に入った地点の近くに戻ってしまう。


この沖縄3号はあまりの寒さの為にシーカーによる調査がほとんど行われていなかった。なのでティアはスタート地点の洞窟を背にして、とりあえずまっすぐ進んでみることにした。



「あっ、そうだ! 言い忘れてた!」



ティアは立ち止まって、後ろをついてきている配信用ドローンに振り返る。



「何日か前にダンジョン庁でスキルポイント調べてきたんだけどさー。残ってたポイントとボスクラスの討伐ポイントと10万匹の雑魚モンスターの討伐ポイント合わせて3000ポイント以上あったー! ほとんど雑魚でのポイントでマジワロス!」



“おおおおおお!”

“3000オーバー!?”

“…………すげえ”

“それだけ貯めたのって過去にいないんじゃないか?”

“そりゃそうだよな、っていうか調べたの数日前かよw”

“一般シーカーが生涯で得られるポイントの何倍なんだろう”

“それを手に入れてるの、トータルで数日間でだからな……”

“国洞1号最下層のあの大群は……どうかしてたから”

“雑魚って1匹0.01から0.05ポイントくらいでしょ?”

“チリツモやべー”



ティアはスキルポイントを調べたその足で、新しいスキルも習得していた。

指を折りながら、そのスキルを視聴者に伝えていく。


最もポイントを消費したのは身体能力を向上させる常時発動《パッシブ》スキルだった。


走力、跳躍力、腕力、反射神経、動体視力、持久力の6種類。

もともと入門者クラスは習得していたこれらのスキルを、すべて最上位クラスまでランクアップしたのだ。

つまり、RPGで一気にレベルアップしまくったかのように、身体能力が大幅に向上している。



任意発動《アクティブ》スキルとしては「ナイトウォッチ」というものを新たに習得していた。

これは睡眠中に危険が予想される状況になると叩き起こされるスキルで、ソロでも比較的安全に野営できるようになる。


その他には「保湿効果」「化粧保持」「美髪維持」「体臭抑制」「浮腫防止」といった美容系スキルを片っ端からコンプリートしていた。



“最強魔法が習得できるくらい美容系に使ってそうw”

“野営用! 過去の経験をしっかり活かしてる!”

“野営中にモンスターが出現したり火が飛んできたら起こされるわけか”

“叩き起こされてブチギレのティアさんが目に浮かぶw”

“剣の技とか魔法とか攻撃系のスキルは覚えなかったんだねー”



「でもさ、それでもまだまだポイントが余りまくってんのよ! 剣術系のスキルは今のまま二刀流スキルで聖剣ブリトニーと魔剣ビヨンセ使うのがいいと思うし、魔法はさぁ……言わなくてもわかるっしょ!?」



そんな習得したスキルの話をしていたティアは前方から5つの人型のシルエットが自分に向かってきているのに気がついた。


真っ白な毛に覆われた雪男……イエティだ。


ティアはバニースーツの腰に装着されている鞘から聖剣ブリトニーを抜く。



「はじめての寒冷系ダンジョンのモンスターだね」



先頭のイエティが雪を蹴散らして突進してくる。


身長は3メートルほどだった。

丸太のような両腕を振り上げ、ティアの頭上から叩きつけてきた。


ティアは横に跳んでかわした。

その瞬間、自分でも驚いた。

身体が5メートル以上も横に飛んでいたのだ。



「うおっ!? 軽く跳んだつもりだったのに、これまでと全然ちがうし! なんかずっと身体軽いって思ってたけどー」



着地した場所に別のイエティが雪の塊を投げつけてきた。

人間の頭ほどもある雪玉だ。しかも、氷のように硬く固められている。


ティアは以前よりも余裕を持ってそれをかわす。



「前よりめっちゃ見えるかも!」



雪玉の回転も、飛び散る氷の粒も、はっきりと目で追えた。


ティアは地面を蹴って跳んだ。

雪が爆発したように舞い上がる。



次の瞬間、ティアは雪玉を投げたイエティの懐にいた。


聖剣ブリトニーが胸を貫く。


すぐに振り返り、背後から迫っていた二体の間へ飛び込んだ。

右へ一突き、左へ一突き。


ティアが通り抜けた直後、二体のイエティが同時に崩れ落ちた。



残る二体は威嚇するように胸を叩く。


一体がまず飛びかかってきた。


ティアはその場で高く跳躍し、イエティの肩に着地するとブリトニーを首筋に突き刺した。

その肩を足場にして、もう一体へと跳ぶ。

空中で身体をひねり、腕を伸ばして今度も首筋に剣を突き立てた。


二体が雪原に倒れ、戦いは終わった。



「ちょ、待って。あーし、動けすぎじゃね!? 人やめてね!?」



“強化しすぎだろw”

“はい、動きが完全に人外はいってました”

“本人が一番驚いてるの草”

“もはやシーカーではない何か……”

“読みのセンスと身体能力向上が合わさるとこうなるのか……”

“なのにうさ耳つけた白バニー……脳が混乱するわw”

“パッシブスキルってヤバいんだな”

“例えば走力が1.2倍になるだけでも、100m11秒のそこそこ速い選手がウサイン・ボルトを超えてしまう計算だからな”

“ティアっちは初心者用から最上位のパッシブにしたから1.2倍どころじゃないわけで……元々身体能力には頼らないでも凄かったのに……とんでもない事になってる”



ティアはその後に出てきた寒冷地モンスターも、同じように以前よりも簡単に、鮮やかに倒していった。


そして……次の箱庭へと移動するポータルを発見する。

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