#66「ニューボディースーツだぴょん!」
「はいさ〜い! 最上ティアだよー! 今日は告知してた通り、新しいダンジョン用ボディースーツで石垣島にある沖縄県洞3号から配信していくよー!」
暗い洞窟の中のような場所で、ティアは宙に浮かべたドローンに向かって元気に挨拶をした。
いつもの配信ならばティアへ挨拶を返していたコメント欄が、大混乱の状態に陥っている。
“え?”
“は?”
“ちょっwww”
“ええええ????”
“その格好……”
”!?”
“うさぎさん……”
“バニーガールwwwwww”
“それが新しい装備なのかよ!w”
“どうしてそうなった!笑”
ティアはウサギをモチーフにしたセクシーな衣装の、バニーガールの姿だ。
ただし一般的なバニースーツは黒いものだが、ティアが着ているのは純白だった。
いわゆる「白バニー」と呼ばれているものである。
頭には長く伸びた白いうさ耳。
首には小さな蝶ネクタイのついた白い襟。
胸元は大きく開いているが、特殊な伸縮素材が身体にぴったりと密着しているため、どれほど激しく動いてもずり落ちる心配はない。
腰の部分は以前のボディースーツと同様に大胆なハイレグになっていた。
太ももが付け根近くまで露出し、背中側に回ればさらに布地は少なくなる。
丸みを帯びた褐色のお尻の左右の大部分は隠しきれていない。
脚にはストッキングもタイツもない。
白い生地に覆われていない部分には、これまでのボディースーツと同じ透明な防護素材が使われている。
腰の左右には、それぞれ聖剣ブリトニーと魔剣ビヨンセが装着されていた。
さらに背中には、衣装の一部に見えるようなデザインの小型の白いリュックがある。
背中に密着する固定機構によって、激しく動いても揺れたりずれたりしない。
白い生地と、日焼けした褐色の肌。
その鮮やかなコントラストは、黒ギャルであるティアのスタイルをいっそう際立たせていた。
「どう? 可愛いっしょ? いまの気温ってマイナス55度なのにこの防寒スーツだと全然寒くないよ! そうそう、この靴って白いパンプスに見えない? 変態……じゃなかった天才の人が魔改造してくれてるから戦闘でも使えるんだよー! これは寒い場所に行く時の専用装備だぜー!」
ティアはくるっと後ろを向き、足をあげて靴をカメラに見せている。
お尻の上のふわふわとした白い丸尻尾が揺れていた。
“かわいい……ですけど”
“バニーガールwww”
“レベル上げて転職すると賢者になる人?”
“黒ギャルの白バニーの破壊力ヤバいな”
“前のボディースーツも大概だったけどマトモに思えてきたw”
“DAICON IVは赤バニーでしたね(昭和のオタおじです)”
“ティアさん! すごく似合ってます!”
“あんなに露出が多いのに防寒性能は完璧なのか”
“マイナス55度って……すげえな”
“でもティアさんって何でも似合う美女だよな。色々残念だけど笑”
“じゃあ普通のダンジョンはこれまで通りのスーツなんだね”
“なんで沖縄のダンジョンなのに極寒なんだろう”
“ポータル発生場所とその中の関連性って謎だよな……”
ティアは外とつながっているポータルがあった小さな洞窟から出る。
この沖縄県洞3号は「箱庭」タイプのダンジョンになっていて、ティアの目の前には一面の銀世界が広がっていた。
「うわー! 真っ白じゃん! 雪マジですごくね? こんな面白いダンジョンに行けるようになって嬉しー!」
雪の降ってない締め固められた状態の雪原にティアは入っていく。
帆端英一郎による靴の滑り止め加工は素晴らしく、ザクザクと快適に歩くことができた。
ティアは、この白いバニースーツには雪が積もる場所では優れた迷彩効果があると帆端英一郎から言われていたことを思い出した。
「そうそう! キツネとかに襲われないように冬になると真っ白になるユキウサギってのがいるんだって。この白バニーもこういう雪の中だと同じようにモンスターから見つかりづらくなるみたい!」
ティアは雪の中で正座して、上半身を前に倒した。
「ねえねえ! いい感じに隠れてるー!?」
背後に浮かぶドローンから見ると、真っ白なスーツはたしかに雪景色に溶け込んではいる。
しかし、お尻の生地が少なかったようだ。
“www”
“wwwwww”
“味付け煮卵がふたつw”
“雪の中に……煮卵が置かれてて草”
“wwwwwwwwwwww”
“そりゃ、そうなるわなw”
“人間には見えないから迷彩的な効果はあるけど……w”
“もしかしてスーツの製作者これを狙ってた?”
“一着目のもTバックに近いし、たぶんメーカーがおかしいw”
“煮卵伝説を自ら増やしていくスタイル”
こうして……深夜のテンションで決定した完全防寒の白バニースーツを手に入れたティアは、遭難者続出の危険な極寒ダンジョンに挑むことになる。




